第二十一部第五章 舞台の終わりその十八
「何でしょうか」
「これからサハラはどうなると思われますか」
「サハラですか」
「そうです。今のところは均衡を保っていますな」
ハサンとオムダーマン、ティムールの間で。今のところサハラは平穏なのである。
「はい」
「それは続くと思われますか?」
「いえ、それはないかと」
彼はそれを否定した。
「近いうちに崩れます」
「崩れますか」
「既に三国は軍備を整えております」
「ほう」
知ってはいるがまたしても知らないふりをした。マウリアの情報収集能力を試しているのだ。無論相手もそれはもう読んで話をしている。
「衝突は近いでしょう」
「それによりどうなるかですな」
「天に二日なし」
彼は言った。
「それから言えば」
「残るは一国でしかならない」
「しかしです」
彼はここでふと言葉を変えた。
「マウリアは何度も集合離散を繰り返してきた世界です」
「ですな」
「こういった状況になったことも何度か。ですがその度に」
「分裂して元の木阿弥となってしまっていた」
それがサハラの歴史であった。
「そういうことです。ですから今回も」
「可能性はあると」
「否定は出来ないかと」
「成程。それに対する介入は?」
「我々は考えてはいません」
彼は述べた。マウリアは伝統的にサハラに対しては不干渉主義なのである。これは連合も同じだ。従って問題はエウロパであるが今のエウロパにそんな力がないのは誰もがわかっていた。
「そうですか」
「どうなるかはあくまで彼等次第です」
「成程、わかりました」
ラフネールはそれを聞いて頷いた。
「サハラも大きく動こうとしておりますな」
「はい、これからで彼等の運命は決します」
「統一か分裂か」
「全てはこれからです」
こう言ってみせる。
「わかりました。では我々は一刻も早く復興を果たします」
「期待しております」
「連合の同盟国とは思えないお言葉ですが」
「同盟国だからの言葉です」
またこういったことを述べた。
「同盟国だからとは?」
「連合は極めて雑多な勢力です」
「ええ」
これは一見してわかることであった。連合の中には様々なものが存在している。それが連合であるのだ。
「それが一つになる為には」
「敵が必要と」
「貴方達にもまた敵が必要でしょう」
「我々もまた」
「そうです。国を纏める為には」
「我々は統一された勢力としては一番小さなものです」
エウロパは一千億しかいない。対する連合は四兆だ。マウリアも二千億以上いる。この場合サハラは除外している。統一されてはいないからだ。
「ですが中では色々ありまして」
「はい」
「纏まる為に苦労はしています」
「だからこそですか」
「否定はしません」
彼は述べた。
「連合はよりそうだということも想像がつきます」
「秩序の為には対立も必要なのです」
「成程」
「ですが出来ることなら今回の様な戦争は」
「起こってしまったことは収めるしかありませんが」
「まあ確かに。止むを得ない場合もあります」
それが今回の戦争だった。一千年の対立が工作員問題で一気に危険水準に達したのである。
「ですが今後は」
「起こらないにこしたことはありませんか」
「マウリアとしてはそうです」
「わかりました。それで」
「何でしょうか」
彼に対して問うた。
「そちらはサハラ各国とはどうなのでしょうか」
「相変わらず不干渉主義です。貿易や経済交流だけです」
「左様ですか」
「はい、それだけです」
「ふむ」
今度は頷いてみせた。
「我々としては平和を望んでおりますし」
「そういうことですか」
「平和だからこそ利益をあげられるのです」
経済活動によりである。戦争になればその活動が著しく制限される。そうした事態はそもそもが利益を求める立場としては問題なのである。
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