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大変長らくお待たせしました。
学校が始まり、ついでに体調を崩し・・・もう散々。
今まで頭痛をあまり味わった事がない僕ですが、初めて頭痛に悩まされ・・・。
今まで頭痛の事を甘く見ていた自分を叱りたいぐらいです。はい。

コロニー落下阻止作戦前半。
どうなることやら。
第七部 ~影の支配者~
第九十五話




「へぇ~。凄いのね」

今回、指揮下に入る事になったアレス隊。
現在、ちょっとした時間的余裕があるので、彼らについて調査している。

「・・・アルメイラ大佐。士官学校を首席卒業しています」
「その時の教官がフクベ提督。珍しい事もあるものね」
「というより、フクベ提督が教官をしていた時代がある事にビックリです」

まぁ、あの皺の一つ一つに英知が込められているという事なのだろう。
ベテランの中のベテランという言葉が相応しい御仁だし。

「・・・女性軍人達にとって憧れの存在のようです」
「まぁ、あれだけ美人で能力があればそうだろうなぁ」
「あら? 一目惚れしちゃった?」
「や、やだなぁ。ミナトさん」

僕は貴方一筋ですよ。

「コ、コホン。戦略シミュレーションで無敗を誇る・・・か。うちの艦長と戦わせてみたいですね」

どっちが勝つかな?
運と閃きで解決してきたユリカ嬢と緻密な計算で未来を自ら描くアルメイラ大佐。
まぁ、記録を見た限りだから、アルメイラ大佐の実力はまったく分からないんだけどさ。

「・・・アルダート大尉。南欧支部の教導隊出身だそうです」

教導隊ねぇ。
そりゃあ腕も良いよな。
なんといっても、パイロットに操縦を教える側の人間なんだから。

「ad-RRをパーソナルカラーであるクリムゾンレッドに塗装し、
 喰らい尽くすかのような果敢な攻めが特徴。別名は血塗れの狼か」

獰猛なイメージだね。随分と。

「そして、この二人が率いるアレス隊はナデシコ以上の成果を残していると」
「まぁ、宇宙に上がった時期が違うから比較は出来ないけどね」
「それでも、他の艦隊に比べると群を抜いてますよ」

単純に凄いとしか言いようがない。
あの歳で大佐なんて―――。

「コウキ君。失礼よ」
「・・・コウキさん。失礼です」

す、鋭いな。本当に。

「あ、あの若さで大佐なんて凄いなと思っただけですよ」

け、決して、年齢の事に触れた訳では・・・。

「そう、それならいいけど」
「・・・気を付けて下さい」

・・・本当に女性って敏感だよな。こういう話。
実は前の世界でバイト中に二十二の人を二十八って言ってしまった事があり・・・。
落ち込ませてしまったり、怒られたりと・・・。
申し訳ない気持ちと罪悪感が溢れる思い出です。はい。
・・・というかセレス嬢ですら年齢は気にするものなのか?
本当に女性は難しい。男と女は違う生き物っていうのは本当かもしれん。

「さて、そろそろかな?」

作戦決行二時間前にブリッジへ。
確かアルダート大尉が迎えに来てくれるとかなんとか。

「・・・来たようです」

格納庫の入り口からナイスミドルが歩いてくる。
あのナイス加減は間違いなくアルダート大尉だな。

「それでは、行ってきます。ちょっと待っていてください」
「ええ。しっかりね」
「・・・待ってます」

さて・・・どうなったかな?
俺としては指揮官がアルメイラ大佐のままの方が良いのだが・・・。
こればかりはどうしようもない。
アルメイラ大佐以上の階級の者が来ないよう祈ろう。





「・・・こうなったか」

ヒナギクにて漆黒の空を進む。
両脇にアドニスリアル仕様。前方に深紅のアドニス。
全三機が俺達の為の護衛としてここにいる。
実際のアレス隊はもっともっと多いのだが、今回はエネルギーの関係で少数に。
現在、彼らの出力はヒナギクによって確保している。
ヒナギク自身も戦力として数える以上、重力波を多機に送る事は出来ない。
また、単独行動の際に素早く動けるようにという意味もあり、
ヒナギクの護衛にはアレス隊所属の腕利きの精鋭が付くという事になった。
だから、両脇を固めるのもアドニスリアル仕様とエース級のパイロットな訳だ。
正直、かなり心強かったりする。
しかし、心細い面、というか、不安な面もある。

