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第二十二部第一章 戦雲の歴史その六
「そのうえ慣れております」
「戦争を知っている」
「そうです」
「我々はエウロパとの戦争を経験しただけだが」
「彼等は千年の経験があります」
 これが大きいのだ。
「何十世代にも渡って」
「それを考えますと強敵になります」
「戦うべきではないか」
「数と装備では我々の方が圧倒的なのは事実です」
 これは動かしようのない事実であった。連合は四兆。サハラ全土でも二千億しかいないのだ。二十倍の差は歴然としたものであった。
「有事には国境で衝突しても数で防げます」
「それは彼等が攻めてきた場合だな」
「その可能性は殆ど、いえ皆無であると思いますが」
「彼等が相当愚かか、或いは我々が相当愚かな場合にか」
 まず有り得ない話ではあった。国政を預かる人間は流石に極端な無能ではそもそもそこまで辿り着けないからだ。
「国力差も人口差も何もかもが歴然としています。これで攻め込むのは相当な条件が揃ってからです」
「ではそれはないな」
「一応の備えは必要でしょうが」
「では今ハサンとの境になっている場所には防衛ラインを敷いておくか」
「念を入れてそれがよいかと」
「わかった」
 今ここで一つの防衛計画が決定した。後に本格的な審議に入ることになるのであった。
「ではそうしておく」
「はい」
「そして我々が彼等の中に攻め込む場合は」
「深刻な衝突があった場合か若しくはサハラで何か我々にとって利益と成り得るものが発見された場合でしょう」
「あると思うか」
「レアメタルでもあれば」
「ふむ」
 キロモトはその言葉を聞いて考える目になった。もうステーキは食べ終えてしまっていた。
「レアメタルか」
「さしあたって連合で採れないものはありませんが」
「だが少ないものや未発見のものはあるだろうな」
「それがサハラで見つかれば」
「やはり欲しいな」
 彼は述べた。
「その為には出来るだけ平和的にいきたいが」
「それで話が収まらなければ」
「やはり武力も考慮しなければならないだろう」
 政治家としての判断であった。連合の中と外では対処も違ってくる。
 内部では話し合いや調停で充分なのだ。あくまで内政だからである。だがサハラが相手となるとそれは外交となる。外交は時として武力も考慮するものである。エウロパとの戦争はその一例である。今まで連合が戦争をしてこなかったのはサハラがほぼ化外の土地でありマウリアとは平穏であったからだ。エウロパとは確かに対立があったが要塞を挟み合ってのことでお互い焦眉でなければ兵を動かさなかっただけなのだ。誰も連合のような巨大な勢力に進んで武力行使を仕掛けたりはしない。彼等の平和は彼等が巨大勢力であることも大きかったのだ。
「必要ならばな」
「必要とあらばですか」
「そうだ。いざとなれば」
「ですが閣下」 
 カバリエはここで述べた。
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