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第二十三部第三章 長城その十九
「ここが一番合理化が可能ですか」
「はい、そこです」
 八条もそこを言う。実はこうした催しものこそ無駄な出費が一番多いのである。
「催しの質を落とすのではなく」
「そこを合理化していくと」
「例えば食材や設備の調達費ですね」
 話がかなり細かい方向に行く。経補将校時代の八条の顔にいささか戻っていた。
「そこを上手くすれば費用はかなり浮きます」
「はい」
「そして艦艇や航宙機の見世物もですね。無駄なくやっていけば」
「動かす費用も減ると」
「そうなのです。そこが肝心である」
 彼は述べる。
「意外とそういうところを軍全体でしていくとコストが浮くのですよ」
「はあ」
「装飾はそのままで。実はああした看板はあまりお金がかからないので」
 実際に表では費用は思ったよりかからないのが連合軍の催しである。むしろ食材や機材の調達費に兵器の運用費にかなりの費用をかけてしまっているのだ。ここが問題なのである。
「裏方でですね」
「わかりました。しかし」
 赤いネクタイの男は少しぼやいたような顔を見せてきた。
「何か」
「いえ。かなりせこい話になっていますね」
「ロシア軍とは偉い違いですな」
 やたらと大柄な軍人が言ってきた。彼の階級も大佐である。
「ロシア軍といえばあれです」
「あれというと」
「派手に出して派手にやるのです」
 その大雑把さが実にロシアらしいと言えた。ただロシアの面白いところは芸術関連では異様なまでに繊細であったりするところだ。しかし催しに関しては少なくともあまり繊細にはやらない。
「ですから費用もまた」
「節約はなしですか」
「その通りです」
 いささか胸を張っていた。なおこれはどの軍でもある話だがこうした行事でできた金を懐に入れるということもあったりする。連合軍でもこれは僅かながらある。それでもかつての各国軍に比べれば減っていると言えた。もっとも懐に入る額は僅かではあるが。連合における軍の利権は非常に小さなものなのである。だからこそ今彼等は頭を抱えて費用を浮かそうとしているのである。
「ですがそれだと駄目なのですね」
「残念ながら」
 その大柄な大佐に答える。
「これは日本軍方式で行きますか」
「日本軍はどんな軍隊だったんですか?」 
 流石に皆いぶかりだした。八条のやっていることがあまりにもせせこましくもあったからだ。
「お金がなかったようですが」
「連合軍が潤沢で仕方なく思える程です」
 それに対する八条の言葉はいつも通りだがそれでも信じられる話と信じられない話がある。残念ながら今回は後者にあたるものであった。
「ですから今結構楽観視しています」
「ですか」
「ええ」
 周りの者に答える。
「これでいささか費用はできると思います。そして何とか残りの予算を貰って」
「長城の建設ですか」
「そうです。さて」
 あらためて窓を見る。そこには無限の銀河が拡がっている。八条はその銀河を見て言う。
「サハラとは。出来れば衝突はしたくはないですが」
「はい」
「確かに」
 周りの者もそれに頷く。
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