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第二十六部第四章 権威の失墜その十二
「彼等はそう言っています」
「やれやれ、日本人らしい」
 言葉がいささかシニカルになっていた。
「彼等はどうしてそう素材がどうとか本来の味とかこだわるのか」
「美味しさに上品を求めるのが彼等の癖ですな」
「より美味しいものへと改良するものではないのですかな」
 連合ではこうした考え方も多い。
「ワインならばより強烈な個性を前面に出して」
「左様、そうすればいいのに」
 神父としてはいささか俗物的な話題を言い合う。
「どうしてそう本来の味にこだわるところがあるのか」
「そこもまた日本ですな」
 彼等は苦笑いを浮かべて言うのだった。
「様々なアレンジを得意としながらも」
「何処かでその伝統を守ろうとする。わからない国です」
「そういえば」
 ここで話が教会に移った。
「バチカンが連合に移るとなるとあれですな」
 神父の一人が楽しそうに述べてきた。それはエウロパの神父達が危惧していたことであった。ところがその危惧は彼等にとっては無上の喜びなのである。
「我々の祖国の中から教皇様が出られるし」
「日本人の教皇も」
「ただ。あれですな」
 エウロパにとっては忌々しいことこのうえなく、連合にとっては何とも痛快で考えるだけで楽しくて仕方がない話になっていく。そう、彼等は楽しんでいた。
「大国に教皇が移るとなると」
「どうなるやら」
「何か大国というとまた彼等ですな」
「いやあ、何かにつけて出て来ますな」
 見れば彼等の中には大国出身者はいないようである。連合になるとどうしても大国と小国の問題が出て来る。小国出身者達にとってはまた大国が出て来るのは避けたいのである。
「といいましてもですな」
 神父の一人が述べる。
「大国でカトリックといえばケベックとブラジルだけではないですか」
「あとはフィリピンですか」
 ASEAN各国は日米中露やブラジル、ケベック程国力は高くはない。しかしその団結と交渉能力で小国にとっては厄介な相手になっているのだ。
「それ位では」
「いやいや」
 しかしここで言われる。
「あの四国というか」
「米中露は」
 結局この三国が出て来る。この三国が出ない話は連合においてはまずない。日本もそうであるがこの三国とはかなりスタンスが違っているのだ。
「常に出て来ますからな」
「どうしたものか」
 彼等にとってはあらゆることが影響力行使の対象なのだ。バチカンでさえも。
「バチカンも小国優先といって欲しいものですな」
「いや、それも難しいかと」
 これには異議が呈された。
「それはまた何故」
「宗教は一応は政治とは無縁ということになっています」
 あくまで一応は、である。実際にはやはり違うのだ。バチカンは俗世とは関わりがない、建前はそうであるしそうでありたいとかなり思ってはいる。だがそれでも完全には離れられないのである。これはエウロパの聖職者達に言葉と矛盾するがそれと共に矛盾しない。政治と宗教を完全に切り離すことはこの時代でも中々上手くはいっていないのだ。なお連合の一国であるタイではこの時代でも国王は仏教徒でなければならないが全ての宗教を保護しなくてはならないとタイの国内法によって明確に定められている。
「ですからこれに関しては」
「大国も盾に取りますか」
「あの三国はそうしたことにはかなり頭が回りますからな」
 千年前と全く変わってはいない。
「厄介なことに」
「何故ああしたことには目ざといのか」
 神父の一人が皮肉めいた言葉を言う。
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