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第十九部第五章 退場その二十
「他の世界でも。これといった人物がいたならば」
「スカウトして、ですか」
「そうだ。何としてもな」
 そのうえで言う。
「総統になれる人物を見出すのだ。これは改革派だけの問題ではない」
「エウロパの問題でもあると」
「今こそ我々には優れた指導者が必要なのだ」
 そしてまた言った。
「ブラウベルグ以来の」
「ブラウベルグ以来」
「ジュリアス=シーザーでもオクタヴィアヌスでもいい」
 その二人まで出すということに今のエウロパの逼迫した事情が現われていた。今エウロパに必要なのは英雄である、ペーチはシュヴァルツブルグとの話を思い出していた。
「指導者がいれば」
「エウロパは救われる」
「逆の意味も当てはまりますがね」
 カミュの言葉は辛らつなものであった。
「今指導者がいないと」
「そうだ。だからこそ」
「見つけなければなりませんか」
「しかし誰が」
 それが最も厄介な問題であった。指導者、いや英雄とは探して見つかるものでもあまりないからだ。突如として現われる、彗星の様な一面が確かにある。そしてそれは現われると恒星になるのだ。ヒトラーがそうであった。彼は突如として現われドイツを救った。当時のドイツにおいては英雄であったのだ。この時代においても否定される存在であっても。作られた英雄も確かに存在するがだからといって容易に見つかるものではないのである。
「それは」
 カミュにも答えられなかった。
「そこまではわからないか」
「申し訳ありません」
「いや、いい」
 それは責めても仕方のないことであった。
「だが。見つけなければならない」
「はい」
 それは二人もよく認識しだしていた。
「何としてもな」
「では」
「誰かを探してくれ」
 ペーチは言った。
「エウロパを救える存在をな」
「エウロパを」
「いいな」
「果たしているかどうかもわかりませんが」
「いや、いる」
 だがペーチは諦めてはいなかった。
「必ずな。いるのだ」
「その人物を一千億の中から探し出す」
「それこそが我々の仕事だ、いいな」
「これまでになく厄介ですがね」
「それでもな」
 探すしかなかった。それを三人はこの時噛み締めていた。
「ではそちらも頼む」
「わかりました」
 二人は最後に頷いた。
「中々面白そうな仕事ですね」
 カミュはいつもの余裕を見せた。ようやくといった感じであった。
「では頼めるか」
「ええ。ただ」
 カミュはそれを納得したうえでまた述べた。
「それが保守派になるか我々になるかはわかりませんが」
「私の立場でこれを言うのも何だが」
 ペーチもまた一言断ったうえで述べた。
「最低限エウロパが救われればそれでいい」
「左様ですか」
「そうだ。今はそんなことを言っている場合ではない」
「政党を越えて」
 政党政治なのであえてであった。
「エウロパは一致団結しなければならないのだ」
「階級も越えてですね」
「階級は確かにあるがな」
 ボーデーに応える。エウロパにいてそれを否定することは出来ない。エウロパにおいては階級というものは絶対のものである。貴族と平民、これはなくすことは誰にも考えられなかった。
「それでもだ」
 彼は述べた。
「我々は派閥やそうしたものを越えて一つになり、優れた指導者の下」
「エウロパを救わなければならないのですか」
「私はそう思う」
 ペーチの言葉は硬いままであった。
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