第十九部第三章 会議は変わりその二十一
「これが連合の宴なのですね。実に大掛かりです」
「我々は宴は派手にやる主義ですのね」
「成程。そして食べるのも」
「はい」
カバリエはにこやかに返す。
「食べて、飲むのでなければ何の宴でしょうか。それも大掛かりに」
「大掛かりですか」
「連合ではまずは食べることです」
そして言った。
「食べ、飲む。こうしたバイキングの形式が多いですね」
「一つ一つ座りながら食べるということはないのですね」
「そういう宴もあることにはありますが」
それでもテーブルの上には料理が山の様に盛られているか一品一品が運ばれて来てもそれの量が極めて多いか。どちらにしろ連合の宴は多量の料理と酒を必要とするものだ。これが今話を聞くペーチ達にとって無言のプレッシャーとなっていた。彼等はそれを聞いて食糧危機を真剣に考えた。そしてそれへの対処の為にここは何としても講和のテーブルに着くべきだと決意した。
「やはり主流はこうしたバイキングですね」
「左様ですか」
「これですと多くの人間が参加出来ますし」
「ふむ」
「よいものですよ」
「そういえば我々のところではこういったものは」
「はい」
ふと気付いたようなペーチにカミュが声をかけた。4
「なかったな」
「ええ」
エウロパの宴は大抵座って行われる。立って次から次に好きなものを食べるということはないのだ。これが連合の宴とエウロパの宴の大きな違いの一つであった。
「ところで我々の料理は如何ですか」
「料理ですか」
「はい。様々な品を揃えておきましたが」
「そうですな」
これにはエウロパきっての美食家と謳われているカミュが答えた。
「かなり濃い味付けですね」
まずはこう述べた。
「そして食材は種類が実に豊富です。調味料も香辛料も」
話を続ける。
「正直繊細さには全く欠けます」
「繊細さはありませんか」
「はい。かなりワイルドなものであるように感じられました」
「成程」
一旦はそれに頷く。だが。
「しかし」
「しかし?」
「エウロパにはない味でした。中々興味深いものでありました」
「エウロパにはこうした味はないのですね」
「はい」
率直に述べた。
「新鮮でしたね」
「それはこちらもです」
「そちらも」
「はい。エウロパの繊細な味付けは。かなり新鮮でした」
「ふむ」
「香りも穏やかで。口の中まで支配するとは」
「そうだったのですか」
「美味しさとは一つではないのですね」
「ええ、まあ」
これにはカミュは少し嫌な声になっていた。彼はやはりエウロパの料理が最高だと思っているからである。正直それは認めたくはなかった。
「今回はそれがよくわかりました」
カバリエは述べた。
「それではまた明日もどうぞ」
「明日もですか」
それを聞いたペーチとカミュの目が動いた。
「はい。宴は暫く続けますので」
カバリエはにこやかに笑っているがそこには魂胆がある。そしてペーチとカミュはその魂胆を察していた。
「我々の宴を楽しんで頂けたらと思っております」
「それは何よりです」
カミュは外見では笑っていた。
「それではまた明日」
「はい」
カバリエは挨拶をしてその場を後にした。宴はそれからも続いた。宴が終わってからペーチとカミュは総統官邸に向かった。そこでラフネールに話をした。
「このままではエウロパの食料が食べ尽くされます」
「卿等もそう思うか」
ラフネールの危惧は彼等のものと同じであった。
「ええ」
カミュがそれに応える。
「このままですと」
「かなり危険です」
ペーチも述べる。三人は連合の宴を見て同じ危惧を抱いていたのだ。
「牛の丸焼きを見たな」
「はい」
連合の中の一国アルゼンチンにある料理だ。文字通り牛を丸焼きにするのだ。宴でよく出る料理である。
「流石に鯨や恐竜の丸焼きはなかったが」
「連中はシーフードもかなり食べます」
「魚も膨大な量だったな」
「はい」
「それに野菜や果物も」
「全てエウロパで買い入れるか狩猟で手に入れたものです」
略奪はしていない。あくまで買ったのだ。ここが連合らしいと言えばらしい。
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