第六部第五章 処刑その一
処刑
八条と金は国防省の八条の執務室で正対して座っていた。二人はまずは風紀について話をした後金が本題を切り出した。
「そしてその本題とは」
「はい」
金は一呼吸置いて口を再び開いた。
「先の解放軍との戦いで逮捕した海賊達の引渡しですが」
「それならすぐにでも」
「それならば問題ありません」
今のところ彼等は軍が拘束している。そして今地球に向けて護送中である。
「今回の作戦成功おめでとうございます」
「いえ、それは軍人達の活躍です」
八条はそう言葉を返した。
「祝福の言葉は彼等にお願いします。私は何もしておりません」
彼は部下達へ言葉を向けてくれるよう言った。
「わかりました」
「はい。それでは海賊達は地球に到着し次第引き渡しますので」
「はい。ではドトール長官にはそう伝えます」
「お願いします」
こうして犯人引渡しの件は終了した。
「次の話ですが」
だが金はまた言った。
「次の話とは」
「そちらの警察権のことです」
「そちらというと軍のですか」
「はい。そちらには憲兵がおりますね」
「ええ」
憲兵とは言うならば軍の警察である。軍内の風紀や治安を取り締まる。時として嫌悪されることもある職種である。
「彼等の警察権ですが確か今のところは軍の中でしたね」
「はい。特例ということになっています」
「やはりそうでしたか」
金はそれを聞いてあらためて頷いた。
「ではそのとこについて提案があるのですが」
「はい」
八条は話を聞きながら何を言い出すのかと思っていた。
(この人は間違ったことは言わないのだが)
しかし非常に手厳しいことを平然として言う。中には劇薬もある。と言うよりは彼女自身が劇薬なのでそれはもう今更といった感じである。
「その憲兵隊の警察権ですが」
「はい」
「あくまで非常時に限ってのことですが警察権を通常においても適用されることにしたいのですが」
「よろしいのですか?」
「はい。いざという時は軍の力が最後の砦になるますから」
「ふむ」
八条はそれを聞いて考え込んだ。確かに非常時には軍の存在は頼りになる。金の言うとおり最後の砦だ。だがそれに対しては問題もある。
「しかしそれを理由にして中央政府の横暴などと批判もされかねませんし」
「あくまで非常時と申し上げましたが。例えば大規模な自然災害が起こった時などです」
「それですか」
「はい。これは戦争よりも頻発して起こり、かつ深刻な被害をもたらします。地震や台風はどの星でも起こりますし」
「地震ですか」
八条はその言葉に反応した。日本の所有する惑星はどれも地震が多いので知られているからだ。彼も震災に遭ったことがある。
「そうした時にすぐに行動をとれるのは軍だけです。そして治安にもあたれるのも」
「つまりそうした時に限って警察権を適用されるようにしたい、ということですね」
「そうです。それならば問題はないでしょう。元々テロリスト等にも適用されていましたし」
「彼等とは戦闘という形でしたがね」
「ですが今後はそれでは何かと制約があるかと思いますが」
「それはまあ」
八条はそれを認めた。
「少なくとも災害派遣には。実際にそれで支障をきたした例がありますし」
「やはり」
「先のバロン星系の地震においてもそうでした」
「あの地震ですね。確か被災者が百万を越えたとか」
「はい、あの時は法律的な制約がある為何かと行動に問題があったと反省しています。すぐに要請がありそれで行動に移せたのは幸いでしたが」
「そうした際に最も役に立つのが軍ですからね」
「はい」
それはもう言うまでもないことであった。
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