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第二十七部第五章 コムの死闘その十五
「今全ての力で!」
「突撃!」
 彼女の言葉が合図となった。共同軍は全軍を挙げて突撃に入った。ティムール軍はそれを見て一気に陣を整えるのであった。
「守りに徹せよ!」
 シャイターンはそう指示を出した。各艦隊に方陣を組ませそれをそれぞれ連携させる形にさせた。そうして彼等の突撃を防ごうとするのであった。
 だが共同軍の突撃は強烈であった。まさに津波そのものの攻撃でティムール軍を撃破しようとする。彼等の方陣はその激しい波の中に置かれ中には崩壊する陣もあった。ティムール軍は今この戦いにおいて最大の危機を迎えようとしていた。
「閣下」
「もうすぐだ」
 青い顔をして自身に声をかけてくる参謀の一人に応えた。やはりその表情を変えずに。
「もうすぐ時が来る。それまでの我慢だ」
「我慢ですか」
「そうだ。津波はすぐに終わる」
 共同軍の怒涛の攻撃を見据えながら述べる。
「すぐにな。今は確かに激しいが」
「ええ」
「それももうすぐだ。その時こそ」
 彼は言う。
「仕掛ける。わかったな」
「はい。それでは」
「そのまま耐えろ」
 彼はまた全軍に指示を出した。
「このままだ。わかったな」
「このままか」
 それを聴いた艦隊司令達は思わず顔に苦渋の色を浮かべさせた。
「辛いな、それは」
「ですが司令」
 その中の司令の一人に参謀の一人が言うのだった。
「主席は今まで敗れたことはありません」
「確かにな」
 当然ながら彼等もそれは知っている。シャイターンの不敗神話は彼等にとっては何よりも心強い支えである。それが今生きようとしていた。
「ですから今も」
「主席を信じればいいか」
「はい、ですからここは耐えましょう」
 その参謀は自分の直属の上司に対して告げた。
「主席の仰る通りに」
「わかった」
 艦隊司令はその参謀の言葉に頷いた。
「ではこのまま辛抱するぞ。いいな」
「はい」
 彼等は末端の兵士達に至るまでシャイターンの言葉を信じた。そうしてこの場を何とか耐え凌ぐのであった。
 ティムール軍の粘りはかなりのものであった。共同軍の攻撃を彼等から見れば憎らしいまでに耐え切っていた。そうして次第に。共同軍に変化が見られてきた。
「うう・・・・・・」
「そろそろか」
 彼等は遂に疲れを感じだしてきたのだ。それまでの気迫は少しずつ消えていきそうして倦怠感が覆いだしていた。これがはじまりであった。
 それはすぐに彼等の動きにも現われた。一瞬だが動きが弱まった。シャイターンはそれを見逃さなかった。
「よし!」
 シャイターンは叫んだ。そして指示を出す。
「今だ、全軍反撃に転じよ!」
「反撃ですか!」
「そうだ!」
 またしても叫ぶ。
「今がその時だ。時が遂に来たのだ!」
「では閣下!」
「今より我等は!」
「勝利を掴む!」
 こうも叫ぶのだった。
「わかったならば。全軍反撃に転じよ!」
「はっ!」
「そのまま突撃だ!一気に突き崩せ!」
 勢いのある言葉であった。その言葉がそのまま全軍に伝わることがわかっているからこその言葉であった。これもまた計算していたのだ。
「そしてこのイズライールも前に!」
「しかしそれは」
「構わない!」
 自らの突撃すらもその中に入れていたのだ。危険もまた。
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