愛する者
何だか俺は異様にムシャクシャしていた。
それもこれも全てコイツのせいだ。
俺は彼女が横に腰掛けた瞬間、何のためらいもなく彼女を押し倒した。
「ちょっと何!?」
驚いて声を上げる彼女を無視して、その煩く騒ぎ立てる口を舌で塞ぐ。
「んん…っ!」
俺の様子がおかしいことに気づいたのか、彼女は咄嗟に抵抗して抜け出そうとする。
俺は逃げ道を塞ぐように腕を渡し、彼女の身体にのしかかった。
「海…?何か変だよ?」
怯えたように見返してくる瞳には、睨み付けるように彼女を眺める俺が映っていた。
俺はそんな彼女を無視して、彼女のブラウスのボタンに指をかけた。
次々と彼女の服を剥ぎ取って、彼女の左乳房が見えたとき、俺はそこに口付けるように口唇を寄せる。
「痛っ!」
途端仰け反り、抵抗しようともがく彼女を押さえつけ、俺は容赦なく乳首に噛み付いた。
そのまま乳房に舌を這わせ、乳首を舌で転がし、指はスカートへと伸ばす。
はぁはぁと荒い息を繰り返す彼女は涙目になりながらも、びくんびくんと感じてくる。
俺は小さく冷笑を浮かべると、乱暴に彼女の白くて細い足を持ち上げた。
「―っ!!」
驚いたように目を見開く彼女を尻目に、今度は太ももから脹脛にかけて、つーっと舌を這わせていく。
「ん…くっ…」
彼女の口から耐え切れなくなった熱い吐息が零れ落ちる。
目尻に涙が溜まっているのが、またそそる。
そんなに痛かったのかな。
小さく口を開け、彼女の太ももに甘噛してみる。
徐々に力を入れていくと、どんどん彼女の身体が仰け反って、涙がぽろぽろと零れ落ちた。
「や…っ!」
もう一度強く牙を立てる。
彼女の白い肌に、赤い印をつけるように。
誰のモノであるかを、しっかりと知らしめるために。
足から口を離すと、ねっとりとした唾液が僅かに糸をひいて、彼女の足を流れ落ちていく。
足には血がにじみ出ていて、白に赤が映えてとても綺麗だ。
彼女の耳に口唇をそっと近づけ、優しく、
「ねぇ、君が誰のものか教えてあげようか」
と囁いてみる。
彼女はカッと目を見開いて、わなわなと震え始め、俺に押さえつけられていない左手で口を固く覆った。
ぎゅっと閉じた目から涙が一筋、ベッドの上に小さな小さなシミを作る。
ゆっくりと、わざと音を立てて彼女の耳を舐めると、彼女はまたびくんと身体を跳ねさせた。
こんなにしても身体は素直だな。
くすくすと笑い声を上げて、首を舐め上げる。
下から上へ舐めると、彼女はそれに合わせて、ふるふると身体を震わせた。
「君は誰の彼女なの」
あくまでも優しく問い詰める。
「君は俺と付き合ってるんじゃなかったの?」
ザシュッ。
首に牙を突き立てると、彼女は一瞬目を見開いて、また涙を流す。
血が首筋を伝い落ちて、ベッドには涙の他に、更に赤いシミができた。
「誰が他の奴と一緒にいてもいいだなんて言った?」
ザシュッ。
もう一噛。
さっきよりも更に深く、そこに刻む。
「俺、そんなこと許した覚えないけど」
ザシュッ。
鮮血がベッドに散る。
彼女が苦しげな吐息を漏らした。
「俺も見くびられたなぁ?」
ぐい、と彼女の髪を引っ張り上げ、無理矢理顔を近づける。
彼女は解放された首を手で必死にかばいながら、怯えた目で俺を見返してくる。
そう、もっと怯えればいい。
怯えて服従して、ずっとココにいればいい。
俺は唇の端を意地悪く上げると、彼女の髪から手を離し、壁に突き飛ばした。
「うっ…」
痛みで壁にずるりと崩れ落ちる彼女を視界の端に移しながら、俺はハッと鼻で笑った。
浮気がバレないとでも思っていたのか?
寧ろバレなければいいと思っていたのか。
こんなにも愛してやってるのに。
壁に背をつけたまま動かなくなった彼女の顎に手をかけ、口唇を重ねる。
舌を深く深く入れると、血の味がした。
「チッ」
小さく舌打ちすると、無音の闇にその音はやけに大きく響いた。
白い裸体が壁を背に、まるで人形のようにぱたりと倒れ落ちる。
こんなにも愛してたのに―――?
愛する彼女はたった今、舌を噛み切り、自害した。
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