第二十五部第五章 ジェルメ星域会戦その三
「それで追い出すだけってのは欲ないだろ」
「それもそうか」
「ああ。ここはでっかく行こうぜ」
「でっかくか。何か俺には向いていないな」
彼は首を傾げてそう述べてきた。
「慎重にな」
「何だよ、夢がないな」
同僚はその言葉に苦笑いを浮かべる。
「やっぱり派手にいかないと駄目だぜ」
「御前派手にやるの好きだな」
「否定はしないさ」
ニヤリと笑って述べる。
「それはな。男はやっぱりあれだぜ」
「それで武勲をあげて末は司令官か」
「ははは、悪くないだろ。一兵卒からっていうのもな」
「まあ頑張れ」
彼は笑ってそう返した。
「それも生き方だしな」
「ああ。しかしあれだな」
「あれ!?」
「長い戦いになりそうだな」
目の前のデータを打ち込みながら述べる。
「この戦いは」
「まあそうだな」
彼もそれに頷く。彼は目の前の機械のチェックをしている。
「アスランまで行くとなるとな」
「遠いよな、ったくよお」
同僚はそう述べて溜息をつく。オムダーマンの首都アスランは西方の端の方にある。ハサンの首都ブルジルトは北にある。その距離はかなりのものだ。距離が問題になるのはハサンとて例外ではないのである。特に攻める場合はそうである。
「行くとなるとな」
「先にティムール倒した方がいいかもな」
「ああ。そっちもな」
ハサンが戦っているのはオムダーマンだけではないのだ。彼等は南と西で二正面作戦を展開しているのである。だからこその言葉だった。
「まあそこは上の話だ。俺達は戦うことだけ考えればいいな」
「武勲のことだけか」
「簡単でいいだろ。どうだ?」
「兵隊はな」
彼はそう言葉を返す。
「戦って敵を倒せばいいんだからな」
「勝って武勲を挙げればそれで昇進だ、ボーナスもあるぞ」
「ボーナスか。そっちだな、俺は」
「おいおい、御前は金かよ」
「ああ、そうさ」
彼は同僚の言葉に笑う。笑いながら機械のチェックを続ける。
「金が入ったらバイクでも買うさ」
「御前この前車買わなかったか?」
軍人で車やバイクを好きな者はかなり多い。連合では給料の殆どをそこに注ぎ込む者もいるしそれを手に入れる金をすぐに貰う為に軍に入る者もいる。連合軍らしいと言えばらしいがこれはサハラでも同じ者がいたりする。こうしたところは連合もハサンも同じなのだ。
「だから今度はバイクなんだよ」
彼は言う。
「アメリカのバイクを買う、その金でな」
「何だ、連合のかよ」
「バイクはやっぱり連合のだろう」
そう同僚に問う。その顔を見ているとかなりのこだわりが彼にもあることがわかる。
「迫力が違うぜ」
「まあそうだな」
同僚もそれに頷く。
「大きさもデザインもな。連合のものの方がいいか」
「サハラのはな。何か弱いんだよ」
彼は困った顔をして述べる。どうやらサハラのそれをかなり嘆いているようである。それは愛国心によるものであることもわかる。この場合はサハラ全体に向けられている。
「小さいし性能もな」
「性能もか」
「ああ、全然違う」
困った顔のままで言う。連合とサハラの技術の差がここでも出ていた。
「連合のそれが羨ましいな」
「俺達もあんなの作られるかな」
「それはできるだろ」
彼もそれは可能だと思っていた。しかし今は無理だとも思っていた。軍事に技術を向けておりしかも戦乱で産業も停滞する傾向にある為どうしてもそうした分野で平和な連合とは大きく差が出てしまうのである。サハラの弱みでもある。
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