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第二十二部第五章 舞台は整いその二十二
「体質です」
「そういえばあの方は痩せておられますね」
 金はすらりとした体型で知られている。あれだけ甘いものばかり食べて有り得ない程痩せているのである。
「そうですね」
 それに八条も頷く。
「やはり体質でしょうか」
「ええ」
「私だったらあれだけ甘いものを食べれば」
「おかしくなりますか?」
「はい、身体も」
 彼は答えた。
「その前に舌が」
「甘みでですか」
「おかしくならない方が不思議でしょう」
 そう述べる。
「少なくとも私はそうなりますよ」
「ところが内相はかなり味覚も鋭いのですよ」
「余計にわかりませんね」
 思わず唸ってしまっていた。心から不思議といった感じであった。
「どうしてなのか」
「まあ本当に人それぞれですから」
 またその言葉を言う。どうもそれに頼っているのではと思える程である。
「甘いものに関しては」
「韓国人にしては、とは思いますね。あと」
「韓国人にしてはですか」
「はい」
 シャリアピンはここであえて金が韓国人であるということを指摘してきた。
「韓国料理と言えば」
「辛いと」
「そうです、ですから何か違和感もあります」
 そうも述べた。
「そこはどうなのでしょうか」
「言われてみればそうですね」
 八条もそれに応えてきた。
「確かに韓国料理と言えばそれです」
「そうですよね」
 辛い。韓国料理に対して連合の者がイメージするのはまずそれであった。それは誰もが同じである。
「内相は韓国料理も召し上がられますよ」
「はあ」
「ですから別に」
「特に甘いものだけではないと」
「そう思います」
 八条はそう己の考えを述べた。
「別に味覚に何かあるというわけではなく」
「それを好んでいるだけであると」
「私はそう思います」
「そうなるのですか」
 そこまで聞いてあらためてシャリアピンは何か釈然としないものを感じた。
「どうにも」
「やはり何か納得できませんか」
「私は食べたらすぐ身体に出てしまう体質ですからね」
 ここで苦笑いを見せてきた。
「それだけに食べても普通に変わらないのはどうにも」
「不公平だと」
「そう思います。まあ言っても仕方ないことですが」
「これは男だから笑い話で済むのですがね」
「ところがレディーですと」
 そうはいかない。男と女では何かと違ってくる。特にこうした太る太らないでは男では笑い話になっても女ではそうはいかないものなのである。
「まだ男でよかったですかね」
「ですね。オサリバン女史の前でそれを言えば」
「ことです」
「そういうことでしょうね。それでですね」
 八条はここで話を戻してきた。
「はい」
「サハラとのことですが」
「長官はサハラと軍事衝突の危険性も考えておられますか」
「皆無ではないですね」
 八条はその問いに落ち着いた声で返した。
「可能性はやはりあります」
「そうですか」
「それだからこそですね」
 彼は述べた。
「備えはしておいた方がいい。いや、しておかなくてはならない」
「ですか」
「ええ、さもなければ取り返しのつかないことになります」
 語るその目が光っていた。
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