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大変お待たせしました!
ようやく環境が整いましたので、投稿を再開します。

なお、完結させると豪語した身ですが、
忙しい日々を送り、あまり書けませんでした。
大変申し訳ありません。
今後もマイペースに執筆していきますので、
暖かい目で見守ってくださると幸いです。
それでは、どうぞ!
第九部 ~始まる最後の戦い~
第百三十五話




SIDE MINATO

「アキトさん!」

夜天光、だったかしら。
その機体と互いに一歩も譲らない戦いを繰り広げるアドニス殲滅射撃仕様。
アキト君にとっては・・・因縁の相手。

「ルリ。落ち着いて」
「ですが!」
「大丈夫。アキトはもう・・・乗り越えたから」
「・・・ラピス」

ルリルリとラピラピ。
アキト君を想うからこそ、今の状況には人一倍思う所があるんでしょうね。

『おい、艦長。保護した木連の奴らはどうすればいいんだ?』

ウリバタケさんからの通信。
どうやら無事に二人を保護できたみたい。
とりあえず一安心といった所かしら。

「空いている個室へ案内してあげてください」
『・・・同室にか? それとも、別々にか?』
「別々にお願いします」

あえて分けるっていうのね。
・・・きっと艦長なりに考えがあるんだわ。

『了解した。監視は?』
「ゴートさん。保安班から何人かお願いできますか?」
「了解した。すぐに手配しよう」
「お願いします」
「拘束は?」
「なしで」
「・・・危険ではないのか?」
「大丈夫ですよ。木連人は正々堂々が信条ですから。
 本来なら、監視も付けないつもりでしたが、一応、念の為に」
「・・・分かった」
「ウリバタケさん。以上です。すぐに迎えを寄越しますので」
『うし。分かった。それまでは若い奴らに見させておくよ。
 しっかし、相変わらず大胆な奴だな、艦長。
 俺が知ってる話なら、こういう時は大抵独房に放り込んでおくんだが』
「捕虜といえども礼儀は通すもの。軍人とはそうあるべきだと思います」
『ヘッ。そいつは確かに軍人らしい軍人だな』

男臭い笑みを浮かべるウリバタケさん。
思わずその笑みを釣られてニヤリと笑ってしまう。

「艦長らしい判断よね」

なんか誇り高いって感じでカッコいい。
艦長の判断、私も同感よ。

「艦長。彼らはいつ解放するんだ?」
「戦闘終了後です。今は戦闘に集中しましょう。彼らに話を聞くのはその後です」
「了解した」

そうよね。まずは目の前の事をさっさと片付けなくちゃ。

『ブリッジ、聞こえますか?』

ん? イツキちゃん?

「何でしょうか? イツキさん」
『艦長。突然申し訳ありません。ニバリスの出撃を要請したいのですが・・・』
「ニバリスを? どうしてですか?」
『今から敵戦艦へ奇襲を仕掛けようと思うのです。ですが、その為には距離が足らず・・・』
「ニバリスが必要になると?」
『はい。敵艦は私達が必ず仕留めてみせます。ですので、フェザンツは引き続きナデシコの援護を』
「何を考えている! 艦長の指示もなしに勝手な事を! 独断専行だぞ! 艦長の指示を―――」
「分かりました。ラピスちゃん。ニバリスをお願い」
「了解」
「艦長!」
「現場の判断を信じます。ゴートさんは彼らの支援を」
「・・・了解した」

ゴートさんの意見に対して毅然とした態度で現場を信じると述べる。
こういう所は本当に艦長として優れている所だと思うわ。

「詳しい事はゴートさんと話し合ってください。自由に動いて構いません」
『了解。ありがとうございます。艦長』
「こちらこそ、お願いしますね」

確かに策が成功すれば、この膠着した状況を打破できる。
お願いね、イツキちゃん達。

「残る問題は・・・コウキ君ね」

六対一という圧倒的不利の状況下で戦うコウキ君。
しかも、既に攻撃を受けていて、左腕が使えないという状況。
・・・普通だったらピンチだって思うんでしょうけど。
何故かしら。
不思議と負ける気がしないのよね。

「セレセレ。貴方の目からはどう見える? コウキ君の今の状況」
「・・・一見厳しいですが、このまま行けば・・・勝てます」

やっぱりセレセレもそう思ってるのね。
何というか、静かな気迫があるって感じなのよね。

「・・・負ける気がしないわ」
「それは多分、無駄がないからです」
「え?」

この声は・・・。

「だから、目立たない、でも、強い」

ジュン君。

「コウキの強さはそこにあると思うんです」
「どういう事?」

どうしてコウキ君がこんなにも強く感じるのか。
それが貴方には分かるの?

