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第二十三部第一章 風雲を前にしてその九
「それだけでもかなりのものだったが」
「ええ」
 話はそれで終わらなかった。彼等はさらに話を続ける。
「その後だな。問題は」
「その後ですか」
「そうだ、その名声を利用して表に出てきている」
「それは確かに」
 皆その言葉に気付く。
「かなりですね、それも」
「そうだな。上手く使っている」
 シャイターンもそこをさらに指摘してきた。
「利用できるものならば利用するに越したことはない」
 彼はそう言ってのけた。これは彼自身の考えでもある。
「だが彼はその中でもかなり上手くやっている」
「かなりですか」
「かなりだ」
 それをそこにいる全ての者に述べる。
「演説も見事だ」
 そこも指摘してきた。
「人の心を掴むのも上手い。資金もあったな」
「はい」
 これにはウーアンザが答えた。
「何しろ名門の出ですので」
「スタンフォード家はイギリスではかなりの資産家だったな」
「はい、地球にあった頃からかなりの」
「それもある。ないものはない」
「後はスタッフだけですが」
 ハルシークが言及してきた。
「それはどうなっているのでしょうか」
「おそらくは今集めているところだ」
 シャイターンはそう返した。
「今な。だがそれはまだ水面下の状態だ」
「本格的には動いてはいないと」
「動くのもこれからだ」
 徐々に読みを述べていく。その読みはやはり冷徹であるが鋭い。
「彼等が動くのはな」
「そうなりますか」
「では彼が動いてからのエウロパは」
「それが問題となる」
 今それをはっきりと述べた。
「どう動くのかがな」
「ふうむ」
 弟達も他の者達もそれを聞いてまたしても大きく嘆息した。そんな先の話であるがあえて考えを巡らすシャイターンの先見に唸らずにはいられなかったからだ。
「それではですね」
 アブーが言ってきた。
「統一されてからも我々は戦乱から逃れられないのですか」
「それがアッラーの思し召しならばな」
 シャイターンは答えた。
「そうなる」
「その場合ですが」
 次に口を開いたのはハルシークであった。彼もまた今将来のことにその目を向けてきていた。
「エウロパならば撃退は可能かと」
「うむ」
 シャイターンはその言葉に頷く。
「彼等ならばな。大丈夫だろう」
「はい」
「ただしだ」
 しかしここで付け加えることも忘れてはいない。
「油断をしてはならない」
「油断ですか」
「それこそが最大の敵なのだ」
 彼は今それをはっきりと述べる。
「それにより敗れ去った者は多い。それは肝に命じておくことだ」
「はい、それでは」
「うむ、それではな」
 話が収まった。シャイターンはそれを見計らって言葉を出してきた。
「これで終わろう。今回は御苦労だった」
「はっ」
 会議は終わった。シャイターンはそれを受けて宮殿の奥深くへと入っていく。そして自身の仕事へと取り掛かるのであった。彼もまた多くのやるべきことを持っていたのであった。
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