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第二十五部第二章 国境の異変その六
 太子が首都であれこれと苦心しているその時に前線ではダビデブが会議室において難しい顔をしていた。その顔で参謀達に対していたのであった。
「パンフィクが陥落したか」
「はい」
「そして第二十七艦隊も」
「降伏したのだな」
「左様です」
「このままでは」
 参謀達はダビデブに述べる。ダビデブはそれを微動だにせず彼等の話を聞いていたのだ。
「ここに来るのも時間の問題だな」
「どうされますか、司令」
 参謀達は彼に問うてきた。
「一応はガズニー方面に部隊を送っていますが」
「しかし。パンフィクが陥落した今は」
「守りきれるとは限らないな」
「その可能性は少ないかと」
「パンフィクがなくては」
 全てはパンフィクがあってのことだったのだ。しかしそれがなくてはどうしようもない。彼等のガズニー方面における戦略は根本から破綻してしまっていたのである。
「わかった」
 ダビデブは彼等の言葉を聞き断を下した。
「ガズニー方面に向かわせている部隊にすぐに通信を入れよ」
「帰還ですね」
「そうだ、それも全速力でだ」
 険しい顔でそう述べる。
「躊躇していてはオムダーマン軍に追いつかれ倒されるぞ。いいな」
「わかりました」
「それでは」
 参謀達はそれに頷く。そうしてその中の一人がすぐに退室して何処かに向かった。ダビデブはそれを見届けた後でまた言葉を続けるのだった。
「彼等が戻ったならばだ」
「はい」
 参謀達は彼の言葉に顔を向ける。それぞれの目の光が彼を見据えていた。
「すぐに国境を下がるぞ」
「国境をですか」
「そうだ」
 彼は告げる。
「挟撃されては不利だ。まして我々は今動揺している。この状況で戦ったならば」
「恐ろしいことになると」
「そうだ。敗北は必定だ」
 今それを参謀達に告げてきた。それは厳然たる事実を見越したものであった。
「今ここで敗北するわけにはいかない」
 またそれを言う。
「それならばこそだ。勝利の為に」
「国境を捨てるのですね」
「ですが司令」
 参謀の一人が彼に対して述べてきた。
「何だ?」
「国境にある防衛施設を放棄されるのですよね」
「残念だがな」
 ダビデブは苦い顔を一瞬見せた。しかしそれはほんの一瞬でありすぐに消した。
「そうするしかあるまい」
「左様ですか」
「全ての責任は私が持つ」
 覚悟は決めていた。司令官に必要な資質として覚悟がある。彼にはそれがあった。そうした意味でも彼は優れた人物と言えた。
「それでいいな」
「は、はい」
 参謀達はやや驚きながらダビデブのその覚悟に応えた。
「わかりました。それでは」
「宜しいのですね」
「私一人の責任と国境にいる全ての将兵の命」
 ダビデブは彼等に応えて述べてきた。その目が強い光を放っている。それこそまさに覚悟を決めた光であった。無言の迫力さえ備えているものであった。
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