「テンカワのようにアクロバットな動きができる訳じゃない。
 ガイやスバルさんのように近接攻撃の腕がある訳じゃない。
 マキさんのように射撃攻撃の技能が高い訳じゃない。
 アマノさんのように意外性や器用さを持ち合わせている訳じゃない。
 カザマさんのように高い支援能力がある訳でもなく、
 アカツキさんのように飄々とした冷静さを持っている訳じゃない」

他のナデシコパイロットと比べるジュン君。
えっと・・・何が言いたいのか分からないんだけど・・・。

「どういう意味? ジュン君」

艦長が問いかける。
気付けばブリッジの誰もがジュン君の言葉を聞いていた。
・・・日頃しゃべらないから物珍しいという気持ちがあるのかも。

「ナデシコのパイロットにはそれぞれ特徴があるって事だよ。
 そして、その特徴的な部分が圧倒的だからこそエースとして君臨できる。
 でも、そう考えると、コウキにはこれといって特筆する事はないに等しいんだ」

コウキ君の特徴・・・。
格闘戦が圧倒的に強い訳じゃない。
射撃戦が圧倒的に強い訳じゃない。
高機動戦だってアキト君に比べたら一歩劣る。
確かにコウキ君にはこれ! といったものがないように感じる。
あえて言うなら、ピンチに強いって事かしら。

「カエデちゃんは?」
「成長スピード。それに、運の良さって所かな。勘って言っていいかもしれないね」

まぁ、それでもやっぱり他のパイロットに比べたら数段劣るけどね。
そう一言付け足すジュン君。
そればっかりは経験の差だし、仕方ないと思うわ。

「キリシマさんはともかく、それなのにコウキが彼らと肩を並べて戦えるのは・・・」
「・・・戦えるのは?」
「ひとえにコウキがひたすら効率的だからだと思うんだ」

効率。
それがコウキ君の強さの秘密?

「効率的?」
「そう、効率さ。コウキの動きには無駄がない。
 その行動の一つ一つに意味があって、きちんと考えて動いている」

一つ一つの動きに意味がある。
・・・言われてみればそうかもしれない。

「一見無駄な攻撃のように感じる事もある。
 でも、実際は次を着実に当てる為の布石だったりするんだ」
「それって・・・敵に対する分析力が優れているって事かな?」
「そうともいう。コウキはどう動いたら敵がどう動くかを分析して動いている」

情報処理能力が高いコウキ君らしい戦い方よね、それって。
相手の動きを分析して行動を先読み。
そして、その上で、最も相手に合った攻撃をする。
言わば、相手次第で臨機応変に戦闘パターンを変化させているって事ね。

「言い忘れてたけど、コウキは決して技能が低い訳じゃないんだ。
 僕の勝手な判断だけど、それぞれの分野で戦わせても全て平均以上にはなると思う」
「ナデシコパイロットの平均って事よね? 副艦長さん」
「はい。その通りです」

ナデシコパイロットの平均・・・。
それって普通に考えれば凄い事よね?

「コウキはどの分野でも一位になる事はない。
 でも、二位、三位にはなれる。それがコウキだ」
「それじゃあ万能さがあるって思っていいんじゃないの?」
「そうだけど、万能なだけでは勝てない。これといった武器がないとね」

同じ万能型でもイツキちゃんには支援能力があるし、ヒカルちゃんは器用さがある。
うん、確かにただ万能ってだけじゃないわね。
コウキ君でいえば、それが効率って事なのかしら?

