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第二十五部第四章 第二の関門へその八
「今はな」
「迂闊に進めば敗北ですか」
「それこそハサンの思う壺だと」
「敵の手に乗る必要はない」
 また言った。
「無論こうして慎重に進むのも敵は考えているだろうがな」
「それでもですか」
「そうだ、こうした戦いもある」
 慎重に先に進むのもだ。臨機応変ということである。
「敵の想定内にあえて入り」
「それを破っていく」
「これもまた戦いだ」
 落ち着いてはいるが硬質の言葉が続く。やはり前を見据えていた。
「ジェルメでもな」
「ジェルメでの戦いは熾烈なものになると思われます」
 またガルシャースプが口を開いてきた。やはり彼もアッディーンを見ていた。
「間違いなく」
「それはわかっている」
 アッディーンもそれに頷く。
「当然な」
「左様ですか」
「そのうえでだ。ジェルメは今後使いたい」
 ジェルメの今後についても話す。基地として使うという構想である。
「ジェルメを陥落させればそれだけで拠点を築くことができる」
「そうですね」
「だからこそ我々は今」
 北に向かっているのだ。アッディーンはさらに命令を下した。
「全将兵に伝えろ」
 彼は言う。
「交代で休息を取れと。いいな」
「はっ」
「わかりました」
 参謀達もそれに頷く。それには彼等も入っているのだ。
「それでは」
「司令もまた」
「いいのか?」
「はい、時には休まれることも必要です」
 参謀達はそう述べる。アッディーンは顔を彼等に向けていた。
「時にはか」
「琴も常に弦を張っているわけではありません」
 誰かが言った。
「ですから」
「戦いの前に英気を養われるべきかと」
「わかった。それではな」
 アッディーンはそれに頷くことにした。
「頃合を見てそうさせてもらう」
「それが宜しいかと」
「そして戦いの前には」
「全ての将兵の気力と体力を最高の状態にしておきたいものだ」
 将兵のコンディションの管理もまた指揮官の義務の一つである。彼は今それにも目を配っていた。それを忘れて敗北した例も当然ながら多い。士気もその一つであるし疲れの問題もそうである。人が戦うものである以上この問題から離れることはできない。
「可能な限りな」
「はい」
「だからこそ」
「私もというわけだな」
 指揮官もその中に入っているのは言うまでもない。言い換えれば自信のコンディション管理もできない指揮官はそれだけ失格というわけである。
「無論です」
「ですから機を見て」
「よし」
 その言葉を聞いて頷いてきた。
「ではそのようにしよう。貴官等もな」
「わかっております」
「頃合を見て」
「うむ」
 オムダーマン軍は英気もまた養っていた。戦いは続きその中でも様々なことが行われていたのであった。これはハサン軍も同じであった。彼等とて決して愚かではなかった。
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