第二十八部第一章 官僚と議会その十八
「ですから買収や懐柔は」
「効果が期待できない」
「困りましたな」
彼等はそれを聞いて腕を組む。それは彼等もわかっていることだ。
「そうした者達が多いとなると」
「マウリアにもいますか」
「連合にもいますしね」
アットールがここで言う。結局のところ同じ人間である限り原理主義者というものは何処にでも存在しているのである。連合はかなり合理的で実利的な社会であるがそれでも原理主義者は存在しているのだ。様々な価値観の持ち主がいるからこそだ。そこが問題なのだ。
「そうした考えの持ち主は」
「当然マウリアにもですか」
「何か。問題は厄介ですな」
「だからです」
またハンニバルは述べた。
「そこを何とかしたいのですが」
「技術供与や兵を向けないだけでは駄目ですか」
「そうなります。それに」
「それに?」
「最低限の備えはしていますし」
マウリアとの境にも何だかんだで最低限の兵は置かれているのである。これは当然の備えであるがそれすらも色々と言われるのが国際政治というものなのだ。
「そこも突かれて」
「つまり何でも問題になるのですな」
「そうです」
それが政治というものである。
「私はそれを危惧しています」
「何かそこまで聞きますと」
アットールは話をそこまで聞いてあらためて考えに入るのだった。
「あの長官の考えを聞きたくなりますね」
「あの長官!?ああ」
「彼ですか」
同僚達もそれが誰なのかすぐにわかった。連合の政治の世界においてはもう言うまでもないことであった。とりわけ軍事に関することならば、である。
「そう、八条長官です」
アットールはその名を述べた。
「彼の考えを聞きたいところです」
「しかしそれは」
「どうにも」
同僚達もハンニバルもここで首を傾げさせるのであった。
「仮にもあの御仁は改革派ですし」
「そうですな」
対立政党である。そう簡単に意見を聞くわけにはいかないのだ。
「ですが聞き出すように仕向けることはできます」
アットールはまた言った。
「それは可能ですが」
「まあ確かに」
「そうですな」
それに彼等も頷く。頷くがどうにもわからないものがあった。
「問題は聞き出し方ですな」
「そこです」
そこであった。
「どうするべきか」
「流石に彼でもはいそうですかと教えてはくれません」
八条は温厚な人柄で知られている。しかしそうおいそれと手の内を見せたりはしない。政治家がそれでは話にもならない。人が悪いとかそういう問題ではないのだ。
「どうすればですが」
「いや、ここは」
アットールはふと閃いた。
「方法がないわけではありません」
「方法が?」
「そうです」
彼は述べる。
「簡単なことですが。情報を流すのです」
「情報を?」
「そうです」
同僚達にも述べる。
「今こうして私達が懸念していると。それを流せば」
「彼も動きますか」
「自然とそうなるでしょう」
考えながらまた述べた。
「それでどうでしょうか」
「そうですな」
ハンニバルもそれを聞いて考える目になる。見ればまんざらでもないようであった。
「それをやってみますか」
「情報を流すのはただですし」
「はい」
ただ程使えるものはない。そういうことでもあった。
「ですからです。ここはそうして」
「わかりました。それではそれで行きましょう」
ハンニバルは述べた。
「それからの結果次第で私も考えます」
「それが宜しいかと。それでは」
アットールはそれでいくことにした。
「そういうことで」
「ええ、それでは」
同僚達も頷く。こうして彼等が連合の軍備拡張に対するマウリアの懸念を危惧しているという情報が流された。それと共に開拓についても色々と考えていることも情報として流された。それはすぐに連合の政界に流れた。それでまた舞台が動くのであった。
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