「コウキの強さはその偏りのない高い次元での能力を最大限活かしている事にある」
「・・・偏りのない」
「・・・高い次元での能力」

万能なだけじゃない。
その万能さを『最大限に活かす動き』をしているという訳ね。

「言い換えるなら弱点がないんだ。どのレンジにも的確に対応できる」
「弱点がない・・・」

それなら強いに決まってる。
どうやって戦っても隙が見えないんだもの。

「始めは敵に合わせて攻撃スタイルを決定しているんだ。
 でも、気付けばコウキの土俵で戦わせられている。
 誘導が巧みなんだよ、コウキは。
 弱点がないくせに、それでも、相手側の苦手とする戦いへと誘導するんだ。
 自分より強い相手であろうと自分より下まで引き摺り落とす。強いに決まってるよ」

相手にとって苦手とするレンジもコウキ君にとっては苦手じゃない。
コウキ君は敵を誘導する事で常に自分が優位に立てるよう動いているのね。

「自分優位の戦いだから目立たない。
 当たり前だよ。勝てる相手としか戦わないんだから」
「そっか。それでマエヤマさんは目立たないんだ」

・・・失礼って分かってる? 艦長。
コウキ君に代わって私が怒ってあげようかしら。

「でも、それを言葉通りに受け取ったら駄目だよ、ユリカ」
「え?」
「勝てる相手としか戦わない人の事は誰だって臆病者だって思うでしょ?」
「それはまぁ、うん」
「でも、コウキは違うんだ。コウキは決して臆病者なんかじゃない。
 普通にやったら勝てない相手も戦い方で勝てる相手にしちゃうんだから」
「あ・・・」
「本当の戦上手は目立たない。昔の偉い軍略家はこう言ったそうだよ。
 コウキはそれを具現化している人間なんじゃないかな。少なくとも僕はそう思うよ」

勝てる相手に勝つ事は当たり前。
そりゃあどれだけ戦果を残してきても目立たない訳よ。
だって、それは当たり前の事を繰り返してきただけなんだもの。
でもさ、私はこうも思うのよ。
当たり前の事を当たり前にできるのも一種の才能だって。
それもとびっきりのね。

「状況判断に優れているからこそどこまでも効率的に動ける。
 どうやって動けばいいのか、どうすれば自分優位に戦えるか。
 考えているのか、感じているのかは分からないけど、コウキはそれを理解しているんだ」

情報処理が早いってだけじゃ片付けられない。
これはきっと・・・コウキ君の努力の証。
アキト君の下で血反吐を吐きながら訓練を繰り返し続けた。
習った木連式柔だって毎日きちんと修練している。
・・・努力家なのよ、彼は。
目指すべき目標があって、彼はそれに向かって必死に走り続けているだけ。
色々と辛い事があったと思う。
色々と苦しい事があったと思う。
それでも彼は立ち続けた、屈する事なく。
・・・挫折が人を強くするって本当なのね。
コウキ君が強いのは・・・足掻き続けたからよ。
ひたすら、諦める事なくね。
きっとその軌跡の積み重ねが今のコウキ君の姿なんだと思うわ。

「そっか。それがマエヤマさんの強さの秘密」
「僕の勝手な推測なんだけどね」
「ねぇ、ジュン君はどうしてその事に気付いたの?」

それは私も気になる。
誰もそんな事、考えもしなかったと思うし。

「始めは興味本位だったんだ。誰がナデシコパイロットで一番優れているのかって」
「アキトに決まってるよ。なんたってリーダーパイロットなんだもん」
「うん。僕もそう思ってたんだ。実際、シミュレーションでアキトは不敗だったしね」

間違いなく、パイロットとしての腕前ならアキト君が最強でしょうね。
それはコウキ君自身が認めていたし、他のパイロットとも共通の認識だった。

「でも、違ったんだ。ユリカ。パイロットとして優れていると判断できるのは何?」
「う~ん。それならやっぱり撃破数とかじゃないかな?」
「うん。そうだろうね。それじゃあ、ナデシコパイロットでは誰が一番だと思う?」
「それはやっぱりアキトじゃないの?」
「だよね。僕もそう思った。でも、実際は違うんだ」
「・・・コウキさんですか?」
「そう、セレスちゃんの言った通り。コウキが一番撃破数が多いんだよ」

どれだけ腕が良くても戦いで結果を残さなければ意味がない。
逆に言えば、どれだけ腕で劣っていようと結果さえ残せばより優れているという事。
それを正論とするならば・・・。

