ブックリスト登録機能を使うには ログインユーザー登録が必要です。
第二十五部第一章 国境の動揺その一
                   国境の動揺
 サハラでのことはサハラだけでは済まない。各勢力、各国家にも影響を及ぼす。それは当然ながらマウリアに対しても同じことであった。
 マウリアは連合と同じくまずは自分達の権益を確保した。そのうえでこの戦争の行く末を見守っていたのである。
「まず御聞きしたい」
 マウリア中央議会において野党の議員がクリシュナータ率いる与党に対して質問していた。マウリア風の建物の中にあるその議会はイギリス形式であり左右に分かれてある程度の距離を保って席がある。その議員はそこでクリシュナータ達を前にして立って問うていたのである。
「今のサハラでの戦いでの備えはあるのでしょうか」
「備えといいますと」
 国防大臣であるラーンチが問い返した。
「何のことでしょうか」
「言うまでもありません」
 その議員はラーンチに顔を向けた。そのうえでまた言うのであった。
「今サハラは激しい戦闘の中にあります」
「はい」
 ラーンチはまずその言葉に頷いた。
「確かに」
「それへの備えであります。それは万全でしょうか」
「少なくとも彼等は我々へ攻め込むことはありません」
 ラーンチは穏やかにそう述べた。
「それはおわかりかと」
「無論です」
 議員もそれはわかっている。サハラはサハラ内部でだけ争ってきたし今でもそうだ。マウリア政府も各国とは不可侵協定を結んできている。その為サハラでの戦禍がマウリアに及ぶことはなく今もそれは変わらないのだ。
「しかしです」
 彼はそれでも言う。
「それでも問題はあるではありませんか」
「難民ですか」
「左様」
 議員はラーンチにまた述べる。
「それへの備えは。大丈夫なのですか?我が国に大量の難民が押し寄せるということは」
 戦乱の結果多量の難民が出る。これはよくある話だ。実際にサハラではそうしたことが度々あった。その中で最も深刻な問題になったのはエウロパのサハラ侵攻であった。これは連合にまで及びサハラ全土に及んだ問題であったのだ。
「ないでしょうか。ハサンは実際に我が国と国境を接していますし」
「それですな」
 別の野党の議員もそれに気付いて声をあげてきた。
「若し彼等が我が国にまで流れてきたならば」
「深刻な問題が生じますな」
「御安心下さい」
 しかしラーンチは彼等にこう答えた。
「それへの手は既に打っております」
「それは一体」
 最初に問うた野党の議員はその言葉に顔を向けてきた。黒く輝く目で彼を見据えている。
「まずは条約です」
 それが彼の最初の返答であった。
「条約ですか」
「既に各国と条約を結んでおります。難民が発生した場合は」
「それはよく存じております」
 議員もそれには納得した顔で頷いてきた。
人気サイトランキング site_access.php?citi_id=254078182&size=200小説・詩ランキングcont_access.php?citi_cont_id=343008101&size=200


+注意+
・特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
・特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)
・作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。