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第十九部第四章 最後の意地その十九
「果たして出るのかどうか」
「出ればよし、出なければ」
「出なければ」
「エウロパは迷うことになるでしょう」
「これからが大変だというのにですか」
「はい」
 モンサルヴァートは答えた。真摯な声であった。
「エウロパを救う者が出るかどうか」
「かってのブラウベルグの様な英傑が出るか」
「それが問題です」
 彼等はそれを望んでいた。そしてその人物は確かにいた。だが今は雌伏の時を過ごしていたのであった。
 その者は今自身の邸宅にいた。その中の一室で誰かと話をしていた。
「そうか、うまくいっているか」
「はい」
 彼は暗い部屋の中にいて椅子に座っている。その周りに何人かの男達がいた。
「全ては。順調です」
「資金の方は問題ないかと」
「問題は宣伝だが」
「それも御心配なく」
 男達の中の一人が言った。
「既にマスメディアの多くの支持を取り付けました」
「インターネットでの宣伝準備も出来ております」
「知識人達とのコネクションも出来上がりつつあります」
「貴族達とは」
「それも御安心下さい」
 別の男が述べた。
「既に。かなりの貴族達に話をし」
「支持を得ているのだな」
「最後に平民の支持ですが」
「数としてはそれが一番大きいな」
 やはり貴族達と比べてその数は圧倒的に多い。そのうえ彼等の一票も貴族の一票も同じ価値を持つ一票なのだ。平民の支持なくしては貴族といえど議員にはなれないし、ましてや総統になることも出来はしないのだ。こうした面においてはエウロパもまたれっきとした民主主義国家であった。
「そちらはどうなっているか」
「これは宣伝とリンクしています」
 また男達の中の一人が言った。
「あの戦争での武勲が大きな効果を果たすかと」
「あれがか」
「そうです。圧倒的な兵力を持つ連合軍に対して果敢に立ち向かい怯むことはなかった」
「それだけでも非常に大きいです」
「勇敢な騎士としてだな」
「はい」
 男達は彼に答えた。
「わかった。では私は勇敢な武人だ」
「はい」
「連合と果敢に戦う武人だ。これでいいのだな」
「そうです。侯爵は武人であられます」
「そして」
「そして?」
 彼は男の中の一人の言葉に反応を示してきた。
「英雄であられます」
「英雄か」
 その言葉に笑った。不敵な笑みであった。
「そうです。英雄です」
「連合に立ち向かった英雄」
「今度はエウロパを救った英雄となるのです」
「わかった。ではエウロパを救おう」
 彼は言った。
「この美しいエウロパをな。もう一度蘇らせる」
「はっ」
「今回の敗戦を敗戦としない偉大なるエウロパに。もう一度するぞ」
「わかりました」
「それでは」
「もうすぐ時が来る」
 彼はまた言った。
「その時に備えるぞ。いいな」
「畏まりました」
「エウロパの為に」
「うむ」
 男は闇の中で男達の言葉を聞き満足そうに頷いていた。彼はそこに未来を見ていた。エウロパが自らの手で復活する夢を。今彼は英雄になろうとしていた。
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