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大凡二ヶ月半。
大変お待たせして申し訳ございません。
ようやく完成しましたので投降させて頂きます。
いやぁ、難産でした。
そして・・・納得していただける自信がありません。
第九部 ~始まる最後の戦い~
第百四十五話





「おし、出来た。後はこいつをあいつらにぶち込むだけだ」
『マスター。それは?』
「マエヤマ・コウキ特製“並列思考”の基本プログラムだよ。
 これをバッタ共に打ち込む事で・・・奴らには一体二役、いや、一体三役はこなしてもらう」





「希望に変えるだと? だが、流石のお前でも・・・」
「人手不足、孤立無援。確かに俺達の前に立ち塞がる壁は限りなく高い。
 でも、陳腐な言葉だけど、あえて言わさせてもらいます。越えられない壁はない」

その壁を作り出したのが人なら尚更な。
人が作り出した壁を人が乗り越えられない訳がないだろ。
あくまで敵は人であり、絶対に敵わない相手という訳では決してないのだから。

「口ではなんとでも言えるさ」
「アキヤマさん・・・」

その諦めきった覇気のない笑み。
すぐに変えてみせます。

「どれだけ希望を唱え続けようと現実として人手が足りないのだ。
 まさか、お前は今すぐに俺達の数を増やしてみせようというのか?」
「・・・確かに今の俺達には人手が足りません。それは紛れもない事実です
 そして、一介の地球人でしかない俺には、今すぐに味方を増やすような事はできません」

神ではない我が身では瞬く間に味方を増やすような離れ技はできない。
ましてや、実質的敵地である木連なら尚更な・・・地球なら出来たかのかと問われても困るが。
要するに、俺が何をほざこうが、何を閃こうが、人手不足なのは変わりようのない事実であるという事。
特に防衛戦という大規模な作戦を前にして、たかがこの程度の人数では心細いにも程がある。
・・・それは否定しないさ、否定しようがないからな。
でも、だからといって、諦められるかっての。
パンがないならお菓子を食べればいい、とは言わないが・・・。
代用が効くのならその代用品・・・いくらでも用意してやるさ。
代用品の方が本物より良質、なんて事もありえない世の中じゃないしな。

「ですが、“人手”が足りないだけで・・・“手”はいくらでもあるでしょ?」
「・・・何が言いたいんだ? コウキ」
「人がいなければならない最低限の場所にのみ人手を集中させ、
 それ以外の所は全て無人兵器、もちろん、弄りますが、奴らに任せます」

バッタ一体で敵の機体一体の制御を奪えた。
それなら、バッタ一体に防衛兵器の一つぐらい任せられる筈だ。
散々酷評されるバッタのソフト面だが、単純な作業に関しては優れているとさえ思える。
敵、味方を識別して、敵のみを狙って攻撃し、更には敵兵器の制御すら奪ってしまう。
ほら、充分優秀だろ。今の状況、それ以外の機能は必要ないと言い切ってもいい。

「だが、それにしたって人手は足りまい。
 無人兵器にだって限りがある。この状況を賄えるだけの数はないぞ」
「アキヤマさん、貴方を含めて、シラトリさん、ツキオミさんの役職は何ですか?」
「どういう意味だ?」
「答えてみてください。それが俺の解答になります」
「・・・艦長だが?」
「それ以外にも兼職しているではないですか。
 艦長にパイロット、もっといえば前線指揮官や参謀といったものまで」
「ッ! もしや、お前は・・・」

そう、そういう事ですよ、アキヤマさん。

「バッタ共に一人二役、いや、それ以上を求めようというのか」
「その通りです、アキヤマさん」

一人の人間が複数の役を同時にこなすように、
一体のバッタが複数の役をこなしてくれれば、実人数は変わらなくても実質的に手は増える。

「だが、それはあまりにも無謀ではないか? 処理が追いつかなくなる」
「時代は進化し、今のバッタは以前とは比べ物にならないぐらいソフト面が充実しています。
 ですが、それは様々なオプション機能が付いたという事。それらを削れば処理は可能となりましょう」
「それは性能を落とすという事と等しいではないか」

