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第二十七部第四章 嵐が迫りその十四
「流通もですか」
「連合では殆ど経済だけに使われる言葉だが」
 少なくとも連合の殆どの者にとっては流通の整備は経済的な理由からである。サハラでもそのイメージは強いがシャイターンはここであえて経済以外の流通について言及してみせたのだ。
「軍事のものもあるのだ」
「軍事も」
「軍が動き易ければ動き易い程いい」
 シャイターンは言う。
「だからだ。彼は南方の宙路も整備したのだ」
「そうだったのですか」
「オムダーマン軍の兵が容易に増えたのもそのせいだ」
 フラームがまた末弟に述べる。
「徴兵した兵達がすぐに集まるのはな。そのせいなのだ」
「つまりは移動が容易だからですね」
「そうだ。わかってきたな」
 末弟の言葉に表情をよくさせた。
「どうやら御前も政治がわかるようだな」
「いえ、それはまだ」
 だが彼はまだそれは自覚してはいなかった。
「恥かしながら今の言葉ではまだ」
「それを自覚するのもいいことだ」
 長兄はその彼に告げた。
「わかっていれば対処ができるからな」
「左様ですか」
「そうだ。とにかく今オムダーマンの工兵はいい」
 そこをまた指摘する。
「それが今の彼等の進撃も支えている」
「では兄上」
 アブーはそこまで聞いて言うのだった。
「我々もまた」
「そうだ。戦時中とはいえ指示を出しておく必要があるな」
 シャイターンは冷静に述べた。
「そうではないか」
「はい」
「その通りです」
 二人の弟達はむべもなく答えてきた。これまでの話では当然の流れであった。
「それではすぐに」
「かかりますか」
「軍には私から達を出しておこう」
 シャイターンは即決した。そこまで何の迷いもなかった。
「それでいいな」
「異論はありません」
「私もです」
 フラームとアブーはそれぞれの口でそう答えるのだった。
「それではいい。では」
「そうして兄上」
 そのうえでフラームは兄に問うた。
「どうした?」
「工兵はそれでいいとして」
「まだ何かあるのか?」
「はい。それを使った今後ですが」
 彼はそれについて言及するのであった。今彼は政治家の顔になりそれで長兄に対して述べていた。彼は宗教家であるがそれと共に、いや若しかしたらそれ以上に政治家であるかも知れなかった。ムスリムにおいては珍しいと言えるタイプであろう。本来イスラムでは聖職者はおらずそうした意味で完全に世俗化しているからだ。元々シーア派の一派であるシャイターン家は宗教家も持っているのである。ここがスンニー派等多数派とは違っていた。なおサハラではシーア派も多い。そもそも二十世紀後半のイスラム原理主義の影響もあるがそこにはシーア派の過激な思想もあった。サハラのイスラムは連合やマウリアのそれに比べてかなり原理主義的なのだ。そこにシーア派のような厳格な宗教倫理も存在しているのである。なお連合のイスラムはスンニー派が圧倒的多数でありしかもその摂理はサハラのスンニー派よりもさらに穏やかなものになっている。連合とサハラの明らかな違いの一つであるとされている。
「工兵を使ってだな」
「そうです。道を作るべきではないかと考えます」
 フラームは兄にそう述べるのであった。
「オムダーマンと同じく。如何でしょうか」
「そうだな」
 彼は次弟の提案にその鋭い目を光らせてきた。
「悪くはないな」
「それでは兄上」
「そうだ。それもまた検討しておく、いや」
 ここで急に言葉を変えた。
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