「もちろん、相性や武器の違いなんかもあると思う。
 でも、数だけで言うなら、間違いなくナデシコのエースパイロットはコウキなんだ」

コウキ君が・・・エースパイロット。
エース級ばかりが揃うナデシコの中で最も戦果を残している。

「・・・知らなかった。私、そんな事、全然気付かなかったよ」
「仕方がないさ。僕みたいに何かきっかけがあって調べないと気付けはしないよ。
 だって、ナデシコの誰もがアキトこそが最強で一番活躍してるって思ってたんだから」

先入観、とはちょっと違うかもしれないけど、そういう固定概念があった事は確か。
あれだけ派手な行動をしていて、しかも強いんだもの。
誰だってアキト君が一番活躍してるって思うわ。
でも、数だけで言うなら、コウキ君が一番活躍してる。
しかし、その事には誰も気付いてくれない。
なんか報われないわね、コウキ君。
・・・ううん、違うか。

「きっとコウキ君はそんな事どうでもいいんでしょうね」

誰も気付いてくれなくたって構わない。
だって、コウキ君は目立つ為に戦っている訳じゃないから。
彼はひたすらに・・・平和を願っているだけ。
名声なんてむしろいらないなんて思ってるかも。

「スポットライトを浴びなくても頑張れる主役」

コウキ君を表すならこんな言葉かしら。
矛盾だらけの言葉だけど、なんかビシッと当て嵌まるのよね。

「彼自身、どこか変わってるし」

誰だって自己顕示欲があると思うの。
それは私だってそうだし、副長の立場に甘んじているジュン君だってそう。
何かをすればそれを認めて欲しいって思うのは当然の事だわ。
それは、名声を得るのでもいい。報酬を得るのだっていい。
それが認めてもらうって事だから。

「でも、コウキ君は求めない」

名声や報酬、そんな事では叶えられない夢を追っているから。
そういう意味では誰よりも強欲なのかもしれないわね。
名声なんかじゃ満足できない。
報酬なんかじゃ満足できない。
己が欲しいもの以外には興味がない。
そういう事だもの。

「平穏。コウキ君が渇望して止まないもの」

平穏を求める為に戦う。
この矛盾に苦しみながら、コウキ君は戦ってきた。
だから、私は報われて欲しいって思うの。
名声じゃない、報酬なんかじゃもっとない。
ただ彼に平穏を与えてあげて欲しいって。
それがきっとコウキ君の働きに対する報いだから。

「いつも危ない時はコウキに助けられてきた。正にコウキこそが縁の下の力持ちだよ」
「うん。改めて、マエヤマさんがナデシコにいてくれて良かったって思うよ」
「コウキさんあってのナデシコです」
「うん。私もそう思う」
「・・・コウキさんがいないナデシコはナデシコじゃありません」
「うむ。コウキもナデシコが誇るパイロットの一人だ」
「彼のお蔭でかなりの費用を削減させて頂いてますからな。彼がいなければ困ります」
「マエヤマさんには何度も助けてもらいました」

・・・その言葉だけで充分よ。
仲間の声こそがコウキ君にとって最大のご褒美だもの。
過去、仲間を誤射しかけてしまった事から、
コウキ君は仲間内の評価を気にしていた節がある。
だから、様々な無茶を当然のように引き受けていたんだと思うわ。
でも、今はもうそんな事がなかったかのように皆が信頼してくれている。
今の言葉をコウキ君に伝えてあげたい。
きっとコウキ君、凄く喜ぶから。

「頑張って・・・ナデシコの影のエースさん」

SIDE OUT





SIDE KAEDE

「ロックオン・・・ショット!」

バンッ! バンッ! バンッ!

視界一面に広がる敵。
その全てに照準を合わせ・・・放つ!

「近付けさせたら駄目。この距離をキープしなくちゃ」

自覚はある、接近戦は駄目だって。
だから、徹底的に射撃戦を訓練した。
今なら、ケイゴだって捉えられる自信がある。

「ホント、嫌になっちゃうわよね」

ダンッ! ダンッ! ダンッ! ダンッ! ダンッ! 

