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第二十五部第二章 国境の異変その十六
「後はそれを出すだけだ。いいな」
「わかりました」
「それでは」
「迷わずに進めばいいのだ」
 こうも言う。
「私は勝利に誘おう。いいな」
「閣下が」
「それでは我々は」
「私を信じて来るのだ」
 彼は言う。
「勝利へ」
「最後に勝つのは我々であると」
「そうだ、全ての勝利は諸君等に」
 また彼等に語る。
「いいな。それでは栄光と勝利に向かって」
「はい!」
「是非共!」
 港にいる全ての将兵達から喚声があがった。これはすぐにオムダーマン軍全てに伝わった。彼等は戦意を最高にまで高めたまま進撃を再開させる。そうして北に向かうハサン軍を追撃にかかったのであった。
 この演説のことは他の勢力にも伝わった。シャイターンはそれを聞いて少し考える顔になったのであった。
 彼は自身の艦の司令室においてその話を聞いていた。伝えたのはハルシークであった。
「そうか、見事な演説だったのか」
「はい」
 ハルシークはその言葉に敬礼で応える。軍人らしい返答であった。
「それによりオムダーマン軍の指揮は頂点にまで達したそうです」
「見事と言うべきかな」
 アッディーンはそれを聞いて呟いた。
「彼もまた」
「青き獅子の実力はここでも発揮されたということか」
「そうかと」
 ハルシークはその言葉に頷く。
「やはり彼は英傑であると思います」
「英傑か」
 シャイターンはその言葉に顔を向けてきた。英傑という言葉に何かを見たのである。
「この演説によりそれがさらに確かになったかと思います」
「そうだな」
 シャイターンはまたその言葉に頷く。
「それだからこそ」
「はい、閣下もマルヤム様を娶わせたのですね」
「そうだ」
 彼もそれに頷く。否定するつもりはなかった。
「彼は確かに英傑だ。だが」
「だが?何か」
「こういう言葉がある」
 シャイターンは述べてきた。
「両雄並び立たずとな」
「といいますと」
 ハルシークはその言葉に目を鋭くさせた。彼が何を言いたいのかわかっていた。だからこそ目を鋭くさせたのである。シャイターンもそれに気付いていた。
「ハサンの後だな。どうなるか」
「ハサンですか。やはり」
「そうだ。この戦いはおそらく長いものになる」
 彼もまたハサンとの戦いはそう見ていた。ハサンの力は尋常なものではない。長きに渡ってサハラにおいて第一の強国であり続けた国だ。例え多くの人材がいなくなってはいてもその力そのものは健在であるのだ。だからこそ侮ってはいなかったのである。
「しかしだ。その後は」
「どうなるでしょうか」
「いや、そこから先はまだ確かではない」
 それを言う。
「しかしだ。それでも」
「可能性としてはですか」
「有り得る。どんな事態もな」
 またそれを言う。言いながら先にあるものを見ていた。
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