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第二十七部第三章 もう一つの嵐その五
「そこまではな」
「左様ですか」
「しかし。誰かを選ぶとなると」
 彼は言う。
「侯爵に対抗できる人物か」
「果たしているでしょうか」
「いるかも知れない」
 また述べる。醒めた声で。
「いないかも知れない。この場合はいない方が可能性が高い」
 テレビのギルフォードを見ながら述べる。やはりクールな声であった。
「それでも出さなければならないが」
「あえて若い政治家が出るかも知れませんね」
 ベルガンサは政治的な視点から述べた。
「名を挙げる為に」
「あえてか」
「若しかしたらですが」
「だとしたらその政治家はかなり勇気がある」
 モンサルヴァートは仮定に対して述べた。その仮定の対象が全く見えないものであるのであやふやな仮定であるがその結論は当たっていた。
「蛮勇と言ってもいい」
「蛮勇ですか」
「政治にも蛮勇は必要だ」
 意外な言葉であった。
「それは勇気と紙一重だがな」
「では勇気とすると」
 先程のモンサルヴァートの言葉を挙げた。
「その政治家はその勇気によりかなりの大物になれますね」
「そうだな。そこに能力が備わっていれば」
 やはりまずは能力であった。しかし勇気というものはその能力を大きく引き出す。これもまた政治の世界においても言えることであった。
「なれるな」
「ですね。果たして出るでしょうか」
「さてな。むしろだ」
 そうしてまた言うのだった。
「今の保守派は外から人材を求めるかも知れない」
「そうなりますか」
「確かな人材がいればな」
 そう前置きした。
「彼をスカウトするだろう」
「そうしなければ勝てないと」
「うむ」
 また頷く。ギルフォードを見ながら。
「まぐれもない」
「実に厳しいですね」
「それは改革派も同じだがな」
 もう一方の勢力についても言及する。計算づくの演劇のような話の流れになっていた。
「だが彼等は」
「カミュ外相がいますか」
「本来の保守派と改革派の対決ならば彼だった」
 モンサルヴァートはカミュは総統になれるとまで言う。それは彼の能力を正当に評価しているからこその言葉であった。人間的には様々な問題があるにしろ彼が政治家としては非常に傑出した能力の持ち主であることは確かだからだ。またカリスマ性があるのも認めていた。
「あの魅力もまたな」
 今もそれについて言う。
「そうそう備わっているものではない」
「そういえば外相は敵も多いですが」
 ベルガンサもモンサルヴァートの言葉を受けて気付く。
「支持者も慕う者も多いですね」
「そういうことだ。そうした魅力の持ち主なのだ」
 味方と共に多くの敵を持つ者もいる。それもまた魅力のあり方の一つだ。万人に愛されるタイプの魅力もあるがそうしたタイプの魅力もあるのである。
「彼はそうだな」
「この侯爵はどうでしょうか」
「若しかしたらだ」
 演説は終わり近くになっていた。テレビの中であるというのに周囲が興奮しているのがわかる。興奮しているのはどうやらテレビのスタッフらしい。
「最も恐ろしい魅力の持ち主かも知れないな」
「最も恐ろしい魅力ですか」
「そうだ」
 こう表現するのであった。
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