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第二十四部第一章 戦いの幕開けは静かにその六
「敵将はダビデブ元帥だ」
 アッディーンは何故かまた同じことを述べた。それが提督達には妙に思えた。しかし彼はそれに構わずに話を続けてきた。
「彼は優れた人物だ。とりわけ兵の統率がな」
「ええ、確かに」
「そこに何が」
「それだ。私が後方から攻撃を仕掛ける」
 ダビデブの統率について言及したうえで話を元に戻してきた。
「そうすればその見事な統率にも一瞬だが乱れが生じるな」
「成程」
「そういうことですか」
 そこまで聞いて提督達も理解した。彼は挟撃を言っているのだ。
「そこだ。一気に攻めるのだ」
 アッディーンは言う。
「わかったな」
「わかりました」
「それでは」
 提督達はそれに頷く。
「ではそのように」
「まずは動かずに」
「決してな」
 アッディーンはまた言った。
「軽はずみこそが敗北につながる。それだけは心得てくれ」
「そして敵の動きが乱れたならばですか」
 ラーグワートは再びそれを問うた。
「そこで六十個艦隊が」
「勝敗は一瞬で決する」
 アッディーンはこうも述べる。
「それを見誤らないようにな。見誤ればその時は」
「敗北、ですか」
 ナクールが呟く。
「それで」
「そうだ。だからこそ」
「慎重に、かつ機を逃さず」
 ナクールの今の言葉は言うのは容易いが実行にはかなりの困難が伴う。そういった言葉であった。
「ですな」
「わかったな。ではすぐに作戦に取り掛かる」
 アッディーンは提督達に告げた。
「いいな」
「はっ」
「わかりました」
 諸将がそれに応える。こうしてアッディーンは十個艦隊を連れ本軍と分かれた。その際の行動も徹底的に隠蔽していた。ハサン軍に気付かれないように注意を払いながら分かれたのである。
 アッディーンはアリーに乗艦しアステロイド帯に向かう。その中でガルシャースプが彼に問うのであった。
「また今回も大きな賭けですな」
「賭けではない」
 しかしアッディーンは落ち着いた様子でこう返す。
「成功の可能性は?」
「私の考えは知っていると思うが」
 アッディーンは今度はこう返した。
「確実に成功するものでなければそれを実行に移しはしない」
「では確実に為し得ると」
「その通りだ」
 彼は前を見据えて断言する。目の前に広がる無限の星の大海原を眺めながら。星の海は目に見える限りでは平穏としている。しかし今その海は戦乱により荒れている。それはアッディーン自身が最もよくわかっていることであった。兵を動かしているのは彼であるからだ。
「既に道も見つけてある」
「道もですか」
「そこを通りガズニーに急行する」
 彼は言う。
「そこで補給を整えなおすと共に拠点にし」
「防衛ラインを衝く」
「そして敵陣を乱す」
 そこまでが彼の受け持ちであった。
「後は主力艦隊が動いてくれれば。それでよい」
「ですか」
「本当に全ては一瞬で決まる」
 アッディーンはまたそれを述べた。
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