第二十三部第四章 舞台は複数整いその十七
「では」
「うむ。それでだ」
王はまた言う。
「この後はどうするのだ」
「まずはまだ仕事が残っていますので」
彼はそれに応えて述べる。
「一旦また執務室に戻ります」
「そうか」
「しかしそれは早いうちに切り上げます」
こうも述べた。やはり父王の言葉を受けてのことであった。
「そして休むことにします」
「そうだ、それがいい」
王はその言葉を聞いて満足げに頷いた。
「わかるな。休養の大切さが」
「はい。それではそのように」
「身体を大事にしろ。これからが肝心なのだしな」
「ええ」
太子もまたその言葉に頷く。確かな顔で。
「戦いに勝利を収めた者こそがサハラを治める。そして」
「皇帝になると」
預言の通りであった。彼等もそれを知っていた。だから今それを言うのであった。
「皇帝になるのは御前だ」
王は今また太子を見据えてきた。
「よいな、それは」
「私がですか」
「そうだ。そうなったならばわしは王位を退く」
彼は言う。
「そして御前が皇帝になるのだ。よいな」
「宜しいのですか、それで」
太子は父に問うた。
「父上が皇帝になられなくて」
「この様な老いぼれが皇帝になって何とする」
王は我が子の言葉に自嘲めかして笑ってきた。彼は自らの衰えを誰よりもわかっていた。彼にしてみればこの言葉は自然な言葉であった。
「そうではないのか?それに今ですら御前にかなりのものを任せているのだ」
「はあ」
実際に太子は摂政となり実質的な国政の指導者となっている。王が以前病に倒れ健康を損ねてからそうしてきているのである。
「だからだ。御前が皇帝になるがいい」
「わかりました」
彼はその言葉に頷いた。そしてまた言う。
「では私が。サハラを治める者に」
「よいな、それで」
「わかりました」
彼は今意を決した。それをはっきりと述べたのであった。
「では」
「だからこそだ。これからは激しい戦いになる」
王は言う。
「サハラの全てを巻き込んだな。かつてないものになる」
「はい」
太子もその言葉に応える。これはわかっていた。
「わかっております。長い戦いになるでしょうが」
「勝たなければならない」
それは絶対であった。戦うからには勝たなければならないのだ。それが政治の一手段としての戦争なのだ。負けていいというわけにはいかないのだ。特に今回はである。
「ではわしが言うのはこれで終わりだ」
「はい、それでは」
「うむ。またな」
夜食は終わり太子は父王の下を離れた。それからは食事に気を使いかなり身体に注意するようになっていた。こうして彼も戦いに備えていたのであった。三国の戦いの火蓋が切られるのは時間の問題であるのは彼もよくわかっていたからであった。
全てははじまろうとしていた。
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