「最後の一時間でギリギリ合流した偶然地球からコロニーへとやって来ていた准将ねぇ」

結局、指揮はその准将が取る事となった。
アルメイラ大佐も当然彼の指揮下。
指揮官としての権限はあるものの、最高指揮官には従わなければならない訳で。
行動が多少ながら縛られる事となった。
結果として、俺の提案した策は不採用。
もちろん、アルメイラ大佐も俺の案をその准将に提案してくれたらしい。
だが、果たして破壊できるのかという事となり、准将の作戦が実行される事となった。
その策は・・・。

「サツキミドリコロニー内に侵入し、軌道の方向を変える・・・か」

・・・作戦としては優れている。
コロニー落としを阻止する方法は結果として落ちなければ何でも良い。
破壊しようが、停止させようが、放置しようが、落ちさえしなければ。
そうなれば、破壊だけがコロニー落とし阻止の方法ではない。
他の方法の一つとしてコロニー自体の軌道を変えてしまおうというものもある。
成功すれば、地球に接触する事なく、被害も何もなく解決するだろう。
破壊するより確実であり、破壊した際のような断片が散ってしまうなどの危険性もない。
だが、果たしてそう簡単に侵入できるだろうか? というのが俺の疑問だ。
これだけの大規模な作戦をする上で、護衛役がいないという事があるだろうか?
コロニー落としを成功させるまで阻止させぬよう守り通そうとする筈だ。
それが誰の仕業であっても必ず。
だからこそ提案した先制攻撃。
それで少しでも敵戦力が削れれば、今後が楽になる。
更に言えば、こちらの被害も少なく出来る。
まぁ、破壊した断片が散ってしまい危険と言われれば否定できないのだが・・・。
それなら、先制攻撃をした上でコロニーを操作してしまえば良い。
そう思うかもしれないが、世の中、そううまくはいかない。
この作戦は両立が出来ないのだ。
こちらが先制攻撃でコロニーを破壊してしまえば、
一つの物体として動くコロニーが分解してしまうという事に。
そうなれば、コロニー全体を地球から逸らしてしまおうというこの作戦。
前提条件からして狂ってしまう訳だ。
そんな事を作戦提唱者が許してくれるとは思えない・・・。
やはり、不確定要素が絡んでくると慎重になるものか。
殲滅射撃仕様の実績があればこの案も通るのだろうが、不幸な事に今回が初の実戦。
そりゃあそう簡単に信用されないよな。
まぁ、彼らの作戦が有効である事は確かだ。
今回、俺も彼らの指揮下として動く以上、指示には従おうと思う。
それで成功すればそれが最も良いのだから。
但し、それでも成功しないようだったら単独行動権を発動させ勝手に動かせてもらう。
きちんとした手順を踏んで認めさせた権利だ。
誰にも文句は言わせない。

『作戦ポイントへ到着する。各員、気を引き締めろ』
『『「了解」』』

クールに応えるパイロット達。
やはり歴戦の勇者なだけあり、らしい雰囲気がある。

「コウキ君。そろそろ準備なさい」
「・・・任せても?」
「ええ。私は回避に専念すればいいのよね?」
「はい。セレスちゃんは―――」
「・・・コウキさんの指示通りに動きます」
「うん。頼むよ」

うし。行くか。

「それじゃあ、行ってきます」
「いってらっしゃい」
「・・・無事に戻ってきてくださいね」
「了解」

二人に見送られながら、俺はコクピットから退室する。
そのままヒナギクの格納庫へと走り、アドニスへと飛び乗る。

「アザレア」

ヒナギクに移しておいたアザレアをアドニスへと移す。

『マイマスター。ここに』
「行くぞ。補佐は任せた」
『御意』

その後、出撃準備を全て済ませ・・・。

「アドニス殲滅射撃仕様。マエヤマ・コウキ。出ます!」

格納庫から飛び出す。

「アルダート大尉」
『ああ。貴官は俺の隣に、ヒナギク前方を囲む』
「了解」

指定された位置に移動し、戦闘態勢を移る。

『我々に与えられた任務はサツキミドリコロニーへの突入の援護。
 具体的に言うならば、サツキミドリコロニー周辺の敵を掃討する事だ』
「了解」
『また、万が一に備えて、貴官は準備を怠らない事。単独行動は認められている』
「はい」

