第六部第一章 星河の海その五
かって城は国に例えられた。これは古代の中国での話だが欧州においてもそうであった。
これ等の地域の城は街そのものであった。城壁で取り囲まれ防御され、兵士がそこを守った。古代には都市国家がありそうした意味でも城は国家そのものであると言えた。
だが火器の発達により城壁が意味をなくしそれはかっての街の歴史を教えるものとなった。それも人類が宇宙へ進出するとまた変わった。
進出は当然ながら星に対して行われる。人は星に住み、そこで生活をする。こうなると星が国となる。
実際に連合でもエウロパでも一つの星系は一つの国家が所有することとしている。領土問題を避ける為である。
こうして星はかっての城と同じ存在となった。従って防衛も為されるようになった。
当然守備兵が駐屯し、軍事衛星が星の周りを飛ぶ。まさに宇宙の城であった。
それを攻めるとなるとかなりの苦労が必要となる。アッディーンがサラーフの首都攻略の際ブラークを撃破したのもその一つであった。
首都だけありその防衛が堅固であったのだが他の惑星も大体において同じである。防衛を施していない惑星はないと言って過言ではない。
その為正規軍ですら苦戦することがままある。これが海賊ならどうか。言うまでもない。
連合での大きな問題となっていた宇宙海賊であるが一つ一つだと比較的小規模な存在であるのは否定できない。星一つを攻められるような組織は滅多にない。
防衛がまだ整っていない辺境の惑星が狙われることはよくあるがそこにも大抵軍が一緒にいるものである。彼等も馬鹿ではない。それ位のことはわかっている。その為星にいると比較的安全なのだ。
スペースコロニーは連合には居住用のものはない。だが資源開発用のものがある。これが狙われる場合が比較的ある。各国軍も連合軍もその警戒を怠らない。
そして商船だがこれが問題であった。星やコロニーが難しいならば比較的容易な存在に向かうのが常である。だが商船の方も用心棒を雇ったり軍に守ってもらう。時として大きな問題になることがあり、常に頭を悩ませる存在ではあったが実害は少ないのであった。これは彼等の数も結局は極めて少数であったこともあるが。国家単位でこうした行為をしない限りそうそう多くはならない。
だが被害はゼロでなくてはならないのだ。一つでもあればそれが問題となる。テロリストの問題と全く同じ問題であった。
だから頭を抱えるのだ。そして彼等は時には怪しげな団体と結託する。そして政治や社会を混乱させようとする。こうして話は複雑になっていたのだ。
連合中央政府の断固たる処置、そして中央軍、中央警察の設立によりそれはかなり減った。だが連合において最大の勢力がまだ存在していた。
それが解放軍であった。解放軍と名前だけはよいがその実態は単なる凶悪犯の集まりである。連合各国、そしてマウリアで罪を犯した者や海賊が集まってできた組織でありその数は一千万に達する。
彼等は連合とマウリアの境に勢力を持っていた。この辺りは複雑な地形であり攻めるに難しい。そして通商の要地である為に見入りもある。噂によると独自の資源発掘も行っているという。闇商人との関係もあり無視できない存在であった。
彼等をどうするかは連合中央政府にとって厄介な問題であった。今までは取り除くことが困難でありまさに喉元に突き刺さった棘であった。それが連合とマウリアの交易に重大な影響を及ぼしていることは言うまでもなかった。
彼等は解放軍を避ける為ハサンを仲介するルートをとることが多かった。これがハサンにとっては莫大な利益のもとでもあった。
「ハサンが彼等の黒幕だったら面白いな」
不意にこうしたことが言われることもあるが実際には有り得ない話である。ハサンはそれ以外にも確かな収入源があり連合とマウリアを敵に回すようなことはしない。ハサンとて馬鹿ではないのだ。
だがこのハサンの首都ブルジルトのあるホテルに今何人かの外国人達が来ていた。交易の盛んなこの国では特に珍しくもないことなのでこれ自体は驚くことではない。問題は彼等が何者なのか、である。
見ればマウリアの服を着た者達とスーツ姿の者達二つの種類の者達に分かれている。彼等はホテルの最上階にあるロイヤルスイートに入って行った。
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