第二十七部第五章 コムの死闘その五
「あくまで時と場合です」
「そうですな」
別の参謀の同僚のその言葉に頷くのであった。
「このアヤグーズは険阻な宙形ですし」
「それを考えれば速度は」
「しかしです」
ブルコルジは異議を次々に申し立てる参謀達に対して言った。彼等を見ずにモニターを見続けている。ティムール軍のその動きをである。
「このコムはその中でもとりわけ険阻ですが」
「それはそうですが」
「しかもです」
反論しようとする参謀達に対してさらに述べた。
「今彼等は我々の仕掛けた防衛施設や機雷源を避けながらです。それであの速度ですが」
「むっ」
「そういえば」
参謀達はその言葉を聞いて声を挙げた。そういえばそうなのである。女王の言葉を受けてあらためてそれに気付いた形となっていた。
「どう思われますか?」
あらためて彼等に問うた。
「それについては」
「確かに」
「今のコムよりは速度が出せる筈ですな」
参謀達もそう結論付けた。だがそれで話は終わりではなかった。
「そしてです」
「そして?」
「はい。彼等はあまりにも簡単に我等のところに来ています」
次に女王が指摘したのはそこであった。
「あまりにも簡単に。これは一体」
「動きが単調だと」
「そうです」
参謀の一人の問いにそう答えた。
「我々の意図を完全に把握しているか、若しくはその逆のように。これは」
「何か危険なものがあるでしょうか」
「あるとすれば、です」
女王の目が光った。
「それは一体」
「まさか」
「シャイターン主席はやはり」
ここで参謀達の頭の中にシャイターンが浮かび上がった。その稀代の策士が。彼は参謀達の頭の中で悪魔めいた邪悪な笑みを浮かび上がらせていた。
「我々に対して何かを仕掛けていた!?」
「だとすれば一体」
「動じてはなりません」
女王として、軍を率いる者として動揺を見せた彼等に対して鋭い声で告げた。
「指揮官や参謀が動じてどうなりますか」
「そうでした」
「申し訳ありません」
「わかれば宜しい」
まずはこれでよしとした。そうしてそれからまた述べる。
「しかしです」
「はい」
「その考えは間違ってはいないかも知れません」
先程のシャイターンについての考えについて述べるのであった。
「間違ってはいませんか」
「それは充分考えられることです」
そのうえで言う。
「あのシャイターン主席が私のこの布陣に何も感じていない筈はないでしょう」
「それは間違いないかと」
ブルコルジも当然ながらシャイターンという男を知っていた。そのうえで警戒していた。だからこそここまで準備を怠らなかったのである。だからこれは当然であった。
「それであの動きとは」
「あの御仁が何も感じないとは思えませんし」
「やはり」
「しかしそれでもです」
それでも彼女は言うのであった。
「このままの布陣でいきます」
「このままで、ですか」
「そうです」
また答えた。
「このまま。敵を待ちましょう」
「わかりました。それでは」
「このまま」
「敵が来たらすぐに仕掛けます」
ブルコルジの黒い目が光った。琥珀の光であった。
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