尤もな疑問である。
そして、それを否定する事はできない。
だが・・・。

「今、この状況に必要な機能は、敵と味方を判別して敵のみを攻撃するという点、ただそれだけです。
 わざわざ不必要な機能を搭載する必要はありません。言わば、状況に合わせて合理化を図っただけです」

確かに様々なオプションが備わったものの方が優秀であり、そういう意味では性能も高いだろう。
だが、性能が高いからといってそいつを使うのが最善という訳ではない。
たとえ性能が劣ろうとも、ただ一点だけでも並ぶものがあり、それが状況に適していれば・・・。
使わない手はない、それによる恩恵があるなら尚更な。

「今、我々が必要とするのは一人の天才より百人、いえ、十人の凡才です。
 多少、性能を落とそうが、数を揃えられるのであれば、迷うまでもありません」

性能が落ちるのなんて百も承知だ。
だが、今の状況は、あえて性能を落としてでも数を揃える必要がある。
性能を意識した結果、人海戦術で敗れるなんて事になったら、元も子もないのだから。

「そうか。それならば、コウキの言葉を受け入れよう」
「ありがとうございます」
「だが、バッタで他の機器を同時制御なんて出来るのか?
 そんな便利なものがあれば、木連はとっくに導入していると思うのだが・・・」
「だからこそ、我が秘策なんですよ」





ドォーン! ドォーン! ドォーン! ドォーン! ドォーン! 

「遂に始まったか。どうにか凌いでくれよ・・・。この映像こそが切り札なんだから」
『マスター。この基本プログラムは私が責任をもって打ち込んでおきます。
 バッタ一体に端子を繋ぎ込み、ネットワークを介せばまとめて処理できますから』
「そうか。それなら、アザレア、頼む。完了したものから順次戦場に投入してくれ」
『了解です。ですので、マスターは』
「ああ。援軍交渉といこうか。今、それができるのは俺だけだからな」





「コウキ。お前の策が成功すれば確かに戦力はある程度確保できる。
 だが、それだけではジリ貧だぞ。敗北を先延ばしにする事はできても勝利は掴めない」

そう、人数を揃えただけでは駄目なのだ。
あくまでその場凌ぎに過ぎず、まだ勝利条件は整っていない。
人数が揃ったというだけで、未だなお、対等とはいえない状況だな、うん。
・・・この状況を打破するには、やはり・・・。

「援軍の存在が必要になってきますね」

コクリッ。

その場にいる全ての人間が頷く。
それだけ、皆が援軍を重要視し、渇望していると言えよう。
今の状況をひっくり返すには、自分達だけではダメだ、援軍がなければ、と。

「援軍が来る。それはもちろん、戦力の増加もあるが、何より敵の精神を揺さぶれる」

アキヤマさんの言う通り、援軍は戦力の増加という意味を持つだけではない。
むしろ、後者である精神の揺さぶりの方が大きな意味を持つと言っていいだろう。

「なんとか戦線を維持した上で援軍が来てくれれば・・・勝機を見い出せよう」

攻め続けても切り崩せず、苛立ち、焦り等が出た頃に颯爽と現れる援軍。
これ、正に理想、まぁ、そう都合良くいくとは思ってないけどさ。

「だが、残念ながら、援軍として駆け付けくれそうな部隊は全て前線にいる」

諦めのため息がところどころから聞こえてくる。
・・・まぁ、それも仕方のない事かもしれない。
現在、木連軍の前線指揮はカグラ大将が執っている。
大将が前線ってどゆこと? と思わなくはないが、何かあったんだろうな、きっと。
そのあたりの経緯は分からないけど、大事なのは前線にカグラ大将がいるという事だ。
要するに、カグラ派の人間は殆ど前線に行ってしまっているだろうって事。
もちろん、木連に残って、裏方の仕事、
兵站もどきって言ってもいいかな、そんなのをしている人もいるだろう。
だが、正直それだけの戦力では不十分だ。
全てかき集めた所で今の状況を打破する戦力にはなるまい。
今、俺達に必要とされる援軍は、数だけでは駄目だが、質だけでも駄目だ。
だからといって、その両方を兼ね揃えていればベストという訳ではない。
欲張り過ぎかもしれないが、これだけ追い詰められている現状、それだけでは不足。
必要とされるのは・・・普通じゃない“何か”を持っている者達。
そういう意味では“あの人”でもいいんだが・・・今はこちらの方が意味を持つだろう。

