第二十四部第二章 北の嵐その八
その北、エウロパにおいては何かと騒ぎが起きようとしていた。ラフネールの下にも何かと人の出入りが多くなってきていた。
ラフネールはその者達と話をする。話は一つでは終わらない。
「またか」
「はい、またです」
その中の一人が述べる。
「教皇の連合行きを止める声明です」
「もう決まったことなのだがな」
ラフネールはその言葉に苦い顔を浮かべる。そのうえで述べていた。
「残念なことにな」
「まことに」
報告した男もそう返した。
「厄介なことです」
「予想はしていた」
彼は言う。
「しかし。実際にこう続くと」
「精神的に参りますか」
「それが大きいな」
その通りであった。実際に顔を苦くさせていた。
「気持ちはわかるが。私もキリスト教はカトリックだ」
「ええ」
「しかし。条約で決まってしまった。それを遵守しなければ」
「連合軍が来ます」
それが現実であった。敗北したエウロパにそれを止めることは無理である。それが最もよくわかっているのはラフネール自身である。
ラフネールはそんな彼等の説得にあたっていた。しかし納得しない者達も当然ながらいるのだ。彼等は軽挙妄動に走る危険性も充分にあった。それへの危惧も報告されていた。
「バチカンはもう移転の準備は完了しているのか?」
「はい」
報告をした官僚は彼に答える。
「既にもう」
「そうか」
ラフネールはそれを聞いてまずは頷いた。
「それは何よりだ」
「しかし閣下」
その官僚は彼に述べる。
「やはり納得しない者達が」
「デモを起こしているな」
「それだけならいいのですが」
言葉に苦いものが含まれる。
「彼等の中には」
「テロか」
「その噂もあります」
「その目標は何処だ?」
ラフネールはそれに問うた。
「我々か?それともバチカンか?」
もう去ってしまうのなら一思いに、そう考えるのは人としてよくある感情である。思い詰めた結果としてそう考えてしまうのだ。人というものは複雑なものである。その複雑な感情は時としてそうした愚かな行いに駆り立てるものだ。
「狙いは」
「両方のようです」
官僚はまた述べた。
「色々な過激派が出て来ていますので」
「そうか」
「はい。どうされますか?」
「テロだけはあってはならない」
ラフネールの考えは国政を預かる者として当然の決断であった。彼は国の治安の為にここは断固たる処置を選んだのであった。それは正しい決断であった。
「まずは警護を増強する」
「そして?」
「次にそうした者達を炙り出す。片っ端から検挙するのだ」
「わかりました」
官僚はその言葉に頷いて応えた。
「では内務省にも伝えるのですね」
「うむ」
その言葉に頷く。
「ボーデン首相とも話をしたい。いいか」
「それではすぐに手配を」
「いや、待て」
しかし彼はここで一旦止めた。
「何か」
「補佐官も呼んでくれ」
「アランソ補佐官もですか」
「そうだ。わかったな」
「はい、それでは」
こうしてボーデンの他にアランソも呼ばれることになった。二人は夜に呼ばれた。それぞれ夕食を終えラフネールの私邸に集まった。
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