第二十一部第三章 カードは切られその三
「続いては後の三国か」
「米中露ですか」
「彼等は日本に比べて厄介かな」
「外交能力というよりはその要求が」
「全く。彼等は満足することを知らないようだな」
「あれだけの資源や権益を持ちながら」
シャイエックはそう不満を述べた。
「満ち足りるというのはあの三国にはない言葉か」
「全く。何時まで経っても変わりませんな」
「だがそこが付け目だ」
「確かに」
サッバティーニの言葉に不敵に笑ってみせた。
「それでは今回も」
「そうだ、とりあえずある程度は満たしているが」
「それは決して彼等の満足いくものではないと」
「何度も言うが彼等は満足するということを知らない」
「はい」
「そこでだ。仕掛ける」
続いてこう言った。
「それ以上何か言うと、ですか」
「もっとも我々が提示した条件は他の国から見ればかなりいいと思うがな」
そう言ってみせた。
「バチカンを放棄しても有り余る程に」
「それでもさらに、というのが。どうにもな」
「彼等は何を要求してくるでしょうか」
「まあ大体予想がつく」
「さらなる通商の便宜等ですか」
「それは飲む」
飲むと言ってみせる。これは意外であった。
「飲むのですか!?」
「まあ聞くのだ」
驚きの声をあげるシャイエックに対して述べる。
「当然それだけではない」
「こちらも見返りを要求すると」
「どうだ?これなら問題はあるまい」
「ユダヤ商人は決して安くはありませんからな」
「それは違うな」
サッバティーニも笑っていた。商人というよりは弁護士か知識人の笑みであるが何処か含むものがある笑いであった。またそれがやけに似合っている。
「ユダヤ商人の品物にないものはない」
「だから安くはないと」
「そうだ。まずは彼等の要求を受け入れる」
「はい」
「それとは別にこちらもな。見返りをだ」
「マウリアへの権益でしょうか」
「それだ」
サッバティーニは言った。
「金融への便宜は日本が言ってきてくれた」
「善意で以って」
「親切だな、日本人は」
真相を知ったうえでの言葉である。
「やはり日本人は心優しい。それに感謝しなくては」
「そして今度は」
「あの三国が友情を示してくれる。我々はその御礼にだ」
「友情ですな」
「そうだ。連合という社会における」
かなり白々しくはあるが建前はそうなる。政治の世界というのは建前が整えばいいというところが確かに存在しているのである。これは事実だ。
「これでマウリアにも入られる」
「二千億の市場が」
「二千億か」
しかしサッバティーニはここで複雑な顔をした。
「彼等は。本当に二千億なのかな」
「まあそれより多いのは間違いないですね」
「今でもそんな国があるとはな」
「何処かの辺境の星でその存在がわからない部族もあるようです」
「部族!?」
これには流石に眉を顰めさせる。イスラエル首相ですらそんな顔をさせるのがマウリアであった。
「はい、部族です」
シャイエックはそれに答えた。
「マウリアには存在します」
「確かに彼等は我々とは全く違う世界だが」
「はい」
「部族というのが。今でも存在するのか」
「私も最初は民族の間違いかと思いましたが違います」
連合では民族という概念である。一民族一国家という概念もまだ生きている。だからアイヌや琉球、満州やネイティブ=アメリカンの国家も存在しているのである。
「間違いなく部族です。しかも未発見の」
「一応地球から来ているのだな」
「それは間違いないのですが。その」
「何時辿り着いたのかがはっきりしないのか」
「森の中で見た、という話がありまして」
そう述べるがかなりあやふやな言葉の調子になっていた。
「まるで未確認生物みたいだな」
「それに近いものがあるかと。人間ですが」
「どうやら私はマウリアを甘く見ていたようだ」
これは本心からの言葉である。シニカルは欠片もなかった。
「そんなものがまだ存在していたとは」
「マウリア映画では普通に何処からともなく人が沸いてきますが」
「人が!?」
「はい、そして皆で踊って歌って」
「ううむ」
サッバティーニはまるで異次元の話を聞いている気分になった。
人気サイトランキング
小説・詩ランキング
+注意+
・特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
・特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)
・作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。
この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。