理解が深くて助かります。

『見えてきたな』

サツキミドリコロニー。
その姿が視界に映る。

「・・・あれが地球に落ちるのか・・・」

巨大。一言で表すならそれに尽きる。
チューリップなどとは比べ物にならないぐらいの大きさだ。
これが地球に落ちたらなんて・・・考えたくもない。
落下中に燃え尽きるだろう。そんな予想も出ている。
だが、万が一を考えたら・・・油断なんて出来る筈がない。

『接近する。後に続け』
『『「了解」』』

アルダート大尉が飛び出し、同時に俺達も前へと進む。

「ヒナギク。DFを張ってそのまま付いて来い。ミナトさんは回避に専念」
『了解』

作戦の構成上、突入組と掃討組は限られてくる。
それはジェネレーターの関係。
重力波に依存するエステバリス、アドニス、ヒエンでは突入は不可能。
潜っている最中にエネルギー切れで機能停止するのが眼に見えている。
その為、突入組はステルンクーゲルが主力となる。
彼らなら突入時のエネルギー切れの心配はない。
そういう意味では頼もしい存在である。
残るエステバリス系統の機体は彼らの突入の援護。
周辺に蔓延る敵機を掃討し、彼らの突入は妨げる障害を消滅させるのが仕事だ。

「・・・他の艦隊もあがってきたか」

最初は掃討組から始まる。
突入組は掃討組が敵機を減らし、隙を作り出してから突入する予定だ。
唯一、掃討組でも自由行動が出来る俺達だが、例外はない。
遊撃隊として働くよう指示が出されたそうな。

「さて、何が出てくるかな?」

木連であれば安直にバッタやらジンやらが出てくるだろう。
だが、俺はこれが連合軍の仕業であると知っている。
果たして、どのような機体が出てくるやら・・・。

『接触するぞ。各機、戦闘準備』

アルダート大尉の指示に従い、グラビティライフルを手に持つ。
ヒナギクからの重力波によって戦闘における不安はない。
威力、連射性、精度、それら銃火器に必要な全てが優れるこいつなら・・・。

「どんな敵であろうと撃ち抜いてみせる」

さぁ、掛かって来い。
コロニー落とし。必ず阻止してみせるからな。





「なるほどね。考えられてるじゃないか」

サツキミドリコロニーの接近と同時に現れた敵機。
それは・・・。

「デビルエステバリス、いや、デビル軍団だな」

原作ではサツキミドリコロニーで登場。
それ以降、登場しなかったデビルエステバリス。
この世界では一度も御目に掛かっていない。
まさか、サツキミドリコロニーでその姿を見る事になるとはな。
なんとも不思議な事だ。
しかも、デビルエステバリスだけではない。
言うならば、デビルヒエンやらデビルアドニス、デビルステルンクーゲルまで配備。
正にデビル軍団という名が相応しい集団だ。

「確かにこれなら怪しまれない・・・か」

バッタは以前のミスマル司令暗殺事件の際に、
木連から秘密裏に連合軍が輸入している事を確認している。
後はあちらこちらから横流しした機体をそのバッタに操らせれば良いだけだ。
バッタは木連の象徴。木連かどうかを疑う事はまずないだろう。
それに・・・。

「アルダート大尉。あれは・・・」
『ああ。時々確認される機体だ。バッタによって制御された連合軍の機体。
 パイロットの負担を考えずに行動できる為、かなりの性能を発揮する。気を付けろ』

こうして、何度かの目撃情報があればなおその信憑性は増す。
カメラに映った瞬間にデータが表示されたから、確認されていると分かった。
初対面であれば、アンノーン、もしくは、エステバリスなどの表示がされる筈だ。
それがデビルエステバリスになっているのだから、そう確信するのはおかしくない。
まぁ、同じように名前がデビルエステバリスになったのは意外だったが・・・。

