第七部第二章 老将その二
その頃シャイターンはティムールの首都アレキサンドリアにいた。この星系は建国と同時に彼が首都と定めた場所でありかなり北東に位置さひている。総督府とも隣接している。
当初ここに首都を置くことについて多くの反対意見があった。だがシャイターンはそれを全て跳ね除けここに首都を置いたのである。
反対する理由には根拠があった。やはり敵に近いからであった。防衛上これは非常に由々しき問題であるからだ。
だがそれでもシャイターンはここに首都を置いた。そしてそこから政治及び軍事の指揮にあたっていた。
今この星系では防衛計画が進められている。惑星ごとに防衛衛星が配置され艦隊基地が建造されていた。そして前線基地としての役割もつけられようとしていた。
「エウロパはどうしている」
シャイターンは乗艦であるイズライールの艦橋においてハルシークに問うた。彼は今艦に乗りながら防衛基地や前線基地の建造状況を見ているのだ。
「今のところ彼等は本土の防衛計画だけで手が一杯のようです」
「そうか」
彼はそれを聞いて頷いた。
「それだけ連合の存在が脅威ということか」
「はい。また新たに百個艦隊を新設するそうですし」
「難民達を使ってな。恐ろしい数ではある」
「人類の歴史史上最大規模の軍ですな」
「そうだな。だがそれだけではない」
「といいますと」
「連合軍の怖ろしさはそれだけではないのだ。だからこそエウロパもあそこまで警戒している」
「装備でしょうか」
「それもある。だがそれだけではない」
「補給、そして情報でしょうか」
「鋭いな。その三つは確かに連合軍の脅威の一つだ」
やはり彼等もティアマト級巨大戦艦のことはよく知っていた。彼等もあの艦を脅威とみなしていた。
「そして人」
ハルシークはここでこう答えた。
「その通りだ」
シャイターンはそれを聞いてニヤリと笑った。
「この場合は数としての人ではない。個人としての人だ」
「といいますとやはり」
「そうだ。国防長官である八条義統。彼の存在が大きい」
「彼なくしては連合軍はなかったでしょうからな」
「そうだな。そして今彼の手により連合内の海賊やテロリスト達は次々と潰されていっている。国内での脅威は残り僅かだ」
「問題はそれからどう動くか、ですな。しかし」
ハルシークはここで言葉を続けようとした。だがシャイターンはそれより前に言った。
「何が起こるかはわからないな、これから」
「はい」
ハルシークはそれに頷いた。
「当然そこにはエウロパとの戦争も入るかと思われます」
「そうだな。それは否定できない」
「エウロパはそれを恐れているのですね」
「長年の対立関係があるからな。なおさらだ」
「戦争になればやはりエウロパ本土での戦いになりますな」
「そうだ。その時には動くかも知れないな」
「動く」
「そうだ」
シャイターンはここでニヤリと笑った。
「我々も同時に動く」
「北にですね」
「そうだ。ここに首都を置いた理由はわかるな」
「はい」
「そういうことだ。その時に備えておけ。どのみちいずれは動くからな」
「わかりました。それでは」
ハルシークはそう答えて頭を垂れた。
「引き続き軍備を整えておきましょう」
「そうだ。そしてすぐに動けるようにしておけ」
「わかりました。ところで」
ハルシークはここで口調を変えてきた。
「何だ」
シャイターンはそれに気付き問うた。
「マルヤム様がこちらに来られておりますが」
「マルヤムが」
シャイターンはそれを聞いて眉を少し上げた。
「はい。御会いになられますか」
「そうだな」
彼はそれを聞いて頷いた。
「通してくれ」
「わかりました」
ハルシークはそう言って敬礼して返した。彼は退き暫くして小柄で美しい女性を連れて来た。
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