「味方がいなければ作ればいいんです。今この瞬間にでも」

何を言っているんだ? そんな声があちこちから聞こえてくる。
そりゃあそうだ。明らかに矛盾した物言いだからな。
さっきは味方の数を増やせないと言ったのに、今、作ろうと言うのだから。
でも、それは言葉のニュアンスを履き違えているだけ。
だから、ほら、そんな中でも数名だけは冷静な目でこちらを見ている。
流石と言えばいいのか、それはあの三人だ。

「増やす、ではなく、作る、そう言ったのだな? コウキ」
「援軍とは古来から味方から送られるもの。
 だが、その物言い、お前の求める援軍は味方からのものではないという事か」
「・・・敵、もしくは中立の者を味方としてしまおう。そういう事ですね?」

彼らの言葉に頷く。
そう、先程も同じような事をしたじゃないか。
敵の機体を奪い、味方として扱う。
その有効性は充分実証されているだろ?
単純な計算で示せる。味方が+1。敵が-1。それなら、その差は1-(-1)で2だ。
厳密に言えば、こちらも一体を使って敵の一体を奪っているのだから只の+1な訳だが・・・。
それでも、+1は+1だ。敵よりも優位に立てる事は間違いない。
そして、次の策、それを成し遂げさえすれば・・・。

「狙うは草壁中将。彼を味方に付けます」

敵がいなくなる。文字通り、無敵って訳だ。





「く、草壁中将! 急ぎモニタを!」
「何だというのだね? そのように慌てて」
「急いでください!」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「これは・・・」

『現在、ここ、グリーンベースは木連艦隊に偽造した何者かに襲われています。
 この放送を見ている、聞いている皆様、至急援軍をお願いします。このままでは・・・』

「・・・何だと? グリーンベースが襲われている?」
「もしや、あの娘の居場所が敵方にバレて、それを奪還しに!? 司令、急ぎ―――」
「落ち着け」
「ハ、ハハッ!」
「急いで鈴木司令に連絡を取るんだ。状況を把握したい」
「そ、それが、先程から何度も試みているのですが・・・」
「途絶えている・・・か。敵の工作か、それとも・・・裏切りか」
「裏切り!? 鈴木司令に限ってそんな事―――」
「ふむ。まぁいい。今は動くな。いつでも出れるよう準備だけはさせておけ」
「ハッ!」

ダダダダダダダダッ!

「・・・どういう事だ? 先程、鈴木からは三羽烏を捕らえた、と」
「只の鳥ではなかったという事でしょう」
「北辰か」
「ハッ」
「奴はどうした? 仕留めたか?」
「・・・申し訳ありません」
「そうか。それならば、仕方あるまい。
 お前でも成し遂げられない難題という事なのだろう」
「・・・ハッ」
「実際に戦ってみてどうだった? 物量で押し込めそうか?」
「相当な手練です。ただ闇雲に襲うだけでは難しいでしょう」
「お前がそこまで言う程の奴という事か・・・。北辰」
「ハッ」
「引き続き、奴の監視を続けろ。但し無闇に攻撃は仕掛けるな。警戒される」
「御意」
「して、先程の言葉はどういう意味だ?」
「奴らは捕らえられていた。言わば、篭の鳥。
 しかし、篭に囚われたからと安心していい輩ではなかったという事です。
 そもそも奴らは只の鳥ではない。奴らは三羽烏。ズル賢く、たくましい屈強な鴉です」
「・・・・・・」

『敵方の狙いは分かっています。ここに保護されていた重要人物を連れ去るつもりなのでしょう』

「何を言い出すつもりだ? まさか・・・」

『白鳥・雪菜。以前連れ去られ、その後我ら優人部隊によって無事に保護された白鳥中佐の妹です』

「なんという事だ。これは上層部のみの極秘事項。それを・・・」
「戦場の光景と音声のみの映像。そして・・・加工されている音声。
 この発言はスズキのものではないでしょう。恐らく・・・三羽烏の策士、秋山・源八郎」
「・・・先手を打たれた。そういう事か」
「・・・ハッ。恐らくもうあの娘は確保されていると見てよいかと」
「だろうな。そうでなければこのような事はできん。何をやっておるか、鈴木は」

