第二十八部第一章 官僚と議会その八
「決して肉だけ、ワイルドなだけではありません」
「彼等なりに繊細であるということですか」
「どうですか、実際の料理も」
そのうえで今並んでいる料理の味について問う。
「御感想は」
「悪くないですな」
「いや、むしろ」
ここでその味についても評価される。それについては。
「いや、中々」
「外見に比して何と言いますか」
「繊細と言うべきか」
そうなのであった。意外にも大味ではなく実に細かいところまで配慮が行き届いた味になっていた。少なくとも二十世紀のそれとは全く違うものになっていた。
「この肉にしても」
「焼き加減も」
満足のいくものであった。シェフの腕もあるが彼等にとって満足のいくものであった。
「素晴らしいです」
「ふむ、アメリカ人は二十一世紀から料理の腕を上げだしたと言われていますが」
「それを実感しました」
「あとこの肉ですが」
アットールもその肉を食べている。彼の口の中で様々な調味料で味付けされた肉の絶妙な味が広がる。その肉にも秘密があるのだった。
「おわかりでしょうか」
「何がでしょうか」
「この肉について」
「ただの豚肉では?」
同僚の一人が特に考えることなく述べた。確かにそれはごく有り触れた豚肉である。素材はいいであろうが確かに普通の豚肉だ。
「何か特別なのでは?」
「ペッカリーやバクのものではないようですが」
連合ではこうした動物も食べられているのだ。
「はい、豚肉です」
アットールもそれを述べた。
「ただの」
「そうですな」
「それが何か」
「ですから。豚肉です」
彼はそこを強調するのだ。同僚達もそこにこそ何かがあるのがわかった。それでまた彼に対して問うのであった。
「それでは」
「この豚肉に何が」
「豚肉であるということです」
彼が言うのはそこであった。
「アメリカの肉と言えば」
「牛ですな」
そうしたイメージがある。ステーキの影響のせいかアメリカといえば牛肉なのだ。少なくともそうしたイメージが非常に強いのである。
「しかし豚です、これは」
「これに何かがあると」
「実はアメリカでは豚肉を一番よく食べます」
アットールはここでそれを同僚達に述べるのであった。
「そうだったのですか」
「はい」
そして彼等の言葉に頷く。
「意外でしたか」
「いや、それは」
「思いも寄りませんでした」
本当に彼等の予想外の話であった。アメリカへのイメージが少しどころではなく崩れた。
「まさか豚肉だったとは」
「それを言うと中国のようですな」
「そうですね」
アットールも今そのことに気付いた。言われてみればその通りだと、実に思うのであった。これは彼にとっても意外なことであった。
「中国も豚肉がメインですし」
「その通り」
「それが少し、あれですが」
議員の一人が顔を暗くさせる。それには事情があった。
「困った話ではあります」
「それはわかります」
アットールは少し笑みになった。そうしてその同僚に述べるのであった。
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