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第二十三部第一章 風雲を前にしてその十九
「大海原を乗り越えるのだ」
「そして力を手に入れると」
「その通りだ」
 彼はその言葉に応える。
「それでわかったな」
「賭けになりますな」
「賭けとは?」
「いえ、かなりの大事業になりますしそれに」
 男はカミュに対して自身の考えを述べてきた。
「その先には何があるのかもまだわかってはいませんし」
「確かにな」
 カミュも賭けであるというのは認めたようであった。それに応える。
「リスクはかなり大きい」
「はい」
「何があるかわからない。それにそこに辿り着くまでも大変だ」
「それでもやるというのですね」
「まず動かなければならない」
 彼はそれを言う。
「それに事前に調査彗星を出す。それをもとに動く」
「成程」
「連合と同じようにな。それだとリスクは減る」
「そうですね」
 その通りだった。それには頷けた。
「そうして進めていくつもりだ」
「どちらにしろ進出しかありませんか」
「今のエウロパではな」
 カミュはそれに対しても述べてきた。
「限界だろうな」
「やはりそうですか」
「だからだ。進出するしかないのだ。そうした意味でサハラへの進出は必然だったが」
 この場合そこにいるサハラの者達のことは考えてはいない。考えるつもりもなかった。進出とは時としてそうなってしまう。侵略にもなり得るものなのである。侵略の是非は置いてだ。
「それが失敗したしな」
「そちらもまた考慮すべきではないでしょうか」
 男は言ってきた。
「再び」
「ふむ」
 カミュはその言葉に目を光らせた。
「再びか」
「はい。それもいいかと思うのですが」
「それは今さっき私も言ったな」
「そうです。ですが今回は」
 彼は述べる。
「また違う方法で」
「武力を使わずにか?」
「いえ」
 それは否定した。やはり武力は必要なのだという。
「無論それは使います」
「以前は外交や謀略も使っていた」
 カミュもそれに携わってきた。エウロパのサハラ侵攻は彼等の対立や抗争を利用した実に狡猾なものであった。その為サハラは侵食されていたのである。
「今回は何を使うのか」
「連合を使ってはどうでしょうか」
「連合を!?」
「ええ」
 ここで男は不敵に笑ってこう言ってきた。
「中国の言葉ですが」
「何だ?」
「夷を以って夷を制すです」
 彼は言う。
「そういうことです」
「ふむ」
 カミュにもその言葉の意味はわかった。それだからこそ応えることができた。
「連合をか」
「当然それには火種が必要ですが」
「作るのは困難だな」
 それは最初に打ち消した。とても無理だと判断するしかなかった。
「今の連合、サハラにも工作員を送り込めない状況では」
 サハラ総督府を失いバチカンも連合への移転が決定している。結果としてエウロパの情報収集能力、工作能力はかなり落ちているのである。それは外相であるカミュが最もよくわかっていた。
「ですか」
「しかしアイディアとしてはいいな」
 カミュはそれは認めた。
「機会があればか」
「はい。それでは」
「狙っていくべきだな。それでは」
「どうされますか?」
「それも頭の中に入れておこう」
 彼は決して清廉潔白な人物ではない。むしろあらゆる手段を用いて目的を果たすタイプである。だからこそ今回も同じことをするのであった。
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