『二度もいたいけな少女を狙うとはなんという非道。この行為を許すわけにはいけません!』

「・・・本来であれば自身の立場であっただろう襲撃する側。
 それを策によって擦り付け、襲撃される側へと立場を変えたという訳か。
 確かに今の状況、包囲している鈴木こそが悪そのものであり、襲撃している側だ」

『ですが、それにはあまりにも我々は戦力不足。皆様の御力を、正義の心をお借りしたい!』

「そして、この状況で立ち上がらない者は木連には存在しない。
 正義という言葉に踊らされる単純な輩ばかりであり、同時に全てを鵜呑みにする馬鹿ばかりなのだから」
「北辰!」
「ハッ。失言でした」
「・・・だが、否定はできまい。今、出撃を否定する者は私だとしても悪となる」
「・・・・・・」

プンッ。

『草壁中将。失礼します』
「・・・何だ?」
『出撃準備が整いました。いつでも出撃できます』
「そうか。ご苦労だった」
『如何しますか? 実は先程から多くの部隊から出撃させてくれ、と―――』
「分かっている。すぐさま救援に向かい、基地内の者を保護しろ」
『ハッ! それでは早速そのように―――」
「ああ。それと」
『あ、はい。なんでしょうか?』
「基地と白鳥・雪菜を護りきった勇者達に直接声をかけたい。
 保護した基地の人間は必ず私の下に連れてこい。いいか、必ずだぞ」
『直接中将に声をかけていただけるとは・・・。
 “スズキ司令”達も喜ぶ事でしょう。任せてください。必ず中将の下へお連れします』
「ふむ。では、頼むぞ」
『ハッ! 失礼します』

プツンッ。

「・・・奴らの狙いは・・・戦線の混乱か」
「恐らくは」
「部隊が到着した所で味方が誰か分からずに疑心暗鬼に陥る。
 その結果、戦線は混乱し、奴らに好き勝手に動ける隙を与えてしまう」
「そして、その隙を突いて戦場から逃げ出すつもりなのでしょうが・・・」
「そう全てが思い通りに動くとは思わないでもらいたいものだな」
「まさに」
「だが、ここまでの筋書きは中々のものだと思わないか、北辰」
「ハッ。流石は秋山、いや、三羽烏とでも言っておきましょうか」
「ああ。してやられたよ。間接的にとはいえ、まさか私を味方につけようとはな。
 木連の将来を背負う者としては頼もしい限りだが・・・惜しいものを失う事になりそうだ」
「では?」
「ああ。奴らには脱落してもらおう、永遠にな」
「御意。では、白鳥・雪菜は如何しますか?」
「愛する兄を失った悲劇の娘。そして、その悲しみのあまり・・・」
「なるほど。全てに片を付けてしまおう、と」
「何の事だ?」
「さて、何の事でしょう?」
「・・・まぁいい。北辰。お前も万が一に備えて現場へ向かえ。
 最悪・・・お前が始末してしまっても構わん。奴らは決して逃すな」
「ハッ。仰せのままに・・・して、奴はどうするのです?」
「あいつか。あいつには・・・我らが栄光の礎となってもらう」
「・・・御意」





「草壁中将を味方に付ける? 何を言っているんだ?」

唖然、困惑。
この場にいる誰もがそんな感じ。
そりゃあそうだ。
言わば、敵の大将を味方につけてしまおうというのだから。
でも、それは決して不可能な事ではない。
少なくとも俺はそう思っている。

「厳密にいえば、協力せざるを得ない状況を作り出します」

もちろん、草壁に頭を下げてお願いする訳ではない。
そんなんで奴が言うことを聞くとも思えないしな。
でも、協力せざるをえない状況を作り出す事はできる筈だ。
例えば・・・。

