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第二十一部第五章 舞台の終わりその八
「むしろウルトラマンのシリーズの方が」
「確かに」
 若い男もそれには頷くものがあった。
「あのシリーズの悪役はあまりにも」
「異星人ではかなり悪質なものがいたな」
 ハンニバルも話に入ってきた。
「それも二十世紀のシリーズにな」
「最初のあれですよね」
「あれは酷かった」
 どうやらハンニバルは特撮ものが好きらしい。結構詳しいようだ。
「何をどうしたらあそこまでなるのか」
「モデルがいるらしいですね、それぞれ」
「そうなのか」
「あの光の巨人になってからのシリーズ四作目の前半の悪役ですが」
「確かヤプールとかいったな」 
 悪名高き悪役である。極めて卑劣で陰険なことで知られている。
「はい、それです。あれのモデルはナチスやソ連のようです」
「あの頃だったか、ソ連があったのは」
「ナチスもまた二十世紀です」
「だからだな。あそこまで悪質だったのは」
「はい」
「後ウルトラマンのメフィラス星人のモデルはイギリスだったそうです」
「それはよくわかる」
 ハンニバルはそれに頷いた。
「如何にもという感じだからな」
「そうですね。一軒紳士的ですが狡猾で卑劣です」
「実にあの国らしい」
 そもそも連合はエウロパ自体をそう見ているのであるが。
「全く。昔から変わっていません」
「バチカンは変わったでしょうか」
「内部で恐ろしいまでの権力闘争は聞くな」
 これは変わってはいない。
「あれは変わらないか」
「手出しをしたならば」
「火傷では済まないだろうな」
「騒動の種でもありますが」
「だがエウロパに置いておくよりはずっといい」
 ハンニバルは述べた。
「このまま放置しておいてはまた利用される」
「ですね」
「それは間違いないです」
「エウロパのことです。何をしてくるかわかったものではありません」
 スタッフ達は口々に述べる。彼等はエウロパを警戒していた。
「ここはそれを防ぐ為にも」
「そういう話ではじまったものですから」
「そういうことだ」
 ハンニバルは彼等の言葉を纏めた。
「それに権威も奪えるしな」
「バチカンという権威を」
「これで長い間欧州を欧州たらしめていた権威が我々のものとなる」
 バチカンはそれだけのものがある。キリスト教は欧州の心だった。その心の最大の拠点であったからだ。その権威を奪うということはやはり非常に大きい。
「違うか」
「確かに」
「それもあります」
「そうしたことも考えるとやはり今回のことは大きいな」
「ええ」
「エウロパがなくしたものは非常に大きいです」
「これで当分立ち直れなくなる」
 ハンニバルの声が鋭くなった。
「いや、かなりの間か」
「かなりですか」
「それか変質するかもな」
「何か悪影響を与えるのですね」
「そうなればいいのだ」
 今度は冷淡な声になった。
「何しろエウロパは敵なのだからな」
「ううむ」
「ではそれ以外の何だというのだ?」
 唸った中年のスタッフに逆に問うた。
「それそのものではないか。千年の間」
「言われてみれば」
「敵の不幸は我々にとっては幸福だ。それが政治だ」
「それがですか」
「幸福を掴み取る為に敵を不幸にするものだ。政治家はその幸福を市民に提供しなければならない。それが仕事なのだ」
 極論すればそうであった。
「若しくは幸福を作り出すか実現する」
「それが出来ない政治家は失脚する。実に簡単だな」
「全くです」
「それを考えると政治家の仕事というのは単純なのですね」
「単純だな、本当に」
 ハンニバルもその言葉には納得した。
「それしかないのだからな、原理は」
「ええ」
「しかし実際にやるのは難しい」
 だがここでこう言った。
「何かとな」
「今回は何処に置くかで内務省と開拓省の間で議論がありましたし」
「大国がまた動いていたしな。これはいつものことだが」
「前から思っていたことなのですが」
「何だ?」
 若いスタッフに顔を向けた。
「連合は一つの世界ではないのですね」
「何を今更」
 ハンニバルはその言葉に悪戯っぽく笑った。
「政治の世界でも。中央政府と各国の政府があります」
「それだけではないな」
「はい」
 そこにもまだあるのだ。
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