第二十一部第三章 カードは切られその十三
「ブラジルだ。そして同時に中央政府とも話を調整したい」
「中央政府ともですな」
「当然だと思うが」
シャイエックに顔を向けて問う。
「最後の判断は彼等がするのだからな」
「例えどのような形であれ」
「そうだ。これの管轄は内務省になる。開拓省もいささか関わるかもな」
「というと金内相ですか」
「優れた人物と言っていいがな」
「かなり厳格で潔癖でもありますが」
これに関してもやはり有名であった。
「むしろその方がいい。今回に関してはな」
「ブラジルからの買収工作にも応じないと」
「本人だけでなく内務省の内部もな。今あそこは中央政府で最も清潔な省庁となっている」
「国防省よりも」
「そうだ。まあ国防省の関連の利権なぞ所詮微々たるものだがな」
「ですね、それは」
軍需産業は実入りが少ないのである。莫大な設備への投資、それ以上の技術への研究費用、そして失敗作へのロス等を考えると途方もない資金が必要になる。だが受注は決められたものしかない。連合では軍需産業はあまり発達していない。それでも技術的にはエウロパよりも上にあるが。イスラエルもこちらにはあまり力を入れてはいない。理由は簡単で実入りがないからである。
「内務省は少し違うが」
「あの内相が目を光らせているので腐敗や汚職はないようです」
「政治に支障が出るレベルでなければいいと思うのだがな」
「何分不正を極めて嫌う方なので。そのようになっています」
「ふむ」
「当然ながら我々の資金援助も断っております。政治家は支持があればそんなものは必要ないと仰って」
「選挙資金もか」
それについても問うた。
「はい。そのせいか私生活はかなり質素ですが」
「その質素なのを美徳と考えているのだな」
「そうかと」
「韓国もまたそうした裏金が結構盛んだがな」
無論イスラエルもそうである。連合ではどの国も大なり小なり裏金を使う。伊藤にしろ買収工作をすることがある。彼女もまた目的の為とあらばそういうことをするのである。だがこれが政治というものであり伊藤が悪というのではない。政治は結果の世界である。結果を出す為なのである。
「まあ例外は何処にもいるが」
「類稀な例外ですな」
「だが今その例外があそこにいるのは僥倖だ」
サッバティーニは述べた。
「中央政府内務省に連絡を取る」
そして次にこう言った。
「それでいいな」
「わかりました」
「担当者には甘党を送れ」
「甘党をですか」
「そして糖尿病にかかっていない者をな」
「人を選びますね」
「あの内相はまた別だ」
顔が辟易したものになっていた。
「あれだけ甘いものばかり食べているとはな」
「それであのスタイルです」
「そちらでも例外なのだな」
「そうですね。私にはあそこまでの甘いものは」
「質も量も無理か」
「ええ。普通はそうだと思いますが」
「このチョコレートにしろだ」
テーブルの上のチョコレートをつまみながら述べる。
「中に入れている他の菓子や果物だけではなくそこからも蜜や砂糖をかけて食べるのだ」
「口の中が甘ったるくなって後が大変でしょうな」
聞いているだけで甘いものが嫌いならばうんざりしてくる話である。
「だがそれでも食べる」
「はあ」
「だからだ。やはり甘いものに強くなければな」
「能力の他にも」
「そちらの人選を急いでくれ、いいな」
「わかりました。といっても選ぶのに苦労はしそうにありません」
「そうだろうな」
能力にこの嗜好である。自然と人は限られる。
「ではすぐに頼む」
「わかりました」
「外相と相談してな。こういう時にいないとはな」
外相は今ヒッタイトを歴訪している。何かと忙しいのが外務大臣というものである。
「まあいい。戻ってきてからでも遅くはない」
「では」
「さて、どういったことになるかな」
サッバティーニはあらためて呟いた。
「ブラジルとの話もある。だが話はかなり纏まってきた」
「それは確かに」
「最後の局面だ。後は」
「チェックメイトまでですか」
「それまで気を抜くことはできないぞ。いいな」
「はい」
イスラエルは今度はブラジル、そして中央政府との話の調整に入った。まずはブラジルであった。
「バチカンを諦めろ、か」
ブラジル大統領ロベルトはイスラエル側の提案を聞いてまずはこう述べた。
「簡単に言ってくれるな」
「あちらとしてはカトリックのことなぞどうでもいいということなのでしょう」
報告をした官僚がロベルトに対して言った。
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