第二十八部第四章 原理主義者その七
「何があろうともな」
「私もそれに賛同させて頂きます」
何時しか先程までかなり連合文化にかぶれていると言えたこの若い学者もラコシの思想に共鳴するようになっていた。まるで全てを悟ったかのように。
「それで宜しいでしょうか」
「同志は拒まない」
それに対するラコシの言葉は寛容なものであった。
「誰であろうがな。では共に歩もう」
「はい」
学者はまたラコシの言葉に頷いた。
「それでは。御願いします」
「マウリアはマウリアで悠久の時を歩むべきだ」
ラコシはまた言う。
「このままな。永遠に」
そう話しながら紅茶を飲むのであった。これがラコシという男であった。原理主義者であるが単に過激な原理主義者ではない。深い知識と洞察、思慮を持っていた。そうした人物であったのだ。
だからこそ連合は彼の排除を諦めた。能力があるだけでなく潔癖でもあったから。それで彼等が狙うのはラコシ以外の者達だったというわけである。
「それでだ」
マウリアのホテルの一室。あえて灯りを消して暗くさせた部屋の中に影の世界の者達が集まっていた。彼等はそこでソファーやベッドに座ってあれこれと話をするのであった。
「情報は集まったな」
「ああ、これで充分だろう」
ソファーにいる男が答えてきた。
「これだけの情報があればな。完璧だ」
「狙い目もわかってきたな」
「そうだな」
彼等は口々に言い合う。
「こいつだな、まずは」
「そいつは女性問題だな」
「ああ。しかしこれは」
ここで彼等のうちの一人が言葉を濁す。
「女性問題と言っていいのかどうか」
「何かおかしいか?」
「ニューハーフ専門だぞ」
所謂女装した男性である。マウリアにもそうした存在がいるのだ。彼等はここではこれを女性問題と定義しているのである。これに首を捻る者がいるのだ。
「これで女性問題なのかどうか」
「だが妻子がいる立場でこれはまずいだろう」
「まずいか」
「普通に考えてまずいだろう」
そう言うのであった。
「一応自分を女性だと言って性転換までしている相手なのだからな」
「そうなるのか、やはり」
彼はどうにも理解できないようであった。しきりに首を捻るのがその証拠であった。そうしてその中でまた言うのであった。いぶかしみながら。
「しかしな」
「まあスキャンダルにはなる」
これは保障された。
「マウリア原理主義では同性愛はあまり歓迎されないという一面もあるしな」
「やはり同性愛になるのか?」
「そうとも考えられる」
話がさらにややこしくなる。完全にこんがらがっていると言えるようになっていた。互いの顔は暗闇の中なのでよくはわかrないが声の色はわかる中であった。
「だからそちらにも訴えられる」
「不倫と共にか」
「そうだ。少なくともこれで彼は動けなくなる」
目的はそれである。それならばよいのだと言いたげな言葉であった。
「だからこれでいい」
「わかった。それじゃあそれでな」
「うむ。それでだ」
話は次のターゲットに移った。
「彼女については金銭スキャンダルだ」
「所謂汚職だな。これはどの国にもあるな」
これがない国はない。付き物と言える。
「マウリアにも」
「これが一番だしな」
中の一人がその汚職について言及する。
「工作にはな」
「その通りだ」
他の者達もその言葉に頷くのであった。汚職がスキャンダルになるのは何時でもで何処でも同じである。連合でもマウリアでもだ。どちらも汚職にはエウロパと比べるとかなりその目は穏健なものであるがそれでも問題視されないわけではないのである。
「これが一番だな」
「原理主義者も汚職はするんだな」
また誰かが言った。
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