第二十部第四章 彗星の如くその二十
だが日本軍はそれでもかなり予算が少なかった。装備と設備、そして人件費にその殆どが消え、運営費は微々たるものであった。その結果各部隊では運営に工夫に工夫を重ねる結果になってしまっていたのだ。八条をはじめとした旧日本軍出身者達のやりくりの上手さは定評があるがそれはこうしら苦労があってのこそだとも言われている。
「私もよく言われた」
「足りぬ足りぬは工夫が足りぬと」
「それで訓練はいつもある」
「少しでも訓練が少ないと」
「国民からの愛の鞭が来たな」
「訓練をしないのか、と」
「訓練をするのにも費用がかかる」
これが軍隊である。
「何をするにも費用がかかるからな」
「大変だったのですね」
「特に私はな。経補だったからな」
実際にそれをやりくりする部門だったのだ。
「何かと苦労させられた」
「それから見て今の連合軍はどうですか?」
「正直に言おうか?」
「はい」
木口は応えた。
「是非共」
「では言おう。非常にやり易い」
実に率直な言葉であった。
「こんなに予算があっていいのかと。夢の様な話だった」
「ですが他の制服組の人達はそうではなかったようですが。辛い予算配分だと」
「各国の軍隊は本当に恵まれていたのだと思った」
八条の言葉はやけにしみじみとしたものだった。
「そんなことが言えるのかと」
「日本軍は少数精鋭と言われて連合の中でも強くて格好いい軍隊だと言われていましたが」
少なくとも軍事マニア達からは評価が高かった。軍服も連合の中で最も格好いいと言われていた。その軍服はもうないが。
「内実は悲惨なものだったのですね」
「国力が高いからといって軍事費もあるわけではない」
そうもならないのだ。だからややこしい。
「特に連合はな。一五〇億の軍隊にしろ」
「ええ」
サハラの小国の人口よりも遥かに多い数である。
「総生産に対する軍事費の割合は微々たるものだ」
「まあ有り過ぎるという状況は不幸な証拠ですが」
緊張状態にあるということだからだ。
「今のままでいいのでしょうね、やはり」
「そうだな」
「軍隊の数があまりない方が」
「国家戦略を考えるうえで最低限あればな」
八条もそれは認識している。
「それでいいが」
「少なくとも現状では」
「軍事費が少なくて済むのは国家としては有り難いことだ」
「そうです」
「撤収にかかる費用はまあ膨大なものになっているがな」
「一体どれだけですか?」
「見てみるか?」
そう言葉を返す。
「何か気になりますから」
「そうか、これだけだ」
ここで一枚の書類を木口に手渡した。
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