「ここまで想定して紛れ込ませていたか?」

木連との戦闘中、デビルエステバリスを乱入させる。
そうすれば、乱入させたのが連合軍であろうと木連だと錯覚するだろう。
もしくは本当に木連がデビルエステバリスを使っていたかもしれない。
そうであればなんとも都合が良い話だけど。
とにもかくにも、バッタによって制御を奪われた機体が木連だと認識されている以上、
連合軍がバッタを輸入して、自分達の機体に寄生させれば、木連の仕業だと錯覚させられる。
考えられている。本当にそう思った。

『行くぞ』
『『おう!』』

率先して飛び出していくアレス隊。
荒ぶる攻撃を特徴とした彼らの攻撃が始まった。

「俺も行きます。ミナトさん達は距離を確認しながら移動を」
『了解。気を付けてね』
「ええ。分かっています」
『援護します。フェザンツ、ニバレス、射出』

格納庫内に収められていたフェザンツ、ニバレスが射出される。
出撃前にウリバタケさんが気を利かせて積み込んでくれていた奴だ。
数は少ないが、ないより全然マシ。ありがとう。ウリバタケさん。

「今の所、攻撃はしなくて構いません。ミナトさんは回避に、セレスちゃんは情報解析に専念を」
『分かったわ』
『・・・分かりました』

うし。それじゃあ・・・。

「俺は掃討に専念。行くぞ!」

アレス隊の後を追う。

「そこっ!」

ドゥビューン! ドゥビューン!

両の手に持つグラビティライフルからそれぞれ発射。
煙幕の間を通りながら、次々と屠っていく。
確かにバッタの制御なだけあり、慣性無視で運動性能は優れている。
だが、それだけだ。
所詮はバッタの制御。単純かつ単純。要するに単純。
原作で苦労したのはコロニー内が閉じられた狭い空間だからだろう。
宇宙空間であれば、ワイヤードフィストを使った変則的な機動も不可能だし。
多少動くのが速い程度であり、大した障害にはならない。

『流石はナデシコのパイロットだな』
「いえ。そちらこそ。流石は連合の誇る紅き狼」
『ふっ。この程度で褒められてもな。俺の実力はこの程度では計れない』

凄い自信だ。でも、それでこそ、かな。

「それは俺も同じです。この程度の輩で賞賛されても嬉しくありません」
『よく言った。次に行くぞ』
「はい!」

遊撃隊として戦場のあちこちを回らなければならない。
防衛網とは少し違うが、様々な方向から突入する以上、多くの隙を作る必要がある。

「制限時間は後どれくらいだ?」

現段階で一般兵士でしかない俺には詳しい作戦遂行時間は知らされていない。
だが、間違いなく掃討組の任務には制限時間が設けられているだろう。
突入してからサツキミドリコロニーの制御部に辿り着くまでの時間。
操作する時間。操作後、地球圏内から離脱するまでに必要な距離、時間。
それら全てがシミュレーションされているに違いない。
そうであれば、突入までのタイムスケジュールも定められている筈。
俺達はそれまでに突入させるだけの環境を作り上げなければならない。

「しかし・・・凄い数だな」

これだけの数が揃えられるなら、決戦の為に取っておけよというのが正直な感想。
急場凌ぎで集めた数だが、逆に言えば、周辺で集められるだけ集めた数。
それに匹敵するだけの戦力ってどういう事?
・・・連合軍内でどれだけの横流しが発生した事やら。
もしくはどこかの工場が強制的に徴収されたか・・・。
どちらにしろ、同じ連合軍同士でこれ程の数の犠牲を出すのは勿体無いとしか言いようがない。
徹底抗戦を認められようと決戦に負ければ意味がないと分かっているのだろうか?
・・・ん? 徹底抗戦?
もしかして、このコロニー落としは徹底抗戦を訴える為の工作か?
木連がコロニー落としを企んだとなれば、地球人が怒りを覚えるのも必至。
後はその怒りを煽ってしまえば・・・。
なるほど。そう考えれば辻褄が合う。
・・・自作自演してまで戦争がしたいのか。あいつらは。
クソッ。胸糞悪い。

「そうならこの時点で既に目標は達成か」

地球側がコロニー落下作戦を確認した。
それだけでこの工作は成功といって良い。
地球防衛ラインが稼動すれば理由を問われるだろうし、隠そうともしない筈。
既に術中に嵌ってしまったという訳か。

「また後手に回ってしまったか」

本当に後手後手で対応しなくちゃならない事ばかりで困る。
・・・だが、今の俺に出来る事は確実にこのコロニー落下を防ぐ事。
まずはこれをしっかり終わらせよう。考えるのはそれからだ。

ドゥビューン! ドゥビューン!