「俺達を助ける事を否定すれば自らが悪となる環境」

正義、正義と謳う木連の事だ。
正義の行いを妨げる者は草壁といえど許されない。

「要するに、何をするというのだ?」
「簡単ですよ。今ある状況をそのまま伝えればいい、そのままです」





「な、何だと!? 小娘の姿がない!?」
『ハ、ハハッ』
「貴様! 何をやっておったか!?」
『も、申し訳ありません!』
「すぐに探せ! 見付からなければ貴様の命はないぞ」
『ハ、ハッ!』

プツンッ。

「父上。貴方らしくない。何を慌てているのです」
「お前か。だが、小娘は白鳥を操る為の手綱であり首輪。
 もし小娘が奴のもとへいるのであれば、奴を手懐ける事はできなくなってしまう」
「操ることのできないペットなど切り捨ててしまえばいいのですよ。
 奴の変わりなどいくらでもいるでしょう。父上も草壁中将も白鳥を過大評価しすぎです」
「ふむ。だがな、奴に利用価値があることは確かだ。
 ただ殺す事は簡単だが・・・それを利用しない手はあるまい」
「私は、そうは思いませんね」
「ほぉ。どういう事か説明してみろ」
「奴を生かして操る利に匹敵するぐらい奴を殺して利用する利があるという事です」
「奴を殺して利用する利、か」
「ええ。それに・・・奴を殺しても白鳥・九十九を殺さなければいい」
「・・・実を殺し、名を残すという事か?」
「流石父上。鋭い眼をお持ちです」
「なるほどな。それは確かに利用しやすいかもしれん」
「はい。既に奴らにとっては詰んでいるに等しい。
 それならば、裁きを下してやるのも慈悲なのでは?」
「ふむ。最早、奴らに反逆の意がある事はどう繕おうとも否定できまい。
 時間の猶予は残り僅かであるのに、それでもなお、投降する様子をみせんのだからな。
 若き命を潰すのは心が痛むが・・・奴らの事を思えば、ここで死ぬのが最上の幸せだろう」
「仰るとおりかと」
「残念極まりないが、木連の若き英雄達はその正義心故に自害して果てた。
 奴らに期待している中将には心苦しいが、そうお伝えするしかあるまい、残念ながらな」
「ええ。ですが、ここで木連の英雄が死んだとなれば、
 国民はもちろん、若手ベテラン問わず軍人も士気を落としかねません。
 死者の名を騙るのは気が引けますが、これも戦争に負けぬ為、致し方ないかと」
「ああ。致し方ないな」
「そして、愛する兄を失った妹もまた、儚い命を投げ捨ててしまった。
 ですが、それはわざわざ公表する必要のない情報。しかと、緘口令を引くべきでしょう」
「無論だ」
「悲しい事です。また我々木連は英雄を失ってしまう」
「戦争に犠牲はつきものなのだよ。悲しんだ所で彼らが戻ってくる事はない」
「まったくもって・・・戦争は理不尽なものですよ」
「・・・・・・」
「・・・さて、約束の時間まで残り数分となりました。
 せいぜい今はつかの間の再会をゆっくりと楽しんでください。
 残念ながら、貴方達の命もまた、残り数分しかないのですから。
 恨むのならば私達ではなく、愚かな己を、選択を誤った己を恨むのですね」





「無人兵器によって戦力を充実させ、欺く事によって援軍を得る。
 そこまでは分かった。だが、コウキ。最終的にどうするつもりなんだ?」

最終的にどうするつもりかって?
そんなの分かりきってる事じゃないですか。

「俺達の目的は何ですか? ツキオミさん」
「ん? 目的だと? それは迫り来る敵を返り討ちに―――」
「違いますよ、それは違うんです、ツキオミさん。
 その答えは今の状況になってしまったから結果的にそうなっただけです」
「どういう意味だ?」
「本来の目的は違うという事ですよ」

