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第二十七部第三章 もう一つの嵐その十五
『これでわかるよな』
『ああ、やっとわかったよ』
 その鈍い者もこれでようやくわかった。エウロパの事情を知っていてここまで教えてもらえれば誰にでもわかるというものであった。
『モンサルヴァート統帥本部長閣下か』
『そうだよ』
『あの人ならどうだ?』
『いけるな』
 名前が出ると更に賛同者が増えた。中には顔文字で笑顔を出す者までいる。
『何だ。いるじゃないか』
『それも凄いのが』
『ただしだ』
 しかしここで言葉が付け加えられる。
『あの人が選挙に出るかどうかはわからないぞ』
『出ないかな』
『可能性はある』
 そう前置きが為された。
『あの人はあまり政治に興味がないみたいだしな』
『それに生粋の軍人だしな』
 そこもまた問題であった。エウロパは政治家と軍人の違いが連合やマウリアに比べて曖昧なところがある。現役武官でも閣僚を務めることからそれがわかる。そうした意味では二十世紀に確立されたシビリアンコントロールとはいささか趣きを異にしているのである。
『そこのところはどうかな』
『頼まれたら出るんじゃないかな』
 かなり楽観的な書き込みがここで出た。
『あの人も』
『どうかな』
『そうだとしてもかなり難航するだろ』
 楽観に対して悲観が書かれた。どうしてもこうした流れになる。人というものは楽観と悲観でバランスを取りたがるものだからだ。どちらに偏り過ぎても精神的な均衡を崩してしまうものである。躁鬱というのもここにかなりの部分があると言える。
『何せ保守派にはいないんだからな』
『そうなるか』
『けれどやっぱりあの人しかいない』
 結局はそうなるのだった。
『ギルフォード侯爵に対抗できるとなるとな』
『あの人しかか』
『保守派には選択肢がないんだ』
 それが現実であった。惨いと言うべきかどうかはわからないが。
『他にな』
『じゃあ担ぎ出すしかないよな』
『そうだな』
 誰もがそう見ていた。
『そうなると』
『それで担ぎ出せるのか?』
『だからそれがわからないんだよ』
 少し怒ったような書き込みであった。それは今さっき為された会話だからである。
『どうなるかな』
『そうか、済まない』
『けれどあれだな』
 ここで面白がるような書き込みが入った。
『若し担ぎ出せたら面白いな』
『そうだな』
『確かに』 
 これには皆が納得して頷く。その通りだからだ。
『凄いのが三人選挙に出る』
『見がいがあるぜ』
『それだけじゃないぜ。応援や投票のしがいもある』
 選挙というものは厳かなものではない。かなりハレ、祭りの部分がある。だからこそ皆その精神を高揚させるのである。それはこういうことであるのだ。
『今回はな』
『楽しめるな』
『それに国的にも面白いぜ』
 イデオロギーや軍人、政治家とはまた違った視点での見方が今出て来た。
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