私の周りのパイロットは誰もが皆、凄腕。
どれだけ訓練したって追い付ける気がしない。

「・・・コウキだってそうよ」

口ではコウキに勝てるだなんて言ったわ。
でもね、本当はそんな事ちっとも思ってなかったの。
素人に毛が生えた程度の私がずっと戦ってきたコウキに勝てる筈がない。
そんな事、私にだって分かってた。
でも、それを認めたら、私がここにいる意味がないんじゃないかって・・・。
だから、意地を張って、コウキ程度には負けないって模擬戦を挑んだ。
・・・結果は敗北。
傷一つ与える事なく負けてしまった。
当然、悔しかったわよ。
でも、同時に、ああ、やっぱりって思った。
どれだけ練習したって経験の差は埋められないんだって。
今から必死に練習した所で皆と肩を並べて戦う事なんてできない。
ましてや、ケイゴを守る事なんてって・・・。

「でも・・・」

バンッ! ダンッ!

そんな時、あいつが背中を押してくれた。
私の我が侭の犠牲になったあいつが。
突然シミュレーター室に連れて来られ・・・。

「ケイゴと戦えだって」

胸を借りるつもりで戦ってみろ。
ケイゴさんを捉える事ができれば・・・誰だって捉えられるから。
そんな事、言ってたわよね。
でも・・・

「強くなれる。そう思った」

どうすればいいのかって悩んでた。
どうすれば強くなれるのかって。
あいつはその方法を示してくれたの。

「それから、ひたすら戦ったわよね、ケイゴと」

ダンッ! バンッ! ダンッ! バンッ!

何度も何度も。
空いた時間を見付ける度にシミュレーター室に足を運んで。
最初はあまりにも惨めだった。
当たる事なんてなく、掠る事だって珍しいぐらい。
でも、諦めはしなかった。
皆と肩を並べて戦いたかったから。
ケイゴの隣で互いに守り、守られたかったから。
・・・あいつの期待に応えたかったから。

「私には武器がなかった。皆より優れてる点なんてIFSの扱いに慣れてるって事ぐらい」

物心付いた時から使っていたIFS。
それがなくちゃ生活できなかったし、それを使う事が当然だった。
だから、イメージ、物事を思い浮かべる事だけは負けない自信がある。

「思い浮かべるのはいつだって敵を貫いている自分」

外れる事なんて一切想像しなかった。
ひたすら、敵を貫く自分を想像し、戦った。

「それを繰り返している内にイメージが現実の動きと合ってきたのよ」

全てが思い通りに動くっていうのかしら。
あの時、私の見ていた世界は全て想像した通りに動いた。

「それからだったわよね。なんか危険とかが察知できるようになったのって」

不思議な感覚だった。
まるで自分が自分じゃないみたいな。
私が宇宙で宇宙が私で。
とにかく、言葉じゃ表せない感覚だったわ。

「あいつには感謝してる、本当に」

バンッ! バンッ! バンッ! バンッ! バンッ!

今、ここにいるのは全てあいつのお蔭。
それは紛れもない真実。
あいつは・・・私の為にどれだけ苦労を重ねてきたんだろう。

「あいつってバカよね」

彼女がいるのに他の女の子に優しくするなんて・・・。
彼女が大らかな人だから何にもないけど、こじれるわよ、普通。
本当に・・・バカ。

「ケイゴに会わなかったらどうなってたんだろう?」

私があいつに、コウキに恋をしていたっていうのは本当。
認めたくないけどね。
独りぼっちだった私を助けてくれた。
危険な目に遭わされそうになっていた私を救ってくれた。
それってまるで王子様みたいじゃない?
好きになったっておかしくないわよ。
でも、あいつには既に恋人がいて・・・。
とっくの昔から私につけいる隙なんてなかった。
思えばあれが初めてかも、振られたのって。
まぁ、別に告白した訳でもなんでもないんだけどさ。

「そういえば、ケイゴに出会えたのもコウキのお蔭なのよね」

ダンッ!

