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第十九部第三章 会議は変わりその十一
「結局人間は色々な欲というものを持っていますから」
「確かにそうですね」
「俺達だってそうですし」
「そういうことです。だからこうした産業もあります」
 ただしその裏にはどうしても黒社会が関わるが。賭博や芸能、そして風俗といったものに黒社会が深く関わるのは致し方ない一面もあった。人類社会がある限りどうしても表と裏が出来上がる。社会もまた。だから黒社会が存在するのだ。連合でもエウロパでもマウリアでもサハラでも程度の差こそあれこれは何処にでも存在する。存在しないとすればそれは究極の独裁国家である。ヒトラーのナチス=ドイツやスターリンのソビエト=ロシアは黒社会はなかった。もっとも独裁者とその下にある秘密警察は黒社会なぞ比較にならない程危険な存在であったが。
「全て否定するのは不可能でしょう」
「そういう御考えですか」
「はい、私は」
 八条自身もそれを認めた。
「そう考えております」
「左様ですか」
 兵士達はこれを聞いて話のわかる長官でよかったと思った。少なくとも金ならこうしたふうにはなりはしない。内務省はセクハラのない、そして徹底的なまでに風紀の行き届いた恐るべき場所として知られている。厳格で潔癖症で不正を許さず、そのうえ切れ者である金がその長だからだ。どうしようもないまでであった。
「では長官」
「はい」
 八条は一人の兵士に顔を向けた。
「一度御忍びでも行かれたらどうですか」
「そうですよ、一度中に入られては」
「デートクラブなんかいいですよ」
「おい、あれは違法なのが結構あるぞ」
 風俗にはつきもののことではあるが。
「おっと、そうか」
「デリバリーヘルスだろ、やっぱり」
「あれデートクラブとどう違うんだ?」
「最後までやるかやらないかだろ」
 建前ではそういうことになっている。
「ホームページにも書いてあるじゃねえか、デリヘルのよ」
「あんなの当てになるかよ」
「ホームページでデリヘルつっても別の雑誌でデートクラブとして堂々と載ってるぜ」
「そうなのか」
「そうなのかじゃねえよ」
「俺のダチだってそれでやってたからな」
 何と友人に男性の風俗関係者がいる者までここにいた。
「ホテルの中じゃ誰にもわかりゃしないからな」
「二人きりだからな」
「後は自由恋愛っと」
 そうしたものである。結局誰にもわかりはしないのだ。二人だけで密室に入るのだから。
「それ考えると怪しいよな」
「デートクラブとデリヘルって実は区別ないからな」
「ああ」
「そうらしいですね」
 八条がそれに応えて言った。
「その辺りの区分はかなり曖昧だとか」
「最後までいくと金余計に取られたりしますけれどね」
「まあそれでもしたい奴はしたいのですけど」
「そういうものなのですね」
「ですよ」
「やっぱり人間ですからね」
 そうしたこととは切っても離せないのである。そうした面でもやはり人間は人間なのだ。
「ただ、最低限気をつけて欲しいことはあります」
「はい、トラブルと」
「病気です」
「わかってますよ」
「その為に、ですからね」
「そうです。この二つは気を着けて下さい」
 その二つがないようにする為の風俗でもある。それでこの二つがあっては話にはならない。
「了解」
「承知しました」
「特に病気は今のところ流行ってはいないようですが」
「それはまあ」
「検査厳しいですし」
「いいことですね」
 そうでないと大変なことになる。かってフランスがイタリアに攻め込んだ時には娼婦達から移された梅毒により戦争続行が不可能な状況になって撤退する羽目になっている。性病への配慮も軍になくてはならないものなのだ。
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