第二十三部第五章 時は迫れりその十
「至高の座なのだからな」
「至高のですか」
「そうだ。私は何だ」
従者達に問う。
「えっ」
「私は何だと聞いているのだ。何なのだ、私は」
「はい」
従者の一人がそれに応える。
「メフメット=シャイターン様です」
「そうだな。その私が手に入れるものと言えばわかるな」
「勿論です」
彼等は答える。
「私が目指すものは一つだ」
「皇帝であると」
「その通りだ。サハラは私によって一つになる」
それが彼の究極の野望であった。その野望の前にはどのような障壁も意味はなかった。彼にとっては覇業以外はなかったのだ。
「いいな」
そしてワインをまた飲む。それから今度はマトンのステーキを切ってから口に入れる。
「それにしても」
ステーキを食べてから述べた。
「ステーキもな。いい味だな」
「有り難うございます」
「しかしな」
彼はさらに言う。
「これは完全なものではないな」
「といいますと」
「最高の胡椒を使っている。最高の技術でな」
「はい、それは」
従者の一人がそれに応える。
「シェフの自慢の料理です。スパイスも念入りに選んだ」
「シェフの腕は最高だ」
シャイターンはそれは認めた。
「しかしだ」
「何か」
「この胡椒は北方では確かに最高だ。だが」
そして言う。
「サハラで最高ではないのだ」
「では」
「そうだ。胡椒はやはり」
彼は言う。
「南方のサダム星系のものが一番いいな」
「それもまた統一が成ればですか」
「そういうことだ。わかるな」
「はい」
従者達はその言葉に頷く。
「それでしたら」
「無論それだけではないがな」
シャイターンはさらに言葉を続ける。
「サハラにはあらゆるものが存在している」
この言葉は間違いではなかった。実際にサハラは元々も豊富な鉱物資源に開発に適した惑星を多く持っている。その豊かさは連合のどの国にも負けてはいない。マウリアにも匹敵するかそれ以上と言われ長い間その潜在能力を言われ続けてきているのである。
「しかしそれは眠ったままだ」
「それを引き出されるのですね」
「それが私だ」
不敵な笑みが顔に浮かんだ。
「この羊にしろそうだ。最高の味にしてみせる」
「最高の味にですか」
「最高の肉に最高の調味料」
料理には欠かせないものだ。これは料理を少しでも知る者にとっては常識である。
「最高のシェフは既に我が手にあるのだからな」
これは単にシェフを言ったのではない。人材そのものを評しているのである。サハラの人材は優れていると。言っているのである。
「ならば恐れるものはない」
「後は統一されればですか」
「サハラの栄光がはじまる」
シャイターンは述べる。
「この私の手によってな」
魔王の笑いであった。しかしこの魔王の笑いは。サハラを栄光へと導かんとする魔王の笑いであった。ただの魔王の笑いではなかったのである。
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