単純だが、数が多い。
一機ずつ対応していたら無駄な時間が掛かる。

「一気に殲滅してしまおう」

でも、フルチャージショットだとどの方向に撃っても味方やコロニーに当たってしまいそう。
味方を撃つなんてありえないし、コロニーに当たったら准将が五月蠅いだろう。
味方に損害を与えず、コロニーに命中させないように敵機を殲滅。
厳しい前提条件。だが、それでも、この機体であれば・・・。

「セレスちゃん。ニバレスを俺の後ろに距離を離して付いてこさせて」
『・・・分かりました。でも、何を?』
「何をって? 簡単な事さ。一気に殲滅する」
『・・・え? コウキさん?』
「いいから。俺を信じて」
『・・・分かりました』

ごめんね。セレス嬢。ちょっと無理するかも。
でも、これで移動限界距離の壁を越えられる。

「アルダート大尉。敵機を一気に殲滅します。距離を取りますが、ご心配なく」
『了解した。信じて良いんだな?』
「無論です。こちらに近付かないようにしてください」
『分かった。健闘を祈る』
「はい」

アルダート大尉に報告し、作戦実行に移る。

「アザレア。敵が密集していて、かつ、
 グラビティライフルの射程に味方がいない場所を探してくれ」
『はい。マイマスター』
「ちなみに、全方位だぞ。縦も横も上も下も」
『え?』
「いいから。頼んだ」
『は、はい』

折角グラビティライフルを二丁も持っているんだ。
まとめて屠ってやるさ。

『マイマスター。ここです』

機体内のレーダーに場所が映し出される。
見事なまでの俺の指示した通りの場所だ。
周囲は敵に囲まれ、多くの敵が密集している。

「よくやった。アザレア。期待通りの場所だ」
『はい。しかし、一体、何を・・・』

お前でも分からないか。
まぁ、無謀と言えば無謀。だが、それ以上に有効だ。

「突っ込む」
『・・・了解。援護します』

ん? 驚くか否定すると思ったのだが。

「反対しないのか?」
『私はマスターに付いて行くだけ。全力で貴方の期待に応えます』

まったく。俺には勿体無いパートナーだな。

「ウイングブースター展開」
『ウイングブースター展開します』

背面に広がる翼。
正に漆黒の空を翔ける羽根と成る。

「作戦ポイントに向けて一直線で飛び込む」

グラビティライフルを腰に備え付け、ディストーションブレードを展開。

「障害はぶち抜く。立ち塞がる壁は絶ち斬る。俺の前にいる奴ら全てを殲滅する」
『了解! マイマスター!』
「ブースター最高出力。DF最高出力。行くぞ! あらん限りの速度で突破する!」
『はい! マイマスター!』

ウイングブースターを始めとした機体に取り付けれらたブースター全てが火を吹く。
同時に機体の前方に現段階で出せる最高の強度を持つDFを展開。
自身を弾丸とし、全てを貫き、作戦ポイントへ到着してやろうじゃないか。

「ハァァァァアァァァァ!」

叫び、穿つ。
蔓延る雑魚はそのまま突っ込み、DFにて破壊。
どうしても立ち塞がる強大な敵は最大速度のままディストーションブレードで断ち切る。
速度は落とさず、全ての動作を狂わさずに行う事は非常に難しい。
だが、決して不可能じゃない。やるさ。やってやる。

「ウォォォォォッォォ!」

目標ポイントまで一直線。
ニバレスを間に挟んだ限界稼動距離ギリギリの場所。
そして、俺が通ってきた道以外が敵で囲まれた絶体絶命ポイント。
四面楚歌? 孤立無援? 袋小路? 窮地?
ふっ。違う。そんなものじゃない。
これは逆転の一手。そう、敵を殲滅できる戦況を変えるだけの効果が期待できる策。
何度でも言おう。何度だって言ってやる。
死中に活あり。ピンチこそがチャンス。
その逆境を覆す力がこのad-ASにはある。

