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第二十一部第二章 狐と狸その十
「高崎総理のイメージからは」
「狸なのよ」
「狸!?」
「そうよ。あの人は狸なのよ」
「つまり化かすということですか」
「私は狐だしね」
 何となく話が童話めいてきていた。だが伊藤はあえてこうした表現を使ってきたのである。例え話をしてわかり易くする為であろうか。
「身内も時として化かさないといけないのよ」
「身内もですか」
「これでわかったわね。少しだけれど」
「一応は」
 だが戸惑いはまだ残っている。
「けれど。本当に意外ですね」
「人なんて実際全てをわかるってのは無理ね」
 またコロッケを切って口に入れた。
「自分自身でも」
「それは何となくわかります」
「そういうものよ。それじゃあ今回の件だけれど」
「はい」
 バチカンの話に戻ってきていた。
「日本は手を引くわよ」
「わかりました。そういえば」
「何かしら」
「国内ではバチカンを招くことに関して積極的な世論は少なかったですね」
「やっぱり信者が少ないせいね」
 日本では昔からクリスチャン自体が少ない。これはこの時代でも変わらない。
「結局はそれですか」
「我が国は昔からクリスチャンが少ないわよね」
「ええ」
 これは二十世紀からである。一パーセントを中々越えないことで有名であった。今も人口比に対してその程度である。その中にカトリックとプロテスタントが存在している。カトリックの数は微々たるものなのである。
「ロシアはロシア正教だし」
「そうでしたね」
「アメリカはまだキリスト教徒が多いけれどあそこは確か」
「プロテスタントが多いですね、伝統的に」
「そうなのよね、アメリカは」
 元々プロテスタント、しかもピューリタンによって建国された国である。その伝統が今も残っているのである。千年経っても。ただアメリカにはカトリックもいればケルトの神々、ネイティブの神々への信仰もある。宗教も多彩なのである。
「ただ、アメリカのカトリックはともかく世論全体ではさして大きな勢力とはなっていません」
「そうみたいね」
「そして中国は」
「言うまでもない、と」
「彼等はただ利権が欲しいだけですので。信仰は乏しいです」
「日本も入れてね。そういうことね」
「はい」
 小柳は頷いた。彼女もコロッケを食べている。
「大国で動向が注視されているのは」
「ブラジルとフィリピンね」
「ええ。その二国です」
 大国で目立つのはこの二国なのだ。
「彼等の宗教人口でカトリックの割合はどれだけだったかしら」
「両方共半数は優に越えています、確か」
「半数以上ね」
「彼等の伝統ですね、これも」
「そうね。そして信仰は」
「力です」 
 一言でこう言い表された。
「世論にもなる。両方共政治家もカトリックである場合が多いから」
「強いですね」
「問題はこの二国ね」
「はい」
 そこに焦点が集まってきているのを感じていた。
「さて、どうなるかしら」
「中央政府としては全体に利益があるようにしたいようですが」
「全体、ね」
 伊藤はそれを聞いて少しシニカルな笑みを浮かべた。
「連合では中々に難しいことだけれど」
「この件に関しては金内相の管轄でした」
「そうね、彼女の」
 伊藤は彼女を知っている。何度か会って話をしたこともある。
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