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第六部第二章 害虫その四
 彫刻を思わせる整った顔立ちをしている。鼻は高く、彫りが深い。口元もきりっとしており見事な金髪も豊かであった。だが彼の特徴はそれだけではなかった。
 彼の最大の特徴はその眼であった。左右で色が違うのだ。
 右目は青で左が緑であった。ごくごくまれにいるフェアリー=アイズであった。それが彼の美貌を更に引き出していた。
「右目は父の、左目は母のものです」
 彼はそれについて聞かれるといつもこう言う。彼の両親はカナダ人であり彼の国籍もそうである。
 確かに彼の父の目は青かった。そして母の目は緑であった。二人共コーカロイドに血が強く、彼の肌も白く、顔立ちもそれであった。だがやはりアジア系の雰囲気もあった。体毛が薄いのである。連合の者はエウロパの者と違い微妙に肌の色が濃かったり、体毛が薄かったりする。これも混血の影響であった。
 そのせいか連合においては毛深い男はあまり好まれない傾向にある。中にはそれがいいという人もいるがどちらかというと好まれない。それが不服な者もいるが。
 彼はその混血の成功といってもよかった。整った顔にその二つの眼は異性の心をとらえずにはいられなかった。彼もそれを拒まず色々と浮名も多い。
「カナダ人というのは大人しいイメージがあるが」
 軍の中では彼の派手な女性遍歴に戸惑っている者が多かった。
「あれではまるでエウロパのイタリア人じゃないか。よくもまああれだけ続くものだ」
「未婚の女性としか付き合っていないからいいじゃないですか」
 ディカプリオはしれっとしてこう反論する。ちなみに彼の父方のルーツはイタリアにあるという。この姓はそこから来ているのである。
「イタリア人か」
 八条も彼等の気質については知っていた。
「羨ましいな。ああした生き方も」
 女性には極めて奥手な彼はそう思う時もある。だがそうはなれないのが人間というものだ。急に変わることは極めて難しいのだ。
 だから今も独身であった。人気があるのに、だ。パーティーでも常に女優やモデルが側にやって来る。だがそんな花達にも何もしない。ディカプリオとは正反対であった。
「情報部長には情報部長の付き合い方があるな。私には私の」
 そしてこう結論付ける。結局話はそれで終わってしまうのだ。
 彼は席に就いた。そして一同を見回した。
「さて皆さん」
 その場に集まった連合軍の最高幹部達の目が彼に集中する。彼はそれを感じながら言葉を続けた。
「今回集まって頂いたのは他でもありません。解放軍と自称する海賊達についてです」
「はい」
 元帥達は一様に頷いた。
「先の閣僚会議で彼等に対する対処が決定しました」
 彼はあえてゆっくりとした声で言う。
「それは」
 そしてその調子のまま言葉を発する。
「征伐です。彼等を除くことになりました」
「はい」
 皆驚くことなくそれに頷いた。それは既にわかっていたことであった。
「そしてそれについての戦略ですが」
 八条は話を続ける。
「百個艦隊を派遣することになりました。その際マウリアの全面的な協力も得られます」
「全面的にですか」
 後方支持部長であるコアトルが問うた。
「はい。領域内の航行の自由、作戦行動の許可、補給の援助、そして軍の派遣の約束を得ました」
「そうですか。それはまた」
「大きな協力ですな」
 マナドも声を発した。彼等の予想を越える協力であった。彼等はマウリア領内の航行の自由が得られれば御の字だと考えていたのだ。
「しかしこれで作戦の幅が大きくなりましたね」
「ええ。私もそう考えています」
 八条はマナマに答えた。
「カバリエ外相が頑張ってくれましたから」
「おお、あの方が」
 皆それを聞いて微笑を浮かべた。だが完全に喜んではいない。何処か苦笑があった。
「あの人ならやってくれるでしょう」
「女傑ですから」
 カバリエは豪腕としても知られているのだ。いいと思った考えはあくまで通そうとする。時として妥協すらしない。その巨体を生かして一直線に突き進むのだ。
「さぞかしマウリア側も困ったことでしょう」
「まあそれは置いておきまして」
 流石に食べ物から入ったとは言い出せなかった。彼もあれには驚いているのだ。
「しかしこれで彼等をマウリア側からも攻めることが可能になりました。これは大きいですな」
「ええ。今までは何かというとあちらに逃げられましたから」
 バールの言葉に劉が答えた。
「そしてマウリアが攻めるとこちら側に逃げる。実に巧妙でした」
 マクレーンも言った。苦虫を噛み潰した顔になっていた。
「ずるい連中です。だからこそ海賊なのでしょうが」
「しかし今回でそれも終わりですね」
 マクレーンの言葉が終わるとディカプリオが口を開いた。
「既に彼等の動向は掴んでおりますし」
「もうですか」
 八条だけでなく他の者も皆それに声をあげた。
「はい。これを御覧下さい」
 彼はす言いながら会議室の三次元モニターのスイッチを入れた。するとそこに解放軍の潜んでいる連合とマウリアの国境が映し出された。
「ここが彼等の本拠地です」
 彼はレーザーでアステロイド帯の中の大きな星を指し示した。
「そしてこの辺りが彼等の行動範囲です」
 そして次にその周りに拡がる円を指し示した。
「彼等はこの一帯で活動しております。連合とマウリアにまたがって」
 その円はかなり大きかった。中には星系も幾つか入っている程である。時としてこれ等の星系に出没することもあった。流石に防御が堅く星が狙われることはなかったがコロニーへの襲撃はあった。
「その規模は一千万、艦艇にして約十万です」
 それは連合内の海賊でも飛び抜けて多いものであった。
「そしてその地形もまた厄介なものであると言わざるを得ません」
 彼の説明は続く。確かに彼の言う通りであった。
 だからこそ今まで彼等の征伐を果せなかったのだ。複雑な地形に隠れてゲリラ戦を展開して来る。地の利は彼等にありとても相手にならなかったのだ。
 大軍を差し向けてもそれは同じであった。そして連合もマウリアも悪戯に損害を出していたのだ。
「彼等は比較的小規模の艦隊に分かれて行動します」
「多くても五十隻程度のな」
「はい。外に出れば大艦隊を組みますがこの中の戦いではそうしてゲリラ戦を展開します」
 彼はバールに答えた。
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