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第二十二部第三章 兵器と作戦その四
「誰もが同じだ」
「同じですか」
「アッラーは言い給うた」
 アッラーの名を出したのはあえてその言葉の根拠を強く思わせる催眠的な効果があるからであろうか。サハラではアッラー、すなわちイスラムは絶対的な存在であるから。この前提がなければイスラムではない。イスラムとは『神に絶対的に帰依する』という意味であるからだ。すなわち絶対という定義の肯定からイスラムははじまるのである。
「人はアッラーの下に皆平等であるとな」
「はい」
 無論これはアブーも知っている。知らない筈がなかった。
「そうした意味で人は皆同じだと」
「向き不向きがありそれに関する能力の差があるとしてもだ」
 それでも同じ人間だというのである。この考えはまさにイスラムであった。
「だからだ」
 そこまで言ってからまた述べた。
「サハラの者も連合の者も同じなのだ」
「信じている神は違えど」
「持っているものは同じ。ならば」
「決して彼等が戦争を好まないわけではないということなのですね」
「そうだ。彼等も必要とあらば戦う」
 シャイターンははっきりと言い切った。
「守る為の場合もあれば」
「己の利益の為に」
「それが人の本質だからな。人は利益の為に動く」
 シビアで辛辣な視点だが確かにそうであった。シャイターンの見方は正しいと言えた。
「特にこうした政治に関してはな。良心もこの場合は違う」
「政治家にとって良心とは」
「どれだけその所属する国家、若しくは勢力に貢献するように意識するということだ」
 それこそが政治家としての良心であった。他のものは必要ないのである。そうした世界なのである。余計な道議などはかえって邪魔になる場合も多々ある。そうした世界である。
「わかるな」
「はい」
 アブーはその言葉にも頷いた。
「我々と同じだと考えるといい」
「それでは勢力が大きいだけに」
「だからこそ彼等は危険なのだ」
 シャイターンの連合に対する危惧は変わらない。
「何かしてくればそれだけで」
「大きな脅威になる」
「だからだ」
 そしてまた言う。
「その危機を乗り切り生き残る為には」
「連合だけは何があっても敵に回さないと」
「そしてことが起こればすぐに収めたい」
 こうの述べた。
「長期戦になればそれだけ厄介なことになるからな」
「ええ」
 軍人であるアブーにはこれはよくわかった。むしろ専門分野である。
「しかし」
 そのうえで述べる。
「ああした敵とは戦いたくはないですね」
「二十倍の差はあまりにも大きい」
「そうですね。ですが」
「ですが?」
 シャイターンは弟の言葉に目を向けてきた。
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