突然コウキに連れられて行った地球連合軍基地。
私にとってはもう一つの仇。
火星を見捨てて逃げた連合軍になんて行きたくなかった。
でも、私達が出逢ったのはそこだったのよね、ケイゴ。
知らぬ間に距離が近付いていて、気付けば恋に落ちていた。
軽い女って思われたかな?
・・・なんだか不安になってきた。

「・・・・・・」

そ、そんな事ないわよね、うん。

「コホンッ」

それから、色々な事があった。
ケイゴが死んで悲しみに暮れて。
そう思ってたら、実は生きてて、しかも木連人だったりして。
ケイゴの従者とかいう嫌な女にも会ったし、実際に木連にも行った。
地球の人達と戦って自分の未熟さを痛い程に味わって。
・・・地球の人々の想いを聞いた。
濃い時間だったと思う、本当に。
そして、今、私達は決着をつけるべく戦っている。
色んな感情、様々な陰謀が絡み合って、単純に勝つ負けるじゃなくなってるけど・・・。

「私は私の道を進むだけよ!」

ダダダダダダダダダン!

難しい事は分からない。
でも、和平を結ぶ事で幸せになれる人が増えるって事は分かる。
戦いの理由なんて、それだけで十分よ。

「全機体ロックオン。全砲門解放。フルチャージ」

立ち塞がる敵は全て破壊する。
貴方達が悪いのよ、私の前に立つから。

『あ。カ、カエデちゃん! ちょっと待―――』
「ファイヤ!」

ダダダダダダダダダン! バババババババババン!

一面に広がる爆発の波。
さぁ、これでどう?

「・・・あら? やるじゃない」

爆発の余波が収まる。
そこには巨大な身体に厚い装甲。
旧式のマジンが立っていた。
・・・たった一体だけで。

「旧式の割りには、ね。でも、もう終わりよ」

ロックオン。ミサイルを構える。
さてっとこれでおしまい。

カツンッ。

「・・・え?」

た、弾切れ?
う、嘘でしょ!?

「ア、アザレア!」
『だから止めたのに~。思い切りが良過ぎるんだよ、カエデちゃんは』
「そ、それは・・・ってそんな事言ってる場合じゃないわよ!」

武器がなっきゃいくら旧式でも―――。

「き、来たぁぁぁ!」
『逃げてぇぇぇ! カエデちゃぁぁぁん!』

追うマジン、追われる私。
どこのあ○鬼よ。
捕まったら即ゲームオーバーって事!?

「キャァァァァーーー!」

やばい、やばい。
どうする? どうすればいいの?

『まったく。成長したと思ったら・・・。
 そういう所は成長してねぇんだな、カエデ』

え?

『後は俺に任せとけ』

前方から接近してくる熱源反応。
あの機体は・・・リョーコ!?

『だりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!』

前方に突き付けている左手にある・・・なんだっけ?
えっと、なんかシールドみたいな奴から凄まじい勢いで炎が噴射されている。
しかも、それにプラスして背後のブースターもフルスロットル。
私の移動スピードの何倍も速いスピードですれ違って・・・。

『潰れちまえ!』

左手を下げて右手を突き出す。
結果、右腕に装着されていた巨大な・・・なんだっけ? あれ。

ガゴンッ!

『おっしゃぁ!』

巨大な砲のような武器から杭?みたいなものが飛び出し、
自機の二倍もの大きさはあろうマジンを一撃で貫き、粉砕する。
・・・なんて凄い攻撃力。
接近武器の攻撃力でいえば随一かも。

「リョーコ」
『おぉ。無事か、カエデ』

リョーコが離脱した後、マジンは爆発。
とりあえず、もう周囲に敵影はないようね。
ひとまず安心って所かしら。

「ええ。無事よ、リョーコ。それよりも、その武器って・・・」
『おう。本邦初公開。杭が出る出るパイルバンカーだぜ!』
「杭が出る出る?」
『おうよ!』

パイルバンカー。
それがあの武器の名前なのね。

『正に一撃必殺だぜ』
「リョーコの好きそうな武器よね」
『へへっ。まぁな』

こと格闘武器に関してはガイと通ずるものがあるリョーコでした、チャンチャン。

「って終わっちゃ駄目! 誰よ!? その後ろのは!」
「ああ。こいつは・・・」

SIDE OUT




影の薄い男、ジュンの独白の回でした。
複雑化してきた今の状況、今後どうなっていくのか。
うまくまとめられたら嬉しいです。


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