そうじゃない筈。
状況に流されて、選択を、目的を誤ってはいけない。
元々、俺達がここに来た理由は一つ。

「我々の目的は―――」
「雪菜を助け出し・・・」
「この場から離脱する事です」

迷いなくそう答えるシラトリさんとアキヤマさん。
頼もしい限りだ。大局を見誤っていない。
・・・別にツキオミさんの事を馬鹿にしている訳じゃないぞ。
彼は理論派の人間ではない。
それはどちらかというアキヤマさんの分野であり、
ツキオミさんは理論ではなく感覚といった感じの人だ。
ここぞという時の感覚は多分、三羽烏の中で一番。
俺達はそれを頼りにしているのであり、こういうのは畑違いという奴だろう。

「その通りです。敵を殲滅するとか、迫り来る敵を返り討ちにするとか。
 それは全てその目的の副次的なものに過ぎません。あくまでも目的はユキナちゃんです」

ユキナ嬢さえ助け出す事ができれば、後はどう終わろうと構わない。
もちろん、三羽烏全員を生かす事も前提だが。

「それならば、我々がする事は一つ」
「この状況からの早期離脱・・・ですね」

シラトリさんの言葉に頷く。

「早期離脱。それを成し遂げる為には幾つかの前準備が必要になります」

周囲を囲まれているこの状況。
全てを殲滅する事が不可能なのは間違いない。
そうなれば、一点突破、層が薄い所を貫くしかないだろう。
とはいえ、ただ層が薄い所を狙えばいいという訳でもない。
薄いと見せかけて、それが罠でないとは限らないのだから。
それなら・・・どうするか?
簡単だ、自分達で自分の道を作ればいい。
即ち・・・敵方を誘導し、道を切り拓く!
しかしながら、その肝心の方法がなぁ・・・。
実は思い付いていなかったりします。
でも、まぁ、ここには頼りになる人達がたくさんいるんだ。
彼らが思いもよらない名案を出してくれるかもしれない。
ここは素直に頼ろう。

「一つは囮。これには無人兵器を当てます」

あれだけ数を揃えれば、質はともかく、囮としては充分な戦力となるだろう。

「なるほど。無人兵器を中心とした部隊展開としたのはそういう意味もあったのだな」
「え?」

何の話ですか?

「必要最低限な所にのみ人員を配備し、他の所は無人兵器に任せる。
 この必要最低限というのは基地を機能させる上での必要最低限だ。
 即ち、基地を破棄すると決めた瞬間から、そいつらは役割的拘束から解かれる」

え、えっと・・・確かにそうだけど・・・。

「後はそいつらをすぐさま回収し、残る基地と無人兵器を囮とすればいい。
 無人兵器を中心とした部隊展開は人員の早期回収を目的とした布石という訳だ」
「・・・流石です。まさか、そこまで考えての事だったとは・・・」
「改めて感服したぞ。俺達だけではそこまでの事は考え付かん」

・・・・・・んんッ。

「も、もちろんです。これにより撤退までの段取りを素早くこなす事ができます」

無人兵器を多用するのにはそんな意味もあったりするのだ、うん。
・・・そこまで考えてなかったっての・・・。
ま、まぁいいや・・・気を取り直してっと。
コホンッ。

「ですが、それだけでは足りません」

無人兵器による囮、いや、殿とでもいおうか。
それだけでは、敵の手を止める事はできても、目を欺く事はできない。
今、必要なのは・・・敵を誘導する為の何か。
その何かさえあれば・・・道は切り拓けると思うのだが・・・。

「奴らに隙を作らせる何か。それが必要なんです」
「隙を突くのではなく、隙を作る・・・か。
 うむ。俺は賛成だ。今の状況を鵜呑みにしてはならん」

アキヤマさんの賛同を得られたようで一安心。
でも・・・。

「でも、その肝心な方法が思い付いていなくて・・・」
「・・・・・・」

おいおい、ここにきてそれかよ、的な空気を感じる。
まぁ、散々仕切っておいて、ここにきての、この体たらくだ。
そう思われるのも仕方ないだろう。
いやぁ、無言のプレッシャーにキツイものを感じるよ。

「おいおい、コウキ」
「アキヤマさん・・・」

貴方も呆れて・・・ん? 笑顔?

「お前は優しい奴だな」
「へ?」

どういう事?
何故に優しい?

