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第二十六部第三章 女王の国その八
「この戦いにしろそうだ」
 話がアヤグーズとの戦いに戻った。
「コムでの戦いで全てが終わりではないのだ」
「戦いに勝って万々歳とはいきませんか」
「物語ならばそれでいい」
 彼もまたこう言うのだった。一度の勝利でハッピーエンドになるのは物語の世界だけなのだ。それから続きもまた存在するのだ。究極的に言えば人の世にはハッピーエンドもサッドエンドも存在してはいない。人の世界が続く限りは終わりがないのだから。
「しかし人の世はそうはいかない」
「人の世では」
「永遠に何かが続く」
 シャイターンはまた言う。
「戦いもそれに基くあらゆるものもな」
「政治もまた」
「果てしないものだ」
 今度はこう表現してきた。
「少なくとも人には何時終わるかわかりはしない」
「それを御承知なのはアッラーだけ」
 やはりアッラーであった。唯一にして絶対の存在こそがだ。
「さて」
 シャイターンはその言葉を聞いて不敵な笑みを浮かべ言うのだった。
「アッラーは私をサハラの主に定められたが。それを真っ当できるかだな」
「兄上ならば」
 アブーはそう兄に返す。
「必ずや果たせます。そうアッラーが定められていますので」
「そうだな。それではそれに従おう」
「はい。そして」
 アブーはここで言ってきた。
「そろそろ作戦会議の時間ですが」
「むっ」
 それを受けて時計を見る。見ればその通りであった。
「そうか、早いな」
「時は休まることがありません」
 彼は言う。
「ですから」
「わかった。それではそれに従おう」
 シャイターンは悠然と笑って言うのだった。
「時もまたアッラーが定められたものだからな」
「はい。それでは参りましょう」
「そうだな。ここで言うことは一つ」
 シャイターンは言ってきた。
「コムでのことだ。いいな」
「やはりそれですか」
「それしかあるまい」
 そう返した。
「まずはそれだ。コムでの戦いが我々にとって第一の関門になる」
「第一の」
「関門は一つではない」
 こうも言った。
「まだある。だがそれを一つずつ越えることにより」
「果たされていく」
「そういうことだ。さて、あの女王は」
 ブルコルジを見据えた。そこにはいなくとも彼女の姿を今はっきりと見ていたのだ。
「おそらく正攻法で来るぞ」
「正攻法で」
「彼女は誇り高い」
 彼女の性格について述べてきた。
「牝獅子のその誇りがそうさせるのだ」
「では我々もまた」
「その牙を受けよう」
 シャイターンは不敵に笑って述べてきた。
「受けるのですか」
「受けはする」
 そのうえでまた言うのだった。笑みと共に。
「それで倒れるのでは?」
「いや、倒れはしない」
 そのうえで笑みを続ける。
「それだけではな」
「自信がおありですか」
「人は私を魔王と呼ぶな」
「ええ、そういえば」
 兄自身によって兄の話を振られるのはやや奇妙だがそれに応える。シャイターンは確かに英傑であるがその陰のあるところと謀略を好むという噂から魔王と呼ばれているのだ。もっとも謀略を好むというのは真実であるが。
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