第二十三部第二章 権益その八
「そうだろ?」
「まあな」
流石にこれはここにいる全ての者が知っていた。似非も非常に多いがマスコミは一応は知識人である。だからこれは知っていたのである。知らないとかえっておかしい。もっともこの業界には知性も教養も品性もないゴロツキの様な輩も非常に多いのであるが。
「連合だってそうだろ」
ホッブスのその言葉を出した男が言った。
「結局常にそれじゃないか」
「そう言われればそうか」
別の者がそれに頷いた。
「何かっていうと競争競争だからな」
「そういうことだ」
「商売もスポーツも学業も何でもな」
「ものを書くのだってそうだな」
ジャーナリストならではの言葉も出た。
「何処のどいつよりいい文章を書くか、より売れるかどうか」
「そうだろ。まあ法律やルールの中で一応やってるがな」
中にはその法律やルールを全く理解できない者もいる。こうした愚者は自分の主観によってのみ動く。それでいずれは破滅するのであるが。自分の主観だけで何かをできる世界なぞない。そう考える者は愚かであるだけでなく狂人である。それで誰かに何を言っても信頼もされない。恐ろしいことにそうした輩というのは自分が信頼を完全に失っても気付かないか平気なのである。だからこそ破滅するのであるが。
「結局は同じだな」
「連合もサハラもか」
「そうなるな」
話がやや哲学的なものになってきていた。
「そう考えるとわかりやすいか?」
「いや」
その言葉には首を横に振られる。
「それでもあれだぞ」
中の一人が言ってきた。
「連合とサハラじゃ考え方が全然違うだろうが」
「そうか」
「そうだ。向こうは完全にイスラム世界だからな」
これが大きかった。連合は様々な宗教や思想が存在しているがサハラはイスラムしかないのである。ここが非常に重要であるのだ。
「そこだ」
「そこか」
皆その言葉に目を動かした。考えるものがそこには確かにあった。
「イスラムは戦争を肯定しているしな」
所謂ジハードである。異教徒との戦争がその意味であるが実に広範囲に使われる言葉である。各国の間での戦争でもつ買われてきている。
「やはり全然違うぞ」
「成程な」
「だからだ。今だってな」
そのうえで語られる。
「それに基づいて動くだろう」
「三国共にか」
「ああ。ただしだ」
ここで哲学から軍事に話が戻る。
「ハサンは守りに徹しようとしているな」
「ああ、そうだな」
これはある程度の軍事知識があればすぐにわかることであった。だから彼等もわかった。
「国境に軍を集めて防衛ラインを築いてな」
「それだけだからな」
彼等は話し合う。
「それで後の二国は」
オムダーマンとティムールのことである。これは誰もがわかっている。
「攻めようとしているな」
「ああ」
皆その言葉に頷く。
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