その1
強烈な目眩が一瞬襲ってきた後、気付くと私は森の中に居た
「ここは何処・・・?」
さすがに記憶を持っていかれた訳ではないので『私は誰?』などというテンプレには断じて従わない
しかし、見知らぬ森である
暫くすると、微かにだが草を踏み分ける音が聞こえてきた
明らかに1つ2つではなく、それなりの数が居る・・・ということは、少なくとも熊の類では無いのだろう
「しかしまあ、上も無茶を言う」
「仕方ないだろう、町に妖怪が入り込んでもらっても困るからな」
「でもなぁ
町の周囲の森を回って妖怪を殲滅してこい、だなんて」
「いくら人員と装備を整えても個人が楽になるわけじゃないのに」
何か愚痴をもらしながら草木をかき分けながら進む一向
私は思い切って声をかけることにした
「あ・・・あの、すいません
私、道に迷ってしまって・・・」
「あれ、こんな深いところで珍しいな
何処の家の使用人だ?」
「いえ、気が付いたら此処に居たのですが」
「ふむ・・・見たところ人間のようだし、嘘をついているようにも見えんな
まあいい、丁度俺らも切り上げて戻ろうと思ってたところだ、ついてこい」
「ありがとうございます」・・・と言い終わらない内に私は気を失った