「集まれ。集まれば集まる程、俺にとって好都合だ」

突如現れた俺に対して、敵機が集まってくる。
警戒しているのか、攻撃はしてこないが、完全に包囲されていた。
無論、俺にとっては好都合だ。

「グラビティライフル発射準備」

両手にグラビティライフルを構え、そのまま左右に突き出す。
形としては両手を広げて、グラビティライフルを突き出すというもの。
それだけじゃ左右の敵を屠るだけだろう。
だが、それではここまでやって来た意味がない。
俺の狙いは・・・。

「全方位殲滅。さぁ波に呑まれろ」

グラビティライフルを発射。
単発式ではなく、連続的に放たれる幅の厚い攻撃。
そして・・・回転。
自身を中心に全方位を攻撃する為のローリング。
威力もさる事ながら、その攻撃の範囲は殲滅射撃仕様に相応しい。

「包囲したのが間違いだったと知れ」

単純な横回転だけではない。
縦回転や斜め回転を付け加える事で文字通り全方位を攻撃できる。
これにはそこまでの速度は要求されない為、凄まじいGが襲う事はないが、目は回る。
一応、訓練を繰り返して慣れてはいるが、完全に目を回さないまでにはなっていない。
そんな事もあり、一度で全てを撃破する必要があるのだ。
撃破後に生き残りに攻撃されて死亡なんて馬鹿らしいからな。

「・・・殲滅完了」

数多の回転をこなし、周囲に蔓延る敵機全てを殲滅した。
これこそがアドニス殲滅射撃仕様の真骨頂。
対群でこの機体に勝る機体は存在しない。
今ならそう言い切れる。

「アザレア。ヒナギク周辺に戻るぞ」
『はい。マイマスター。お疲れ様です』
「お前もな」

周囲全てを掃討しようと完全に滅ぼした訳ではない。
再び遊撃隊として働かなければ。

「戻りました」

途中、展開されていたニバレスを回収しながら、アレス隊に合流する。
ニバレスを避けるように射撃するのはそれ程苦労しなかった。
それぐらいの精密射撃は出来る。
ただ回るだけのような考えなしの行動はしませんよ。はい。
ちなみに、立ち塞がる敵機もおらず、簡単に帰艦できました。

『見させてもらった。あれがナデシコの切り札か』
「はい。大分削れたと思います」
『よくやってくれた。先程の貴官の攻撃で作戦本部は突入を決めた。既に突撃しているそうだ』
「そうですか。分かりました。援護に回ります」
『ああ。(あれだけの高威力。コロニー破壊を豪語するだけある。あれならば・・・)』

アルダート大尉の言う通り、後方から数多のステルンクーゲルが飛び出していく。
・・・コロニーの軌道方向を操作するという作戦が成功するならそれで良い。
成功するように俺も全力で援護しよう。
でも、万が一、そう、万が一にも制御掌握に失敗した時、その時こそ・・・。

「フルチャージショットで撃ち抜く」

その為に俺はここにいるのだから。
次々とコロニーへと突入していくステルンクーゲル。
その姿に期待しつつ、内心で次へと備える自分がいた。
何故か、俺の出番がやってくるような、そんな気がしたから。
杞憂であればそれで良い。だが、万が一に備える事こそ軍人の心得。
備えずして被害を受けるのであれば、備えて無駄に終わった方が何倍も良い。
嫌な予感が頭の中で木霊する中、今はただ眼の前の敵を屠る事しか出来なかった。




最早自重の欠片なし!
いや、これ、やりたかったんです。許してください。
ローリンググラビティライフル。あれ? なんか違うぞ。はい。スルーで。

結果としてコロニー撃ち抜きは採用されず。
まぁ、今後の展開次第ではあるでしょうが。
アルダートのフラグ回避など注目される後半戦ですが、
またちょっと期間があきそうです。ご勘弁を。
それでは、次回もよろしくお願いします。


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