第二十二部第二章 のどかな王様その七
「何の雑誌だったかな、それって」
王といっても全てのことを知っているわけではない。ましてや週刊誌といったものを細かく知っている筈もないのだ。むしろ週刊誌を書く記者の方が王のことをよく知っている程である。
「プロレス雑誌ですが」
「プロレス雑誌かね」
スタッフの一人の言葉に顔を向けてきた。
「はい、派手な記事で人気の」
そのスタッフは述べる。
「ですがそんな王室関係の記事が載るような雑誌ではありません。あくまでプロレスファンの為の雑誌ですが」
「そうなのか。プロレス雑誌に」
「載っていたのですか!?王室のことが」
「ええ」
王妃はスタッフ達にも答えた。
「宮内省のスタッフは語ったとして。嘘ですよね」
「嘘も何も」
スタッフ達は述べる。
「そんなことは前例もありませんし」
「三ヵ月後に陛下御夫妻が訪日されるだけですが」
「ですよね」
「はい」
スタッフ達は王妃に頷く。
「そんなことはありません」
「どうしてそんな話がプロレス雑誌等に」
「何でもコラムに載っていたそうで」
「コラムにですか」
「そうです」
王妃は気品があるが何か狐につままれたような顔で応えた。
「書いてあったそうなのです。書いていたコラムニストは確か」
そしてそのコラムニストの名を述べる。
「シャバキといいました」
「シャバキですか」
それを聞いた宮内省の面々の顔が急に呆れたものになっていく。
「はい、それが何か」
「王妃様。そのシャバキという者ですが」
侍従長が彼女に対して述べる。
「コラムニストではありません」
「そうなのですか!?」
「言うならば狂人です」
彼ははっきりと言った。
「頭がおかしいですから。御気に召されずに」
「頭がですか」
「はい」
侍従長は真顔で答える。
「誰がどう見ても。ですから気になされぬよう」
「はあ」
王妃はそれを言われてキョトンとした顔になっていた。
「どういった者なんだね、そのシャバキというのは」
王もそれを問うてきた。彼もそのシャバキという人物が気になったのだ。
「自称ですが」
「うん」
侍従長が王に語る。
「予言者らしいです」
「予言者!?」
「そうです。例えばですぞ」
「例えばだね、うん」
王も王妃も彼の言葉に耳を傾けていた。そして話をしかと聞く。
「今陛下が紅茶を飲まれています」
アーモンドを入れたクッキーをおやつに紅茶を飲んでいる。ロイヤルミルクティーである。
「シャバキはそれを一目見るとあることを言い出すのです」
「あることとは」
「人類滅亡をです」
「!?」
王はそれを聞いてまた首を傾げさせた。
「ちょっと待ってくれないか」
そして狸に化かされたみたいな顔をして話してくれた侍従長に対して問い直した。
「僕がロイヤルミルクティーを飲んだだけでかい」
「そうなのです」
彼は言う。
「そこから話が飛躍してそうなっていくのです」
「訳がわからないのだけれど」
「それがシャバキという男なのです」
「ううん」
それを言われてもやはり訳がわからなかった。
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