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第二十三部第四章 舞台は複数ありその七
「数は我等の方が優勢です。戦争はやはり数です」
「そうです。それに」
 太子が危惧していた言葉が次々と出る。そして彼はそれを聞くしかなかった。止めることもできなかったしそれに気付く者もいなかった。
「護りは固めています。今や我がハサンは国全体が要塞です」
「要塞か」
「はい」
 ここで太子は言葉にシニカルなものを入れたがやはり誰も気付かない。
「そうです。しかもそれは難攻不落です」
「殿下、我等の勝利はもう決まっています」
「サハラが我等のものに」
「そうなればいいがな」
 しかし彼は周りの者にとっては何故かといった感じで懐疑的な言葉を述べてきた。
「果たして上手くいくかどうか」
「無論です」
「疑う余地はありません」
 彼等は気付かないまま述べる。
「ですから」
「それは我々が要塞となったハサンにいるからだな」
「その通りです」
「それ以外に何がありましょうか」
 また彼に答える。
「勝利が今我等に」
「一つ言っておく」
 太子は多くは語らなかった。だがあえて一言だけ言うことにしたのであった。
「何か」
「要塞だな」
「ええ」
 将官の中の一人がそれに答えた。
「その通りです」
「そうか。要塞は言うならば城だな」
 彼はそれを確認してきた。
「そうだな」
「そうですが」
「殿下、一体何を」
「聞いているのだ」
 彼は周りの者の言葉に構わずに続けた。
「城だと今確かに言ったな」
「そうですが」
 問われている将官はさらに述べる。自分が当然のことを言っているといった顔をしている。
 そして太子も咎める顔でも声でもなかった。ただ問うているだけだ。しかしその問いの内容が問題なのである。彼にはそれがわかっていたが周りの者にはわかってはいない。
「これは昔の日本の戦国大名が言った言葉だ」
「戦国大名?」
「言うならば豪族だ」
 問いにこう返した。
「そう考えればいい」
「豪族の一つですか」
「そうだ。武田信玄といった」
 戦国大名は戦国時代にその国の主となった大名達のことである。室町時代の守護大名がなった場合もあれば下克上により守護代や豪族がなった場合もある。中には一介の僧侶が流れ着いてその子孫がなった場合や油売りからなった場合もある。そのケースは実に多岐に渡る。
 武田信玄はその中でも最も有名な一人である。甲斐の国の戦国大名で元々は甲斐源氏の血を引く名門であった。守護大名がそのまま戦国大名になった例の一つである。
 彼は政治家としても武将としても非常に優れていた。教養もあり実に人間として深みがあった。その彼の言葉を太子は出そうとしていたのである。
「人は城というのが彼の言葉だ」
「人は城ですか」
「そうだ」
 周りの者達に述べる。
「わかったか」
「はい、勿論です」
 問われていた将官がまず答える。太子はその言葉を聞いてもわかっているとは思えなかったがそれでも黙って聞くことにした。その心を隠して。
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