豆カン。(18/25)縦書き表示RDF


普通がかなり続いてますね。
今回も普通です。
豆カン。
作:乙麻呂



夏のある日


ぱしゃり、と足で水を弾く。

素足にかかる水は柔らかく、冷たい感触は心に一種の安らぎを与えてくれるようだ。

私はぐるぐると足で水をかき回しながら、ぼんやりと空を見上げた。

たらいに氷を入れ水を張る方法は、今時珍しい納涼方法だと思う。

縁側の縁に浅く腰掛けて、私はまた、ぱしゃん、と水を蹴った。

空には満点の星空が広がっている。

街中と違い、祖母の家があるこの田舎は、周りが田んぼに囲まれていて余計な明かりがない。

そのため家の中からでも星が拝めるほどに、町全体がしんと静まり返り、深い闇につつまれていた。

何かいいなぁーこういうのも。

ぱたぱたと団扇で顔を仰ぐと、開けっ放しの窓に向かって、蛾がひらひらと飛んできた。

鱗粉りんぷんをたっぷりと乗せた重そうな羽を、これまた重そうな胴体に乗せて、よたよたと飛んでくる。

上へ下へと安定しない動きをしながらも、そいつはゆっくりと部屋中へと侵入していった。

まぁいっか。

一通り蛾の行く末を見つめた後、また外へと視線を戻すと、今度は遠くの方からゲコゲコと言う声が聞こえてきた。

周りが田んぼであるから蛙くらいいるだろうが、それにしても凄い声だ。

丁度繁殖期なのかもしれない。

ゲコゲコゲコと忙しなく鳴く声は、人間の私にはとても求愛をしているようには聞こえないが、蛙の世界ではあれが精一杯のラブコールなのだと思うと、ほんの少し笑えた。

暑苦しく思えるほどの盛大なラブコールに耳を傾け、何となく空に向かって手を伸ばしてみる。

よく、星空に手が届きそう、などと言う表現を見るが、正直それは間違っていると思う。

こうして実際見て思うのは、本当に美しいと感じたとき、それは届くどころか圧倒的な敗北感の元、絶対届くことがないと言う諦めにも似た感情が感じられるはずなのだ。

今見ている星空も、手を伸ばしても届くどころか、逃げていくよう。

寧ろ手を伸ばすことで、手が届かないことを再認識させられたような、そんな虚しさが心をかすめる。

手を伸ばしたついでに、斜め上に見えている月を、指の間に絡めてみる。

今日は十六夜月いざよいづき
満月から下の部分をほんの少しだけ齧った様な、ほぼ丸に近い月。

薬指をそっとへこんだ部分に沿わせると、指の上に丸く輝く部分だけが見えて指輪のように見える。
月は高く小さく、それは銀色に輝くパールのようだった。

ぱしゃっ。

氷が半ば解けて、温くなった水から足を上げる。

用意してあったタオルで丁寧に水気を取ると、しわしわになった指が目に入った。

どうやら長い間水に浸かり過ぎたようだ。すっかりふやけてしまっている。

手でぎゅっぎゅっと足の指を揉んでやると、冷えていた指先に徐々に血がめぐり始めた。

縁側から半身を乗り出す。

すぐ足元にある盥を指に引っ掛けて、その場でばしゃっと引っくり返した。

土がむき出しになった庭に、小さな水溜りが出来て、すぐに水を舐め取るように吸い込んでいく。

相変わらず耳に煩い蛙の声を聞きながら、明るい室内に目を向ける。

そこのは先程進入を許した白い蛾が、電灯に向かってぱちぱちと弾けていた。

夏だなぁ。

私はもう一度だけ空を見上げると、盥を縁側に立てかけ、ゆっくりと部屋の窓を閉めた。


『夏のある日』いかがでしたでしょうか?

ここ三日ほど、こういう『のんびり』かつ『ひんやり涼しげ』な話が書きたくて、でも文章に出来なくて悩んでおりました
と、とりあえず文章には出来たかな?^^;

よくある風景を描くって言うのは結構難しいです
よくあるけど、よく知らない風景が多い
蛙の声はまだ私の家には届いてませんが(ちなみに団地なので田んぼの中にはありませんよ。でも団地の外は田んぼです)そろそろ鳴き始めるんじゃないかなって思います

でもよく考えたら夏の前に梅雨ですよね
そのうち梅雨の話も書きたいですね^^(昨日のがそれか?^^;

それでは少しでも『夏のある日』楽しめていただければ幸いです♪

これからも『豆カン。』をよろしくお願いします(つω`*)テヘ






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