第二十二部第五章 舞台は整いその十二
「当然作る側も馬鹿ではない。豆腐も同じく作っておる」
「あくまでそのうちの一つということじゃな」
マウムはそれを聞いて言う。
「そういうことじゃ。これだけを作っているわけではない」
「そういうものか」
「結局はたかが湯葉じゃ」
ポートの言葉は残念そうでもあり達観を感じられるものでもあった。妙なニュアンスの言葉であった。
「そういうものじゃ」
「ううむ」
マウムは彼のその言葉を聞いて考え込んだ。
「されど湯葉じゃがな」
「そうでもある」
ポートはそれも認めた。
「たかが、されど」
「そこが難しい」
カレーラスはそこを指摘する。
「たかがのものでありながらされどでもある。だがそこで」
「どうにかするのが」
「経営者というわけじゃな」
ポートとマウムはそう続けた。
「やはりわかっておるな」
カレーラスはその言葉を聞いて面白そうに笑った。
「流石じゃな」
「褒め言葉はよせ」
「今更そんなことを言い合う仲でもあるまい」
「ははは、確かに」
二人にそう返されて顔を崩して笑った。三人の付き合いはもう半世紀を越えている。何もかもがよくわかった仲だ。そんなことを言うまでもないのである。
「まあこれはこれで使い様じゃ」
ポートはまた湯葉に言及してきた。
「どうしようもないものでもないしな」
「そういうことか」
「結局はそうなる」
ポートの言葉はやはり何処か達観したような響きがあった。
「サハラも同じになるな」
マウムは和菓子を食べながら話をそこに戻してきた。
「連合にとってはあそこの権益も・・・・・・むっ」
食べながらその和菓子に気付いた。
「これは」
「そう、それもじゃ」
ポートはマウムが気付いたのを見て得意げに笑ってきた。
「豆腐料理じゃ」
「ううむ」
マウムはそれを聞いてあらためて唸った。感嘆の唸りである。
「まさかとは思ったぞ」
「意外じゃったか?」
「いや、これは」
彼はそのまま感嘆の唸りを続ける。
「ここまでとはな」
「大豆はのう、使い道が多くてな」
「湯葉だけではないのか」
「無論それもある」
ポートは言う。
「じゃがこうした使い方もあるのじゃ」
「そうじゃったのか」
「美味いじゃろう」
ポートはあらためてマウムだけでなくカレーラスにも問うた。
「この菓子は」
「確かにな」
まずはマウムが頷いた。
「これは意外な伏兵じゃったが中々」
「あるじゃろうが」
ポートはさらに述べる。
「大豆からできたハンバーグとかが」
「あれじゃな」
「そういえばあったのう」
二人はその言葉に応える。
「あれと同じじゃよ、結局はな」
「しかしじゃ」
ここでマウムは言った。
「これ程使い道のある食べ物もないな」
「うむ」
カレーラスもそれに同意して頷く。
「そうじゃな。しかも美味いし栄養もある」
「じゃから豆腐はよいのじゃ」
ポートはさらに言う。
「料理人に言わせれば工夫しがいのあるものらしい」
「経営と同じじゃな」
マウムはそこまで聞いて笑ってこう述べた。
「そういうところは」
「ほう、そう例えてきたか」
カレーラスはその言葉を聞いて笑みを浮かべてきた。
「いい例えじゃと思うが」
「まあな」
「では我等も一工夫じゃな」
ポートは述べる。
「ここは少し」
「いやいや、少しでは面白くはない」
カレーラスが言ってきた。
「ここは念入りにな」
「そうか。では三国の政府だけでなく」
「あちこちに話をしていくべきじゃな」
カレーラスがポートに話しているのは当然ながらサハラにおける話のことである。財界の長老としての話であった。
「それでは」
「そうして周到に根回しして」
「話を進めていくとしよう」
三人はそれぞれ述べた。
「この菓子みたいにな」
「ははは、本当に気に入ったのじゃな」
ポートはマウムの最後の言葉にまた笑った。彼等は豆腐料理を楽しみながら今後のことを練っていたのであった。
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