「最後の最後にようやく俺達に出番を与えてくれた訳だ。
 このまま全てお前の策で終わってしまうかと思っていた所だよ」
「えっと・・・」

別にそういう訳ではないんですけど・・・。
ただ思い付いていないだけで・・・。

「なぁ、九十九、元一郎。コウキにばかり活躍されては面目が立たんよな?」
「ええ。もちろんです。雪菜を救出してもらい、困難すらも解決してもらう。
 これでは、私達が来た意味がないというものです。最後ぐらい役に立たねば」
「まったくだ。感謝しよう。ようやく出番を与えてくれたのだろう?」
「皆さん・・・」

フォローしてもらっちゃった訳だ。
まるで最後に道化を演じたかのように・・・。
・・・本当に、気前の良い人達だよ。

「という訳で・・・後は俺達に任せてもらおう。
 なに、俺とてお前の話を聞きながら考えをまとめていた所だ」
「それなら!」
「ああ。効果的な囮を用意しよう。それもとっておきのな」





「さて、時間となりましたが・・・音沙汰はありません。父上。最終勧告を」
「いらんだろう。我々は谷底に今にも落ちんとしている者達に手を差し伸べた。
 その手を振り払おうと受け入れようとそれは奴らの自由だが・・・自由だがな、
 振り払われた以上、再度手を差し伸べてやるほど、お人好しではないのだよ、私は」
「・・・分かりました。それでは・・・」
「うむ。慈悲をくれてやれ。完膚なきまでな」





「その囮とは?」
「俺が俺と認識されるもの、そのものだ」





「流石は三羽烏と言っておこうか。これだけの差がありながら、まだ持ち堪えているとは」
「父上。奴らに時間はかけていられません。更なら援軍を呼びましょう」
「そうだな。さっさと仕留めてしまおう。・・・ん? 何だ?」
「いかがしました? 父上」
「通信が繋がらん」
「通信が繋がらない? またしても問題が生じたのですか?」
「まったく・・・今日は嫌な日だ。整備班に連絡し、復旧と原因追求を急がせろ」
「ええ。・・・おや、どうやら艦内との通信も途絶えているようです。通信が送れません」
「クッ。一体なんだというのだ? すまんが、お前は直接整備班の所に赴き状況報告を頼む」
「分かりました。失礼します」

シュイン。

「一体何だというのだ? このような時にこんな問題が生じるとは・・・」
「艦長! レーダーに反応が。木連の艦隊が駆けつけてくれたようです」
「ほぉ。それは好都合。恐らく、草壁中将が援軍を寄越してくれたのだろう。
 状況を知っているのは中将だけだからな。よし。他艦と連携を取り、一網打尽に―――」

ダンッ! ダンッ! ダンッ! ダンッ! ダンッ! ダンッ! ダンッ!

「な、何だ? 何が起きた!?」
「か、艦長! 木連艦隊が基地ではなく、こちらを攻撃してきました!」
「どういう事だ!? 何があったらこんな事が起きる! 急いで通信を送れ!」
「だ、駄目です! 通信が開けません!」
「クッ。どうしてこう嫌な事が重なる? ・・・もしや、これらは偶然ではなく・・・」
「ど、どうしますか!? 艦長!」
「全ては誰かによって仕組まれていた・・・そういう事か」
「艦長!」
「・・・木連艦隊は適当に受け流せ。我々の相手は三羽烏。
 奴らは今こそ動きだすだろう。奴らから目を離すな。絶対に逃してはならん」
「ハッ!」
「・・・誰を狙い、何をするのか決めるのは艦長である私だ。
 だが、その決定に従い、何かを成し遂げるのは現場にいるパイロット達。
 そのパイロット達に指示が送れない今、我々に指揮系統なんてものは存在しないに等しい。
 恐らくこの勝負・・・我々の負けだろう。指揮が執れていない部隊など新兵の集まりにも劣る。
 もう少し早くこの問題に気付いていれば対処のしようがあったというものの・・・無念極まりないな」



会話文が多い・・・。
これじゃあ描写が伝わりにくくよろしくないですよね。
・・・反省します。

次もできる限り早く執筆していきたいと思いますので、
ゆっくりお待ち頂けると幸いです。


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