第十九部第二章 会議は踊るその十四
今日の宴は音楽を聴きながらの昼食会であった。八条達の前には一品一品ずつ運ばれて来る贅沢な、見たことも聞いたこともないような料理とワイン、そして複雑なマナーがあった。後ろには流麗なクラシックがあった。
場所はガイアにある宮殿の一つであった。コバルトブルーを基調にしており、絹のカーテンは白、そして珊瑚や真珠で飾られていた。それを見るとどうやらこの宮殿は海をイメージして建てられたらしい。
今彼等がいる宴の場もそうであった。絨毯はマリンブルーであり、演奏を奏でる音楽家達も青いタキシードとドレスに身を包んでいる。シャングリラは青水晶であり、まだ灯りはないが青い透明な光を放っていた。それがここにいる者達をまるで海の中にいるように思わせていた。
「如何ですか、長官」
あえて銀河語を使った言葉が八条にかけられてきた。それはカミュのものであった。
「今日の催しは」
「そうですね」
見ればカミュは笑っていた。笑ってはいたがそれが仮面であることは明らかであった。八条は慎重に言葉を選びながらそれに応えた。
「海の中にいるようです」
「あえてそれをイメージしてみました」
カミュはその言葉を聞いてスッと笑った。
「ここはオケアノス宮殿と言いまして」
「ティターン神族の海の神ですね」
「そうです。その神と海そのものをイメージしました」
「ポセイドンではなく」
「海の神と言っても一人ではありませんよ」
カミュはそう応えて笑った。
「複数の神がいるのです。ギリシア神話では」
「ふむ」
「太陽にしろヘリオスがいればアポロンもいる。彼等は同時に同じ世界に存在しているのです」
これはギリシア神話の特徴の一つである。オリンポスの神々の時代であってもアポロンが太陽神であると共にヘリオスもまた太陽神である場合があるのだ。月に関しても同じであり、アルテミスとセレネが同じ時代にいる場合もある。また両者が混同されている場合もあるのだ。
「同じ世界に」
「はい。言い換えれば同じ時代です」
カミュは述べる。
「こうしたことはそちらではもっとある筈だと思いますが」
そう言いながら八条を見据えてきた。
「連合では。どうなのでしょうか」
「同じ神話体系であっても同じものを司る神が複数存在することは確かにあります」
それは認めた。
「ラーとホルスにしろ」
連合ではこのエジプトの古い神々も同時に信仰されているのだ。ラーが昔からの年老いた太陽神であり、ホルスが若い太陽神であるとされている。
「左様ですか」
「はい、それを考えるとオケアノスとポセイドンが同じ時代にいても特に差し支えはないのですね」
「そういうことですね。そして」
「はい」
カミュは話題を変えてきた。
「今回の料理は。如何でしょうか」
「料理ですか」
今回のメインディッシュは兎のステーキであった。オリーブで焼き、ソースは白いまろやかなものである。
「今回は我がフランスよりとりわけ名のあるシェフを呼びましてね」
我がフランス、と述べたところでカミュは何時になく言葉尻を上げた。
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